Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:CIL-201
物権法 内田 暁
選択  2単位
【法学】 18-1-1210-4163-015A

1. 授業の概要(ねらい)

 本講義では、民法典第二編第一章から第六章の内容について学びます。
 我が国の民法典は、私人の財産関係を大きく2つの観点から区別し、整理しています。すなわち、私人の物に対する関係と、私人の私人に対する関係です。一般に、前者を規律する法分野を物権法、後者を規律する法分野を債権法といいます。本講義は、この物権法について学ぶことになります。
 我々の日常生活は、様々な「物」に取り囲まれています。試しに皆さんの身の周りにあるであろう「物」を挙げれば、例えばスマホやパソコン、教科書やノート、ペンなど(「動産」といいます)があるでしょう。また、皆さんは家に住んで日常生活を営んでいるでしょうが、これも「物」です。さらに言えば、その家も空中に浮かんでいるわけではなく、ちゃんと土地の上に立っています。この土地もまた「物」です(「不動産」といいます)。このように、我々の日常生活は「物」とともにあり、「物」のない生活など考えられないのです。
 しかし、そうであるにもかかわらず、我々とこれらの「物」との間にいかなる法的関係があるのかという点については、我々は普段あまり意識しません。例えば皆さんも、「これは自分の物だ」という表現をよく使うことでしょう。しかし、そのことが法的にいかなる意味を持っているのかについては、自覚したことがないかもしれません。そこで本講義では、我々と「物」との間の関係(物権関係)について学んでゆきます。具体的には、そもそも物権とはどのような権利なのか、我々はどのようにして物権を取得するのか、どのようにすれば取得した物権を他人にも主張してゆけるのか、といった問題について学んでゆきます。

2.
授業の到達目標

 ①物権の意義や性質、その変動や第三者への対抗といった物権法の基本的な知識を習得する。
 ②習得した知識を活かして、具体的な問題を分析できるようにする。

3.
成績評価の方法および基準

 ・15回目の授業内で実施する試験の点数による評価(100%)
 ・出席点は、原則考慮しません(出席していれば単位が取得できるというわけではなく、逆に、出席していないから単位が取得できないというわけでもありません)。

4.
教科書・参考書

 教科書:①松井宏興『物権法』(成文堂、2017年)
 参考書:②淡路剛久・鎌田薫・原田純孝・生熊長幸『民法Ⅱ』(有斐閣、第4版、2017年)
     ③道垣内弘人『リーガルベイシス民法入門』(日本経済新聞社、第2版、20117年)
     ④潮見佳男・道垣内弘人『民法判例百選Ⅰ総則・物権』(有斐閣、第7版、2015年)
 本講義は、①のテキストに則して進行します。債権法改正にいち早く対応した定評あるテキストとして②も挙げておきますが、こちらはあくまでも参考文献です(必ずしも購入の必要はありません)。また、民法の全体像についてはテ③のテキストが非常に分かりやすく、おすすめです。最後に、定評のある判例教材として④を挙げておきます。

5.
準備学修の内容

 各回の授業時に、次の回で取り上げる内容についてアナウンスしますので、受講者は、上記テキストの該当箇所を読むようにして予習するとよいでしょう。その際に、テキストを読んでいて分からない箇所に印を付けておき、そこを授業で確認するという姿勢で講義に臨むと良いでしょう。
 また、予習も大事ですが、まずは講義に参加し、授業時間外ではその復習に重点をおいて勉強するとよいでしょう。学習に際しては、条文や学説、判例を暗記しようとするのではなく、「なぜこのようなルールがあるのか」「なぜこのような学説があるのか」などといった点を意識して、「理解」しようと努めるとよいでしょう。細かな学説や判例は数多くありますが、それらは樹に喩えれば枝葉のようなものです(これらの学説や判例が大事でないという意味では決してありません)。樹の枝葉は、幹から生えているのであって、それだけで宙に浮いているものではありません。法律学の修得にとっては、枝葉に集中するのではなく、まずはそれらの枝葉が生えている幹をしっかりと把握することが肝要です。本講義でも、幹を把握することを第一の目標としてゆきますが、受講者が自習する際にも、幹を意識して学習するとよいでしょう。
 最後に、分からない個所をそのままにしておくのではなく、積極的に教員に質問するなどの姿勢も大事です。質問は随時受け付けますので、お気軽にお尋ねください。

6.
その他履修上の注意事項

 ・受講時には六法(『ポケット六法』や『デイリー六法』などの小型のもので結構です)を必ず持参してください。六法の引き方に慣れることも、法学部での学習の大事なポイントです。
 ・授業中の私語など、他の受講生の迷惑になるような行為は厳禁です。
 ・冒頭に書いたように、日本の民法典は、「物権」と「債権」とを峻別して体系を作っています。したがって、「債権」と対比しつつ「物権」を学習することによって、より理解が進みます。そこで、本講義の受講者は、本講義と並行して「債権総則」の講義も履修することが望ましいです(必須ではありません)。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 イントロダクション 物権法入門 物権法の基本原則 物権の客体 物権の種類
【第2回】
 物権の効力 物権的請求権の基本
【第3回】
 物権的請求権をめぐる発展的問題
【第4回】
 物権変動の意義と原因 物権変動と公示の原則・公信の原則 物権変動における意思主義と形式主義 物権変動の時期
【第5回】
 不動産物権変動の対抗要件 「登記」について
【第6回】
 民法177条をめぐる具体的問題
【第7回】
 民法177条にいう第三者の範囲
【第8回】
 動産物権変動の対抗要件 「引渡し」について
【第9回】
 動産の即時取得について
【第10回】
 所有権について 所有権の社会的意義 所有権の性質 所有権の内容と制限
【第11回】
 所有権の取得方法 共有の問題 相隣関係について概観
【第12回】
 地上権の意義と内容
【第13回】
 永小作権、地役権の意義と内容
【第14回】
 占有権の意義と内容
【第15回】
 物権法のまとめと授業内試験
 ※上記計画は、あくまで予定です。具体的な進行状況によっては前後することもありえます。