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授業の概要(ねらい) |
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2015年3月の「学習指導要領 一部改正」によって、道徳が「特別の教科」に位置づけられることになった。だが、「なぜ教科化しなければならないのか」「そもそも道徳は教えられるのか(教えられる道徳はどのようなものか)」といった点、すなわちその不可能性や実施の副作用について議論の深まりはなく、只々「道徳教育は必要だ」という「使命感」ばかりが先行している現状がある。一方、学校現場では教育方法・技術の面に問題意識が特化した結果、ニセ科学(「水からの伝言」)や偽史(「江戸しぐさ」)の介入による道徳教育の無節操な実施を許してきた。 本演習では、抽象的に道徳教育の意義ばかりを唱える論調が教師の負担や不安を増加させ、安易な技術論に向かわせる危険性をもつという問題意識を前提としつつ、歴史研究も含む専門的視座から、道徳教育を中心に教育の諸課題について掘り下げる(「教育を見る眼を鍛える」)ことを中心テーマとしたい。そのうえで学生各自の学びたい個別テーマの研究(主体的な学び)を指導する。
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2. |
授業の到達目標 |
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(1)「社会とのかかわりのなかでの教育」という広い視点から、日本の学校教育・道徳教育のもつ課題を捉えることができる。 (2) 専門分野の研究成果(著書や論文)の内容を的確に読み取ることできる。加えて、その論旨を他者にわかりやすく口頭で説明できる(レビューする力がある)。 (3) 先行研究の到達点と課題を理解し、それとの関連が明確な、自身独自の課題意識、分析視点をもつ。
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3. |
成績評価の方法および基準 |
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授業参加度(授業準備、積極的な発言など)、提出物(リアクション・ペーパー、レジュメ)、および報告・プレゼンのパフォーマンスに基づいて、総合的に評価する。
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4. |
教科書・参考書 |
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テキスト:貝塚茂樹・関根明伸編『道徳教育を学ぶための重要項目100』教育出版、2016年。 ※ 上記テキストのほか、本演習では(道徳教育に関する)書籍・論文・雑誌記事など検討資料を適宜選択し、受講生の報告をふまえながらその内容を検討する、読書会形式で進めていく。資料配布の準備は基本的に担当教員が行うが、ウェブ上で閲覧可能なものについては各自ダウンロード―プリント・アウトしてもらう。
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5. |
準備学修の内容 |
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受講生には、担当資料についてそれぞれレジュメを作成し、発表してもらう。自身の担当箇所についてはもちろん、それ以外にも積極的に「読む」作業を通した授業参加なくしては、ねらいは達成されない。予習・復習を通して構築した自分の見解を持ちよりながら、授業に参加すること。
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6. |
その他履修上の注意事項 |
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この授業は、「講義」ではなく「演習」である。学生の主体的な授業参加~調査・発表・討議~が中心となる。自らすすんでたくさんの関連文献を渉猟すること、充実した報告資料の作成・参加者(学生・教員)に有益な学びをもたらす綿密な発表への意識を、本演習履修者には求めたい。
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7. |
各回の授業内容 |
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【第1回】 |
イントロダクション―履修上の注意、自己紹介、グループ編成― |
【第2回】 |
「道徳」「道徳教育」とは―辞典・事典から調べる― |
【第3回】 |
道徳教育の理論的課題についての理解(1) |
【第4回】 |
道徳教育の理論的課題についての理解(2) |
【第5回】 |
道徳教育の実践的課題についての理解 |
【第6回】 |
道徳教育論争の整理(1) |
【第7回】 |
道徳教育論争の整理(2) |
【第8回】 |
道徳的課題の理解と教材の検討(1) |
【第9回】 |
道徳的課題の理解と教材の検討(2) |
【第10回】 |
実地研究Ⅰに向けた議論・準備学習(1) |
【第11回】 |
実地研究Ⅰに向けた議論・準備学習(2) |
【第12回】 |
実地研究Ⅰと考察(1)―フィールドワークと教材開発― |
【第13回】 |
実地研究Ⅰと考察(2)―実地研究を終えて― |
【第14回】 |
教育を取り巻く社会への視野 |
【第15回】 |
まとめの討議 (※受講生の人数や問題関心の実態・要望に応じて、授業計画に変更を加えることがある。) |
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