Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:RES-102
宗教文化論 II 濱田 陽
【Ⅱ】  2単位
【Ⅱ 人の心と思想を学ぶ】 18-1-1310-0430-010

1. 授業の概要(ねらい)

 秋学期は、人間の多様な宗教の文化学的な分析を通じ、人、文化、文明の各レベルを行き来しながら「死と再生」および「生と死」のテーマをさらに深く考察していく。
 人は宗教をどのようにとらえてきたのだろう。そして、これからどのようにとらえていくのだろう。本講義では伝統的な宗教文化に加え、人間そのものの価値を最重要視するヒューマニズム、新テクノロジーを最重要視する新潮流を合わせ、広義の「宗教」に含めた上で、考察を進めたい。
 これは、大局的視座から人類史を研究するマクロヒストリーの学者ユヴァル・ノア・ハラリが『サピエンス全史』『ホモ・デウス』で提示した新たな宗教観でもある。ハラリは、それぞれを伝統宗教、ヒューマニズム宗教、新テクノロジー宗教と呼ぶ。たとえば伝統宗教はアニミズム、多神教、一神教、神を重視しない宗教(仏教)等であり、ヒューマニズム宗教は自由主義、社会主義、進化論の三つの派としてとらえ、新テクノロジー宗教はAI(人工知能)や生命科学の発展によりアップデートされる超人間存在、あるいはデータそのものを至上価値とするという。そして、人間存在の無能階級化、アルゴリズム・データ化の懸念を表明する。
 ここでは、伝統宗教、ヒューマニティ(人間性)、新テクノロジーをハラリのような単線的視点ではなく、並列的、重層的にとらえる。そして、近代化で忘却されていたが宗教文化のなかに受け継がれている、人間存在に対する豊かで多様な精神的資産の例を検討し、とりわけ、「死と再生」および「生と死」に関する深い洞察とその現代的可能性を見出してみたい。

 *春学期の授業で十分に、あるいはまったく取り上げられなかった内容を中心に扱う。

2.
授業の到達目標

 宗教と人間文化への多角的な視座を養い、授業内容を適切に解説しながら自身の考察をまとめることのできる思考力、文章表現力を身につける。

3.
成績評価の方法および基準

 出席、授業内期末試験により総合評価
  *期末試験テーマは最終講義日2週間前に発表予定

4.
教科書・参考書

 必要な資料は講義中で配布

5.
準備学修の内容

 配布資料の予習と講義内容の復習

6.
その他履修上の注意事項

 主体的にノートを取り、内容理解を深めていくこと。
 *社会状況、国際情勢の変化に対応し積極的に新しいトピックを取り入れていくため、以下の授業内容・順序は入れ替わることがある。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 伝統宗教、ヒューマニティ(人間性)、新テクノロジーを並列的、重層的にとらえながら、人間存在についての理解や信念の揺れを問題にする。
【第2回】
 人間存在について考える上で、「死と再生」および「生と死」のテーマに着目する。生物学的な死やデータの消去にとどまらないような死について考察するために、新たに「生なる死」の概念を導入する。
【第3回】
 「生なる死」(自らの生物学的な死によらない、自らの存在関係の根本的変容)の概念と伝統宗教、ヒューマニティ、新テクノロジーの関係について、前二回の講義内容をふりかえり、改めて考察を加える。
【第4回】
 「生なる死」を継承し、文化、文明を形作る「文化なる死」の概念について検討する。
【第5回】
 間接体験としての生物学的な死と、その死を位置づける世界観としての統一時空について解説し、その内容および特徴を分析する。
【第6回】
 「生なる死」「文化なる死」を位置づける世界観としての生命の時空、文化の時空について解説し、伝統宗教、民俗的な経験と知恵の新たな意義を見出す鍵を求める。
【第7回】
 「生なる死」「文化なる死」の非認知の問題を扱う。
【第8回】
 「生なる死」「文化なる死」の喪失の問題を扱う。
【第9回】
 「生なる死」「文化なる死」の喪失の影響(闇の漂流)の問題を扱う。
【第10回】
 「生なる死」「文化なる死」の気づきの問題を扱う。
【第11回】
 「生なる死」「文化なる死」の構造を検討する。
【第12回】
 「生なる死」「文化なる死」の共有について考察する。
【第13回】
 人間存在について「死と再生」および「生と死」の観点から考察する。
【第14回】
 試験テーマ解説
【第15回】
 全体講評、授業内期末試験