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授業の概要(ねらい) |
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「嗜好品」という概念は英語圏には存在しないようであるが、日本語では「栄養摂取を目的とせず、香味や刺激を得るための飲食物」と定義される(広辞苑第6版)。主には酒、たばこ、コーヒー、茶などを指すが、いずれも、精神を変容させる向精神物質(精神作用物質)を含有しており、人類は太古の昔より、このような物質の効果を楽しんできた。今日では、例えば12歳以上の米国人の60%以上に飲酒経験があり、2歳以上の人口の約9割が日常的にカフェイン含有飲料・食物を摂取しているという(米国公衆衛生総監報告書、2016;Ries & Fiellin, 2014)。一方、これらはいずれも依存症など、物質使用障害・物質誘発性障害といった深刻な影響を来たす場合がある。本講義では「嗜好品の科学」をテーマとして、日常生活でほぼルーチン的に関わっている、酒(アルコール)、たばこ(ニコチン)、茶(カフェイン)など嗜好品の作用について、性差を含め、紹介します。
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授業の到達目標 |
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われわれが意識する、しないに関わらず、日常的に摂取している向精神物質の作用メカニズムや、精神作用、毒作用についての理解を深めるとともに、これら化学物質がこころのはたらきを変化させるメカニズムについて学びます。
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成績評価の方法および基準 |
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中間レポート、受講態度・質疑内容(合計60%)、最終レポート(40%)で評価します。詳細は第1回講義で説明します。
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教科書・参考書 |
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参考文献は講義内で紹介します。講義はスライドに沿って行いますが、スライドはキイとなるもののみ配布します。
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準備学修の内容 |
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嗜好品を含め、自分の身の回りにある化学物質が、良い面、悪い面を含め、自分やひとのこころにどのような影響を与えているのかを考え、日常生活においても授業内容をフィードバックしつつ、そのメカニズムを考える癖をつけてください。
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その他履修上の注意事項 |
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薬物名、代謝物など細部を覚える必要はありません。「ストーリー」(話の筋道、論理展開)を追い、理解すること、またそのためのキイワード・概念を把握する努力をしてください。積極的な質問・討論を歓迎します。
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各回の授業内容 |
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【第1回】 | イントロダクション~嗜好品とはなにか | 【第2回】 | カフェインの科学(1)どこで摂取しているのか・疫学 | 【第3回】 | カフェインの科学(2)カフェインの薬理 | 【第4回】 | カフェインの科学(3)自覚効果、強化効果 | 【第5回】 | カフェインの科学(4)カフェイン使用障害はあるのか | 【第6回】 | アルコールの科学(1)疫学、アルコールの薬理 | 【第7回】 | アルコールの科学(2)アルコール誘発性障害(中毒症状):急性毒性、慢性毒性 | 【第8回】 | アルコールの科学(3)アルコール使用障害:依存症、離脱症状 | 【第9回】 | アルコールの科学(4)アルコール関連障害・治療 | 【第10回】 | アルコールとうつ、自殺 | 【第11回】 | 喫煙の科学:(1)たばことニコチン | 【第12回】 | 喫煙の科学:(2)ニコチンの薬理 | 【第13回】 | 喫煙の科学:(3)ニコチンの依存性・強化効果 | 【第14回】 | 喫煙の科学:(4)たばこ使用障害・治療 | 【第15回】 | 総合討論、まとめ |
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