Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:EDE-201
経済学史 I 佐藤 光宣
選択  2単位
【経営】 18-2-2120-0258-003

1. 授業の概要(ねらい)

 経済生活に関する知識が確固とした学問として体系化されるに至った時期は、さほど古い昔ではない。それは今から250年ほど前のことである。その後今日に至るまで経済生活の理解のための知的運動は連綿と続いたが、その知識の体系化がイギリス産業革命の前夜にスコットランド生まれの道徳哲学者によってなされたのであった。その後に輩出した多くの優れた人々により、各時代の社会が直面する経済問題との格闘を通じて、経済学の知識に対して次々に知的酵母が加えられていった。
 いかなる演繹的な理論の体系でも、その前提に基礎付けられているから、経済学の理論が依って立つ前提の精査を授業では避けて通れない。とりわけ、歴史に名を刻んだ聖哲や極めて有能かつ多才な人々は人間をどのように捉えたのか、そして中心問題を何に求めたのかについての論議が、授業における最大の要点となる。これを聞き逃すことなく学生は授業に集中してもらいたい。この点に授業のねらいがある。

2.
授業の到達目標

 現今の資本主義という金銭文化段階(pecuniary stages of culture)にある諸社会は、極めて不安定な様相を呈している。学生には、この経済社会のなかで生き抜く力が以前にも増して求められている。加えて、我々は、問題解決能力を涵養することはもとより、何が問題なのかを見極める能力そのものが問われている。それゆえ授業の到達目標は、学生の能力に付加価値を与えることである。そこで授業の到達目標の細目は、これを次のように定める。
 (1)経済学の学問としての流れを説明できること。
 (2)経済学の主要な学派同士の連関を理解できること。
 (3)現今の経済社会について批判的かつ建設的観点を得ることができること。
 (4)経済学の根底に置かれた特定の人間性の概念と中心問題を理解できること。
 (5)アダム・スミスの生涯と諸著作について学問的な関心を持つようになること。

3.
成績評価の方法および基準

 前期期末試験の点数を中心に、学習到達度調査小テストと平常点によって成績を決定する。その配分基準は次の通りである。
 期末テスト60%/学習到達度調査小テスト20%/平常点20%

4.
教科書・参考書

 テキストは使用しない。プリントを配付する。参考書は下記の通りである。
 Eric Roll, A History of Economic Thought (London: Faber & Faber, 1954).〔隅谷三喜男訳『経済学説史』上下巻、有斐閣、平成14年刊〕。 Jacob Oser, The Evolution of Economic Thought (New York: Harcourt Brace & World, 1963); William J. Barber, A History of Economic Thought (London: Penguin Books, 1977).〔 稲毛満春、大西高明訳『経済思想史入門』至誠堂、昭和48年刊〕。 Thorstein Veblen, The Theory of the Leisure Class (New York: The Macmillan Company, 1899).〔小原敬士訳『有閑階級の理論』岩波書店、1999〕。Thorstein Veblen, Imperial Germany and the Industrial Revolution (New York: Macmillan, 1915); Thorstein Veblen, The Theory of Business Enterprise (New York: Charles Scribner's Sons, 1904).〔小原敬士訳『営利企業の理論』岩波書店、平成8年刊〕。佐藤光宣著『制度主義者たちと限界主義経済理論』多賀出版、昭和63年刊。

5.
準備学修の内容

 総合基礎教育科目の「経済学」を履修し、その内容を的確に理解していることが望ましい。同様に、「経済思想史」は必須の授業科目と言わねばならない。また、歴史について深く真摯な関心を持つことは、この授業の準備として何より幸いである。さらに、世界史と経済史とを同時に学ぶことも準備学習となる。なお、「経済学史Ⅰ」の履修は、そのまま「経済学史Ⅱ」の履修準備となることは言うまでもない。
 なお、授業2単位週90分間の授業については、週180分以上の授業時間以外の学習時間が必要である。本授業も、その例外ではない。

6.
その他履修上の注意事項

 経済学の学問としての歴史を理解することは、先人たちの知的格闘を通じて建設された経済学に対して畏敬の念を深めるに違いない。学生は授業に臨んでは、経済学的および歴史的な観点から物事を考える態度で聴講し、読み書きすることを望む。授業の内外を通じて行われるであろう勉学は、この授業が学生に対して最も欲するところである。
 なお、毎回の授業に際して学生は勉学のための秩序を乱すことのないよう、まず要望する。また、一貫した知的環境のなかで授業が成立するよう、併せて要望する。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 自己紹介。前期授業の内容と予定
  ―シラバスの解説を中心として―
【第2回】
 経済思想の淵源
  ―プラトンの「理想的社会」とアリストテレスの「クレマティスティケ」―
【第3回】
 中世キリスト教神学と経済思想
  ―トマス・アクィナス(Thomas Aquinas)の社会経済思想―
【第4回】
 経済学史年表の解説①
  ―ジェイコブ・オサー著『経済思想の進化』(Jacob Oser, The Evolution of Economic Thought, 1964.)―
【第5回】
 経済学史年表の解説②
  ―ジェイコブ・オサー著『経済思想の進化』(Jacob Oser, The Evolution of Economic Thought, 1964.)―
【第6回】
 重商主義学派(Mercantilist School)
  ―トーマス・グレシャム(Thomas Gresham)、トーマス・マン(Thomas Mun)およびジェームズ・ステュアート(James Steuart)の経済思想―
【第7回】
 重農主義(Physiocratic School)
  ―フランソワ・ケネー(François Quesnay)の『経済表』とその経済政策論―
【第8回】
 古典派経済学(Classical Economics)とその成立 ①アダム・スミス(Adam Smith)
  ―その生涯と著作―
【第9回】
 古典派経済学(Classical Economics)とその成立 ②アダム・スミス(Adam Smith)
  ―その著『道徳情操論』と『諸国民の富』との内面的関係―
【第10回】
 古典派経済学(Classical Economics)とその成立 ③アダム・スミス(Adam Smith)
  ―アダム・スミス経済理論の精霊論的およびニュートン主義的性格―
【第11回】
 古典派経済学(Classical Economics)とその成立 ④アダム・スミス(Adam Smith)
  ―アダム・スミスの人間性の概念と中心問題―
【第12回】
 古典学派(Classical School)の展開 ⑤デイヴィッド・リカード(David Ricardo)
  ―その人間性の概念と中心問題―
【第13回】
 古典学派(Classical School)の展開 ⑥デイヴィッド・リカード(David Ricardo)
  ―その労働価値説とジェレミー・ベンサム(Jeremy Bentham)―
【第14回】
 古典学派(Classical School)の展開 ⑦トマス・ロバート・マルサス(Thomas Robert Malthus)
  ―その人間性の概念と中心問題および「弁神論」(theodicy)―
【第15回】
 古典学派(Classical School)の展開 ⑧トマス・ロバート・マルサス(Thomas Robert Malthus)
  ―資本主義経済の不均衡―