Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:CIL-209
担保物権法 内田 暁
選択  2単位
【法学】 18-1-1210-4163-005

1. 授業の概要(ねらい)

 本講義では、民法典第二編第七章から第十章の内容に、民法典に規定のない担保物権を加えた、講学上「担保物権法」と呼ばれている分野について学びます。
 皆さんがお金を貸すとして、何を重視するでしょうか。おそらく、「この人はちゃんと借りたお金を返してくれるのか?」という点を重視するのではないでしょうか。これは皆さんに限らず、世の金融機関においても同じことです。彼らは、ビジネスでお金を貸しているのであって、決して慈善活動をしているわけではありません。お金を貸す際には、必ず、「この人はちゃんと借りたお金を返してくれるのか?」、すなわち、お金を貸す相手を「信用」できるのかという点を慎重に検討します。お金を貸すというのは、相手を「信用」するということなのです。金融機関は、信用に値する人にしかお金を貸してくれないのです。
 それでは、反対に皆さんがお金を借りる立場であったとしたら、どうでしょう。どのようにすれば、金融機関からお金を融資してもらえるでしょうか。上に述べたことを踏まえれば、金融機関に「信用」してもらえればよい、ということになります。そこで問題は、どのようにすれば「信用」を得られるのか、という点に収斂します。
 結論を先取りしていえば、借りたお金は絶対に返すという保証=「担保」を相手に与えればよい、ということになります。本講義では、このような「担保」のうち、物的担保(物を担保に供する方法)と呼ばれるものについて学びます。

2.
授業の到達目標

 ①担保物権法について、基本的な知識を習得する。
 ②併せて、債権総則、契約総論、契約各論、物権法の知識を確認し、より確かなものにする。
 ③本講義で習得した知識を活かして、社会に生起する問題を分析・説明できるようにする。
 到達目標②について。担保物権法は、「物権法」の知識と「債権法(債権総則など)」の知識を前提としています。そのため、担保物権法を学習するに際しては、必然的に「物権法」や「債権法」の復習が求められます。そして、この過程を通じて、これまで学習してきた「物権法」や「債権法」の知識を確認し、より確かなものにすることが本講義の目標とされます。

3.
成績評価の方法および基準

 ・15回目の授業内で実施する試験の点数による評価(100%)
 ・出席点は、原則考慮しません。

4.
教科書・参考書

 教科書:①松井宏興『担保物権法』(成文堂、補訂第2版、2011年)
 参考書:②道垣内弘人『担保物権法』(有斐閣、第4版、2017年)
     ③道垣内弘人『リーガルベイシス民法入門』(日本経済新聞社、第2版、2017年)
     ④中田裕康・窪田充見編『民法判例百選Ⅱ』(有斐閣、第7版、2015年)
 講義は、①のテキストに則して進行します。受講者は、予習・復習のために、このテキストを用意することが望ましいでしょう。参考書については、必ずしも購入する必要はありません。ただ、③のテキストは、民法の全体像について分かりやすく記述されており、大変に参考になります。繰り返しになりますが、「担保物権法」の学習に際しては「物権法」や「債権法」の知識が必要となりますので、③のテキストを読むなどして確認しておくことが望ましいでしょう。

5.
準備学修の内容

 各回の授業時に、次の回で取り上げる内容についてアナウンスしますので、受講者は、上記テキストの該当箇所を読むようにして予習するとよいでしょう。その際に、テキストを読んでいて分からない箇所に印を付けておき、そこを授業で確認するという姿勢で講義に臨むと良いでしょう。
 また、予習も大事ですが、まずは講義に参加し、授業時間外ではその復習に重点をおいて勉強するとよいでしょう。学習に際しては、条文や学説、判例を暗記しようとするのではなく、「なぜこのようなルールがあるのか」「なぜこのような学説があるのか」などといった点を意識して、「理解」しようと努めるとよいでしょう。細かな学説や判例は数多くありますが、それらは樹に喩えれば枝葉のようなものです(これらの学説や判例が大事でないという意味では決してありません)。樹の枝葉は、幹から生えているのであって、それだけで宙に浮いているものではありません。法律学の修得にとっては、枝葉に集中するのではなく、まずはそれらの枝葉が生えている幹をしっかりと把握することが肝要です。本講義でも、幹を把握することを第一の目標としてゆきますが、受講者が自習する際にも、幹を意識して学習するとよいでしょう。
 最後に、分からない個所をそのままにしておくのではなく、積極的に教員に質問するなどの姿勢も大事です。質問は随時受け付けますので、お気軽にお尋ねください。

6.
その他履修上の注意事項

 ・受講時には六法(『ポケット六法』や『デイリー六法』などの小型のもので結構です)を必ず持参してください。六法の引き方に慣れることも、法学部での学習の大事なポイントです。
 ・授業中の私語など、他の受講生の迷惑になるような行為は厳禁です。
 ・さきに書いたように、「担保物権法」は「物権法」や「債権法」の知識を前提としています。いうなれば、担保物権法は民法(財産法)の集大成です。したがって、本講義の受講者は、本講義の前に、あるいは本講義と併せて「物権法」や「債権総則」といった講義について受講していることが望ましいでしょう。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 イントロダクション 担保物権法入門
【第2回】
 担保物権の種類 担保物権の性質と効力
【第3回】
 抵当権の意義と性質および効力
【第4回】
 抵当権に基づく物上代位
【第5回】
 抵当権の優先弁済的効力
【第6回】
 抵当権と利用権(特に法定地上権について)
【第7回】
 抵当不動産の第三取得者の保護
【第8回】
 共同抵当、根抵当について
【第9回】
 質権の意義と種類
【第10回】
 質権の効力
【第11回】
 留置権の意義と効力
【第12回】
 先取特権の意義と種類、効力
【第13回】
 譲渡担保という非典型担保
【第14回】
 仮登記担保および所有権留保という非典型担保
【第15回】
 担保物権法のまとめと授業内試験
 ※上記の授業計画はあくまでも予定です。進行状況に応じて若干の変更がありえます。