Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:PUL-305
EU法 I 大道寺 隆也
選択  2単位
【法学】 18-1-1210-4907-003

1. 授業の概要(ねらい)

 欧州連合(European Union, EU)がどういう仕組みと特徴を持つ機構なのかを概説します。EUという名前は広く知られている一方、EUに関する誤った理解もしばしば見られます。そこで、EUという機構について、歴史(いかにして現在の姿になったか)、権限(EUに何ができて何ができないか)、意思決定(誰がどのように決定を下しているか)、および司法制度(裁判の仕組み)の4つの側面から検討します。また、日・EU関係を含むEU関連ニュースを適宜紹介し解説します。

2.
授業の到達目標

 (1)ヨーロッパ統合の歴史に関する基本的な知識に基づき、現在のEUの権限や意思決定、司法制度の概要や特徴を知ること。
 (2)「欧州委員会」や「先決裁定手続」といった基本的なEU用語を理解すること。
 (3)EU関連のニュースを正確に、できれば批判的に、読み解けるようになること。

3.
成績評価の方法および基準

 基本的に学期末の試験(100%、『持ち込み可』)で評価します。ただし、授業への取り組み方に基づいて加点することがあります(質問をする、意味のあるコメントをする、など)。

4.
教科書・参考書

 (教科書)
  中村民雄『EUとは何か――国家ではない未来の形――[第2版]』信山社、2016年。
 (参考書)
  中西優美子『EU法』新世社、2012年。
  庄司克宏『新EU法・基礎編』岩波書店、2013年。
  中村民雄・須網隆夫編『EU法基本判例集[第2版]』日本評論社、2010年。
 および各回で紹介する関連文献。
 ・上で指定した教科書は、あくまで講義の理解を深めるためのものであって、授業中にただ読み上げるようなことはしません。また、これを持参しさえすれば試験に合格できる、というものでもありません。
 ・毎回授業の概要を記したレジュメを配布します。

5.
準備学修の内容

 より授業を理解しやすくするために、教科書の関連部分を読んでくるようにしてください(さほど長くありません)。また、日頃からEU関連のニュースに注意してみてください。

6.
その他履修上の注意事項

 EU(法)の初学者を対象としているので、履修条件等は特にありません。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 導入
 日本に住んでいる私たちが、ヨーロッパの機構であるEUとその法を学ぶ理由や意義がどこにあるのかを考えます。また、授業の進め方を確認します。
【第2回】
 欧州共同体の歴史(1)
 現在のEUの姿を理解するためには歴史の知識が不可欠です。したがって、第二次世界大戦後を中心に、EUの母体であるEC(欧州共同体)の歴史について概説します。
【第3回】
 欧州共同体の歴史(2)
 現在のEUにおいて重要ないくつかの法的原則は、1960年代以降徐々に確立されていきました。第3回では、EU設立以前のEC法の発展を概説します。この回の内容は、第10回以降でも振り返ります。
【第4回】
 EUの歴史
 EU設立以降、その仕組が、基本条約(マーストリヒト条約、アムステルダム条約、ニース条約、リスボン条約)の改正を経てどう変わっていったかを概説します。
【第5回】
 EUの権限(1)
 第2~4回を踏まえて、現在EUに与えられている権限が、分野ごとにどう異なっているかについて概説し、EUに何ができて何ができないかを説明します。
【第6回】
 EUの権限(2)
 引き続き、EUに何ができて何ができないかを説明します。また、EUが権限を行使する時に従わなければならない原則についても説明します。
【第7回】
 EUの諸機関と立法手続(1)
 第2回~第4回を踏まえて、現在のEUが備えている主な機関について概説します。また、EUの法規がどのように作られるか(立法手続)についても説明します。
【第8回】
 EUの諸機関と立法手続(2)
 引き続きEUの主な機関と立法手続について概説します。また、EU機関同士の関係や、加盟国との関係についても説明します。
【第9回】
 条約改正と脱退
 EUの仕組み全体を定める基本条約が、どのように改正されるか概説します。また、脱退に関する規定や、イギリス脱退(Brexit)問題についても解説します。
【第10回】
 EUの裁判の仕組み(1)
 EUには、他の国際機構には見られない裁判の仕組みがあります。EUには、他の国際機構には見られない裁判の仕組みがあります。まず、どのような裁判所があるかを振り返ります。次いで、EUに特徴的な仕組みと言われる「先決裁定手続」の概要とその意義を説明します。
【第11回】
 EUの裁判の仕組み(2)
 引き続き、先決裁定手続について概説します。また、それ以外の裁判手続(条約違反手続や取消訴訟)にも簡潔に言及します。
【第12回】
 EU法と国内法
 第10・11回の内容を踏まえて、EU法と国内法の関係や、EU司法裁判所と各国裁判所の関係について概説します。
【第13回】
 EUの基本権保障の仕組み
 EUにおける基本権保障には、EU法のみならず、各国の憲法や他の国際条約も関わります。第13回では、EUの基本権保障の仕組みを概説します。
【第14回】
 「危機」のEU法
 昨今、EUはさまざまな「危機」にあるとしきりに言われています。その「危機」の法的側面について概説します(なお、この回は受講者の関心に合わせて内容を変更する可能性があります)。
【第15回】
 まとめ
 各回の授業内容を簡潔に振り返り、総括します。また、質疑応答の時間を設け、受講者の疑問点解消に努めます。