1. |
授業の概要(ねらい) |
|
本講義では、民法典第三編第一章に規定されている債権総則について、とりわけ、多数当事者の債権関係や債権譲渡、弁済や相殺といったテーマについて取り扱います。 我が国の民法典は、私人の財産関係を大きく2つの観点から区別し、整理しています。すなわち、私人の物に対する関係と、私人の私人に対する関係です。一般に、前者を規律する法分野を物権法、後者を規律する法分野を債権法といいます。 さて、「物」は、基本的には目で見て触れることが出来るものです。これに対して、「債権」とは、基本的には目で見ることも触れることも出来ません。債権とは観念的なものなのです。そのような債権の本質とはどのようなものなのか、債権にはどのような効力があるのかなどといった問題について規律しているのが、「債権総則」なのです。 規律する対象が観念的であるが故に、債権総則をめぐる議論も抽象的になりがちで、特に初学者にとっては理解し難い面もあるかもしれません。本講義では、基本的には下記指定のテキストに沿って債権総則について学習してゆきますが、適宜具体例を補い、判例を紹介するなどして、受講者の理解の助けにしたいと考えています。 なお、2017年には債権法が大きく改正されました。この改正法の施行は2020年が予定されています。本講義では、現行の民法を中心に取り上げますが、改正後の債権法についても適宜言及してゆきます。
|
2. |
授業の到達目標 |
|
①債権総則編の学習を通じて、債権法の基礎的知識を修得する。 ②習得した知識を活かして、社会において生起する問題を分析・説明できるようになる。
|
3. |
成績評価の方法および基準 |
|
・15回目の授業内で実施する試験の点数による評価(100%) ・出席点は、原則考慮しません(出席していれば単位が取得できるというわけではなく、逆に、出席していないから単位が取得できないというわけでもありません)。
|
4. |
教科書・参考書 |
|
教科書:①松井宏興『債権総論』(成文堂、2013年) 参考書:②中田裕康『債権総論』(岩波書店、第3版、2013年) ③道垣内弘人『リーガルベイシス民法入門』(日本経済新聞出版社、第2版、2017年) ④『民法判例百選Ⅱ 債権』(有斐閣、第7版、2015年) 本講義は①のテキストに則して進行します。この他に、より詳細な体系書として②があります。ただ、こちらはあくまでも参考文献です(購入の必要は必ずしもありません)。また、民法の全体像を分かりやすく学べるテキストとして、③を挙げておきます。こちらは、債権法の改正にも対応しています。また、定評のある判例教材として、④も挙げておきます。
|
5. |
準備学修の内容 |
|
各回の授業時に、次の回で取り上げる内容についてアナウンスしますので、受講者は、上記テキストの該当箇所を読むようにして予習するとよいでしょう。その際に、テキストを読んでいて分からない箇所に印を付けておき、該当箇所について授業で確認するという姿勢で講義に臨むと良いでしょう。 また、予習も大事ですが、まずは講義に参加し、授業時間外ではその復習に重点をおいて勉強するとよいでしょう。学習に際しては、条文や学説、判例を暗記しようとするのではなく、「なぜこのようなルールがあるのか」「なぜこのような学説があるのか」などといった点を意識して、「理解」しようと努めるとよいでしょう。細かな学説や判例は数多くありますが、それらは樹に喩えれば枝葉のようなものです(これらの学説や判例が大事でないという意味では決してありません)。樹の枝葉は、幹から生えているのであって、それだけで宙に浮いているものではありません。法律学の修得にとっては、枝葉に集中するのではなく、まずはそれらの枝葉が生えている幹をしっかりと把握することが肝要です。本講義でも、幹を把握することを第一の目標としてゆきますが、受講者が自習する際にも、幹を意識して学習するとよいでしょう。 最後に、分からない個所をそのままにしておくのではなく、積極的に教員に質問するなどの姿勢も大事です。質問は随時受け付けますので、お気軽にお尋ねください。
|
6. |
その他履修上の注意事項 |
|
・受講時には六法を必ず持参してください。 ・授業中の私語など、他の受講生の迷惑になるような行為は厳禁です。 ・本科目を受講する前に、あるいは本科目と並行して民法概論や民法総論、物権法や契約総論、契約各論といった科目を受講していることが望ましいでしょう。 ・本科目は、『債権総則Ⅰ』と内容的に連続していますので、受講生は本科目と併せて『債権総則Ⅰ』の科目も受講することが望ましいでしょう。
|
7. |
各回の授業内容 |
|
【第1回】 | イントロダクション 債権総則Ⅰの復習 | 【第2回】 | 債権の消滅① 弁済と弁済の提供、誰が誰に弁済すべきかについて | 【第3回】 | 債権の消滅② 弁済による代位について | 【第4回】 | 債権の消滅③ 代物弁済や弁済供託について | 【第5回】 | 債権の消滅④ 相殺の意義と機能について | 【第6回】 | 債権の消滅⑤ 相殺の要件・効果について | 【第7回】 | 債権の消滅⑥ 相殺をめぐる発展的問題、債務引受について | 【第8回】 | 債権譲渡① 債権譲渡の意義と機能について | 【第9回】 | 債権譲渡② 債権譲渡の要件・効果について | 【第10回】 | 債権譲渡③ 債権譲渡の対抗要件と発展的問題について | 【第11回】 | 多数当事者の債権関係① 分割債権関係 不可分債権関係 | 【第12回】 | 多数当事者の債権関係② 連帯債務の意義と性質 連帯債務者の一人に生じた事由の効力 | 【第13回】 | 多数当事者の債権関係③ 連帯債務者間の求償関係 不真正連帯債務 | 【第14回】 | 多数当事者の債権関係④ 保証債務 保証の意義と機能 | 【第15回】 | 債権総則Ⅱのまとめと試験 ※上記計画は、あくまで予定です。具体的な進行状況によっては前後することもありえます。 |
|