Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:CIL-205
不法行為法 小谷 昌子
選択  2単位
【法学】 18-1-1210-3227-006

1. 授業の概要(ねらい)

 民法は私人と私人の関係、すなわち、財産関係や親族関係についてルールを定める。なかでも債権法は、大雑把に言えば《人に対する権利と義務》に関するルールを規定するが、債権が発生する原因の1つとして、不法行為というものが想定されている。これは、典型には、それまで契約関係などになかった人と人が出会い頭に起こす事故の、加害者と被害者の関係をどのように調整するかに関するルールである。
 このような事故はわれわれが社会で生活する以上、いつ巻き込まれてもおかしくないものであり、民法がこのような事象につきどのようなルールを用意しているのかを理解しておくことは非常に有用である。なお、本科目では、とくに、不法行為の成立要件およびその効果としての損害賠償について詳しく説明する。なお、特殊不法行為については別の科目(特殊不法行為法)にて取り扱う。

2.
授業の到達目標

 ① 一般不法行為に関する基本知識(制度趣旨や制度の枠組み、要件・効果など)を理解する。
 ② ①について、資料を参照しつつ、文章で説明することができるようになる。

3.
成績評価の方法および基準

 ・期末試験(レジュメおよび自筆ノート持込み可)による。
 ・リアクションペーパー(文章での説明を求める)を任意提出する機会を設け、期末試験の評点に加点することがある。
 ・小テスト、出席そのものによる加点はおこなわない。

4.
教科書・参考書

 配布するレジュメを参照しつつ授業をおこなうが、参考文献については授業中に指定することがある。
 なお、自習する際には個人が気に入ったものを参照するのがよいと思うが、参考までに。
  潮見佳男『ライブラリ法学基本講義 債権各論II不法行為法〔第3版〕』(新世社、2017年)
  窪田充見『不法行為法──民法を学ぶ〔第2版〕』(有斐閣、2018年)     
  吉村良一『不法行為法〔第5版〕』(有斐閣、2017年)
  大村敦志『新基本民法6 不法行為編 -- 法定債権の法 (新基本民法シリーズ)』(有斐閣、2015年)

5.
準備学修の内容

 授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
  ・不法行為の全体像のなかでどこに位置づけられる話を聞くのか(または聞いたのか)を確認する。
  ・試験は持込披見可で実施するが、だからといってどこに何が書いてあるかくらいは把握していないと答案作成はできないので、そのつもりで必要な準備をすること。
  ・なお、本科目は出席による加点は行わないが、出席しない場合にはそれ相応の自習をすることを求める。
   言うまでもないが「出席による加点を行わない」は、「出席しなくても単位がとれる」を意味しない。

6.
その他履修上の注意事項

 ・第1回目の授業の際に注意事項を述べる。
  欠席した際の配布資料の取仕方についても説明するので、2回目以降授業を欠席する可能性のある学生は必ず出席すること。
 ・本科目を受講する前に(あるいは並行して)、民法概論や法学概論を履修していることが望ましいが、絶対ではありません。
 ・本科目の発展的科目として、次のものが用意されている。:特殊な場合における不法行為につき取り扱う科目として「特殊不法行為法」が、医療事故における損害賠償責任の問題につき取り扱う科目として「医事法II」がある。また、公務員の不法行為と国家によるその賠償については行政法で取り扱われている。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 ガイダンス・イントロダクション:本科目に関するガイダンス、および、本講義で取扱う不法行為制度とはいかなる制度なのか、概要を紹介する。
【第2回】
 不法行為制度の目的:不法行為制度とはいかなる目的のために存する制度なのか。他の法的責任との違いなどを踏まえて確認する。
【第3回】
 成立要件(1)故意または過失①:民法709条にいう「故意又は過失」とは一体どのような概念のものなのか。とくに過失につき、検討する。
【第4回】
 成立要件(2)故意または過失②
【第5回】
 成立要件(3)権利侵害又は法律上保護される利益の侵害と損害① 権利侵害要件に関する議論の変遷につき、確認する。
【第6回】
 成立要件(4)権利侵害又は法律上保護される利益の侵害と損害② なにをもって損害を観念するのかについて確認する。
【第7回】
 成立要件(5)因果関係 不法行為の成立要件たる事実的因果関係につき、その存否はどのようにして明らかとなるのか、必要とされる証明の程度などにつき確認する。
【第8回】
 成立要件(6)成立要件まとめ
【第9回】
 成立阻却事由 以上で確認した成立要件を充たす場合であっても、不法行為の成立が否定される場合や損害賠償責任を加害者本人に問えな苦なる場合がある。これはどのような場合なのか。加害者=被告側はいかなることを証明する必要があるのか。
【第10回】
 効果(1)不法行為が成立するといかなることが起きるのだろうか。そこにいかなる問題が生じうるのだろうか。金銭による賠償、原状回復、差止めに分けて検討する。
【第11回】
 効果(2)
【第12回】
 効果(3)
【第13回】
 効果(4)
【第14回】
 効果(5)
【第15回】
 まとめと試験