Web Syllabus(講義概要)

　卒業後、どのような進路を選ぼうとも、ある問題を調査し、その結果を報告書として提出し、または人前でプレゼンテーションをする機会に遭遇する。本演習では、最終的に参加者が自分の関心のあるテーマを選び、文献調査や資料収集を通して、自らの問題関心を深める能力を構築することを目標としている。諸問題に関して理解を深めながら、調査能力、分析能力、結果の整理・発表の能力を身につけていくことがこの演習の目的である。以上の能力を身につけるために、本演習では、文献の輪読や資料の読解を行う。担当教員は、財政学、とくに財政と福祉の関係を研究している。そのため、基本的に、日本財政や地方財政に関する問題を取り上げる予定だが、参加者の問題関心に沿って柔軟に演習をすすめていく予定である。
　春学期は、財政学や政府統計の基本を学ぶ。次に、文献の輪読を通じて、資料の作成、プレゼンの基本について学び、最終的にはレポートの書き方を学んでもらう。基本的な課題は以下の通りである。
　①調査・研究能力を鍛える
　　・政府HPや自治体HPより、基礎的な資料や統計の入手の仕方を理解する。
　　・集めた資料を素材に基礎的な分析方法を覚える。
　　・文献の輪読を通じて、テーマの設定、分析の手法について学ぶ。
　②グループ毎に特定のテーマに取り組む。
　　①の活動で鍛えた能力を用いて、具体的なテーマにグループ単位で取り組む。最終的に春学期の最後にプレゼンテーションを実施する。適宜進捗状況について、ゼミ内で報告する。
　③内外の合同ゼミに参加し、ゼミ活動での成果を発表する

　（1）他の人と協力して調査研究を行い、その成果を報告できる。
　（2）公的な統計・資料を収集し、特定のテーマについて調査することができる。
　（3）規定の様式に従ったレポートを執筆し、その内容を報告できる。

　基本的に、演習への参加状況や発表などを踏まえ、総合的に評価する。

　参加者の希望などを考慮して輪読文献や課題を決定する。ただし、まず財政学の基本を学ぶために、以下の文献を教科書として用いる。
　　沼尾波子・池上岳彦・木村佳弘・高端正幸『地方財政を学ぶ』有斐閣、2017年。
　レポート執筆、レジュメ作成の参考になる文献として、以下の文献を挙げておく。
　　（1）山口裕之『コピペと言われないレポートの書き方教室：3つのステップ』新曜社、2013年。
　　（2）戸田山和久『新版 論文の教室―レポートから卒論まで』NHK出版、2012年。
　　（3）伊藤修一郎『政策リサーチ入門―仮説検証による問題解決の技法』東京大学出版会、2011年。
　文献（3）は指定図書コーナーに揃えられている。
　財政問題を調べる際に財政史の通史を概観するのも有益である。以下の文献は指定図書コーナーに揃えられている。
　　（4）井手英策編『日本財政の現代史Ⅰ　土建国家の時代　一九六〇～八五年』有斐閣、2014年。
　　（5）諸富徹編編『日本財政の現代史Ⅱ　バブルとその崩壊　一九八六～二〇〇〇年』有斐閣、2014年。
　　（6）小西砂千夫編『日本財政の現代史Ⅲ　構造改革とその行き詰まり　二〇〇一年～』有斐閣、2014年。
　社会保障、労働、格差問題といったトピックについては文献が無数にある。ミネルヴァ出版の「福祉＋α」シリーズは初学者にも勧められる。
　　（7）橘木俊詔編『格差社会』ミネルヴァ書房、2012年。
　　（8）埋橋孝文編『生活保護』ミネルヴァ書房、2013年。
　　（9）濱口桂一郎編『福祉と労働・雇用』ミネルヴァ書房、2013年。
　＊以上の文献は指定図書コーナーにある。

　事前に文献の指定箇所を読解することや自分の報告準備を入念にすること。

　人前で発表することや、文章執筆を過度に怖がる必要はありません。心配いりません、必ずできるようになります。