Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:
学校臨床心理学特論 元永 拓郎
選択  2単位
【臨床心理学専攻】 18-1-1360-0535-007

1. 授業の概要(ねらい)

 学校をコミュニティ(地域)と考えるならば、学校における心理臨床活動は、地域援助活動のひとつと位置づけられる。文部科学省は、スクールカウンセラーの公立小学校・中学校・高等学校への配置を進めている。その動きに連動する形で、私立中学校・高等学校においてもカウンセラーの配置が進みつつある。そして、学校をコミュニティとみなし、さまざまな活動が展開されている。
 子供たちのメンタルヘルス上のさまざまな課題に学校現場が直面している。不登校、ひきこもり、中退といった社会的に回避の方向に進む問題もあれば、いじめ、学級崩壊、対教師暴力、非行、凶悪犯罪といった社会的逸脱の方向に展開するものもある。低学力化、発達障害、児童虐待、性犯罪も含めた犯罪被害などの多様な問題が、学校の内外で発生している状況にある。近年では、特別支援教育への対応も重要となっているところである。
 これらの問題へ対応するために、学校は多くの努力を行っている。スクールカウンセリングのみならず、学生ボランティアの活用、心理教育、ピアサポートなどさまざまな活動が展開されつつある。教員自身が子どものメンタルヘルスをサポートするための活動を広く展開しているところもある。しかし一方、学校教育の制度疲労、教員自身のメンタルヘルスの悪化などの問題も生じている。
 このような中で、学校心理臨床の現状と課題について、地域援助の考え方を導入しながら検討するのがこの特論の目標である。特に近年議論されているスクールカウンセラーの常勤化を念頭に置き、必要なテーマを議論していく。学校の中に相談室を開設することが、学校心理臨床活動ではない。相談室を出て、学校全体の成長促進力を高めるための諸活動の展開が重要となる。特にチーム学校という動きもあり、多職種がどう協働しながら児童生徒の心の支援をしていくか検討を深める。今学期は、スクールカウンセラーの常勤化に焦点をあてて、学校における多彩なスクールカウンセリング活動の展開やシステム作りなどを検討する。それらもふまえ学校における公認心理師や臨床心理士の活動について具体的に考えていきたい。

2.
授業の到達目標

 1)学校心理臨床の基本理念を説明できる
 2)学校において生じている種々の心理的課題について説明できる
 3)学校コミュニティに対する介入方法について説明できる
 4)(常勤)スクールカウンセラーとしての心構えや求められるスキルを身につける

3.
成績評価の方法および基準

 授業内発表60%、レポート40%

4.
教科書・参考書

 テキスト:『明解!スクールカウンセリング』黒沢幸子ら著 金子書房
 参考文献:『受験生、こころのテキスト』元永拓郎ら編著 角川学芸出版

5.
準備学修の内容

 テキストの次回授業範囲について充分に読み込み、授業で提示した学習課題に目を通し、自分自身の意見を記述して授業に臨む必要がある。授業内で学んだことをふまえ、用意した記述からどう考えが深まったかを、レポートとしてまとめることもある。

6.
その他履修上の注意事項

 学校における諸問題に対して、公認心理師及び臨床心理士への期待は高まっている。しかし実際は相談室の中にこもりっきりのスクールカウンセラーがいるなど、まだまだ充分な地域援助の方法論が身についていないケースをよく見聞きする。
 学校臨床で学ぶ、コミュニティ全体に介入する地域援助の方法論は、そのまま病院臨床や企業での臨床でも応用できるものである。なぜならば学校という場は、学校コミュニティの成長促進的な機能を有し、コミュニティチームを形成して関与することの醍醐味が感じられるところであるからである。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 ・ガイダンス
 ・学校臨床心理学とは?
【第2回】
 ・スクールカウンセリングの基本的枠組み/・スクールカウンセラーの常勤化にむけて
【第3回】
 ・学校というコミュニティを分析する/・コミュニティチームの形成
【第4回】
 ・コンサルテーションの方法/・心理教育の方法
【第5回】
 ・スクールカウンセラー常勤の活動
 ・システム作り
【第6回】
 ・児童虐待及びいじめ
【第7回】
 ・不登校について
【第8回】
 ・発達障害及び学級崩壊
【第9回】
 ・非行または逸脱行動
【第10回】
 ・自殺について
【第11回】
 ・子どもの貧困と地域連携
【第12回】
 ・教師のメンタルヘルス
【第13回】
 ・ひきこもりまたは修了後の支援
【第14回】
 ・IT依存及び関連問題
【第15回】
 ・まとめと展望