Web Syllabus(講義概要)

平成28年度

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分子生命理工学 (Gene Expression and Control) 井口 義夫
1年 前期 専門科目選択 2単位
【専工前・前】 16-3-1012-2337

1.
授業目標

ゲノム研究の進展によって、進化系統樹にみられる生物種間の違いは遺伝子の数にあるのではなく、発現調節機構の複雑さに大きな原因があると考えられるようになってきました。増殖に不可欠な遺伝子は生物間で類似しているのにたいして、タンパク質をコードする領域が染色体中に占める割合は高等生物ほど少ないことがわかっています。授業の目標は、遺伝情報の転写・翻訳とその制御機構の基本的システムを中心にしてさらに多様あるいは複雑なシステムについて分子レベルで理解すできるようになることです。

2.
授業概要

DNAの遺伝情報はRNAに転写された後、タンパク質に翻訳されます。しかし、真核細胞では遺伝子は分断されているので、DNAの遺伝情報をあとで修正する機構が存在します。また、遺伝子は常時発現しているのではなく、環境条件に応じてONあるいはOFFの状態にあり、遺伝子の発現時期と発現量は制御されています。これらの制御機構についてDNA、RNAおよびタンパク質の分子構造の視点から学びます。近年、低分子RNAによって遺伝子発現を制御する機構が自然界で見つかり、RNAを利用した人工的な遺伝子発現制御法が開発されています。これらについても、最近の話題を含めて学びます。

3.
準備学習(授業時間外の学習)

学部段階での分子遺伝学、生化学および遺伝子工学の基礎知識を修得していることを前提に授業します。次回の授業範囲を予習し、専門用語の意味等を理解しておいて下さい。

4.
授業計画

(1)mRNAの発見
(2)RNA生合成およびタンパク質生合成の基本機構
(3)原核生物における転写制御 (1):タンパク質による制御
(4)原核生物における転写制御 (2):mRNA構造による制御
(5)原核生物における転写制御 (3):転写活性化機構
(6)原核生物における翻訳制御 (1):mRNA二次構造による制御
(7)原核生物における翻訳制御 (2):翻訳共役
(8)真核生物における転写調節
(9)翻訳に依存したmRNAの安定性
(10)転写後調節:スプライシング、編集
(11)後生的遺伝子発現調節
(12)RNAによる遺伝子発現制御 (1):アンチセンスRNA、リボザイム
(13)RNAによる遺伝子発現制御 (2):制御RNA、リボスイッチ
(14)RNAによる遺伝子発現制御 (3):RNA干渉
(15)タンパク質と結合する人工RNAの作製:SELEX

5.
成績評価の方法、基準

2/3以上出席し、演習およびレポートの結果の合計が60%以上を合格とします。

6.
使用テキスト及び使用教材

テキストは使用しません。

7.
その他

主にプリントやスライドを用いた講義ですが、論文データを基にした対話型の演習も随時行ないます。