Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:PUL-306
EU法 II 大道寺 隆也
選択  2単位
【法学】 18-1-1210-4907-004

1. 授業の概要(ねらい)

 欧州連合(European Union, EU)がどういう仕組みと特徴を持つ機構なのかを概説します。「EU法I」では、EU全体の歴史・権限・意思決定・司法制度を扱う一方、「EU法II」では、より具体的な場面でのEU法の働きを見ていきます。まず、長くEUの中心的分野と言われてきた市場統合と金融政策を扱います。次に、近年特に問題となっている基本権(=人権)保障と対外関係にどういう特徴と問題があるのかを検討します。また、日・EU関係を含むEU関連ニュースを適宜紹介し解説します。

2.
授業の到達目標

 (1)EUが作り上げてきた単一市場がどういう法原則を持ち、どういう特徴を備えているかを理解すること。
 (2)EUの基本権保障や対外関係にどういう特徴と問題があるかを理解すること。
 (3)EU関連のニュースを正確に、できれば批判的に、読み解けるようになること。

3.
成績評価の方法および基準

 基本的に学期末の試験(100%、『持ち込み可』)で評価します。ただし、授業への取り組み方に基づいて加点することがあります(質問をする、意味のあるコメントをする、など)。

4.
教科書・参考書

 (教科書)
  中村民雄『EUとは何か――国家ではない未来の形――[第2版]』信山社、2016年。
 (参考書)
  中西優美子『EU法』新世社、2012年。
  庄司克宏『新EU法・政策編』岩波書店、2014年。
  中村民雄・須網隆夫編『EU法基本判例集[第2版]』日本評論社、2010年。
 および各回で紹介する関連文献。
 ・上で指定した教科書は、あくまで講義の理解を深めるためのものであって、授業中にただ読み上げるようなことはしません。また、これを持参しさえすれば試験に合格できる、というものでもありません。
 ・また、毎回授業の概要を記したレジュメを配布します。

5.
準備学修の内容

 より授業を理解しやすくするために、教科書の関連部分を読んでくるようにしてください(さほど長くありません)。また、日頃からEU関連のニュースに注意してみてください。

6.
その他履修上の注意事項

 EU(法)の初学者を対象としているので、履修条件等は特にありません。よりよい理解のためには「EU法I」を履修していることが望ましいですが、必須ではありません。ただしその場合は、上掲の教科書や、EU関連の新書に一度目を通しておくことをおすすめします(遠藤乾『欧州複合危機』(中公新書)や、庄司克宏『欧州連合――統治の論理とゆくえ』(岩波文庫)などがあります)。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 導入
 日本に住んでいる私たちが、ヨーロッパの機構であるEUとその法を学ぶ理由や意義がどこにあるのかを考えます。また、授業の進め方を確認します。
【第2回】
 域内市場の発展(1)
 EUは、各国の経済を結びつけることに力点を置いて発展してきました。第2回では、EC・EUの市場統合がどのように進んできたのかを概説します。
【第3回】
 域内市場の発展(2)
 第2回の内容を踏まえて、市場統合を支える法原則がいかに発展してきたかを説明し、今でも参照されるいくつかの重要判例を紹介します。
【第4回】
 域内市場の発展(3)
 第4回では、各国の市場を結びつけようという試みが、市場統合とは一見関係ない分野にどう広がっていったかを説明します。
【第5回】
 共通通貨ユーロの発展(1)
 現在のEUの「代名詞」ともいえる共通通貨ユーロがいかに発展してきたのかを概観します。
【第6回】
 共通通貨ユーロの発展(2)
 第5回に引き続き、ユーロの発展を概説します。また、最近の「通貨危機」と、それに伴う法的動向についても解説します。
【第7回】
 人の自由移動と犯罪対策(1)
 ヨーロッパ各国で人の自由移動がどのように実現してきたのかを概説します。また、人の自由移動に伴う犯罪への対策がどのように進められてきたのかを説明します。
【第8回】
 人の自由移動と犯罪対策(2)
 第7回の内容を踏まえて、現在のEUが、どのように犯罪対策をしており、どのような問題があるかを概説します。
【第9回】
 人の自由移動と犯罪対策(3)
 昨今の「難民危機」に、EUがどのように対応しており、そこにどのような問題があるのかを概説します。
【第10回】
 EU法と国内法
 第7~9回で見た犯罪対策や難民問題に関するいくつかの裁判の中で、EU法と国内法の関係が見直されるようになってきました。第10回はその動向を概説します。
【第11回】
 EUと世界とのつながり(1)
 EUは、日本を含む他の国々や組織ともつながりを深めてきました。第11回は、EUの対外関係がどのように発展してきたかを概説します。
【第12回】
 EUと世界とのつながり(2)
 EUと、他の国々や組織とのつながりが深まるにつれて、EU内の政策や人権保障が外から影響を受けるようになってきました。第12回では、そうした影響の与えあいについて説明します。
【第13回】
 EUの基本権保障の新たな動き
 EU法における基本権保障には、EU法のみならず、各国の憲法や他の国際条約も関わってくるようになりました。第13回では、第12回までの説明をまとめ、EUの基本権保障の仕組みを改めて概説します。
【第14回】
 EU法の新たな諸問題
 昨今、EU(法)が、かつては取り扱っていなかった問題を扱う場面が見られます。ここでは、イスラム教徒が職場でスカーフをかぶってよいかどうかをめぐって争われた裁判を例に、EU法の最新の動向を紹介します(なお、この回は受講者の関心に合わせて内容を変更する可能性があります)。
【第15回】
 まとめ
 各回の授業内容を簡潔に振り返り、総括します。また、質疑応答の時間を設け、受講者の疑問点解消に努めます。