Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

ひとつ前のページへ戻る 教授名で検索

 
科目ナンバリング:HEA-410
西洋史籍講読5- IV 石川 敬史
選択必修  2単位
【史】 18-1-1340-4649-018A

1. 授業の概要(ねらい)

 本授業では、フランスの政治思想家アレクシ・ド・トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』を精読する。本書は、トクヴィルが1830年代にアメリカを訪問した知見をもとにデモクラシーを考察した古典的名著であり、西洋史を学ぶ者には、必須の著作である。古典の古典たるゆえんは、再読が可能であり、常に読む者が同時代を考察する際の参考になるところにある。例えば、現代を生きる私たちにとっては、デモクラシーをどのようにとらえるかが重要な課題であろう。その際に、近代世界で最初にデモクラシーが展開した1830年代アメリカの状況を、当時のヨーロッパで最高の知識人の一人であったトクヴィルがどのように考えていたかを参照すべきであろう。
 しかしながら、「古典的名著」というものは、実際にはなかなか読まれないものである。それゆえ本授業では、「実際にはなかなか読まれない古典的名著」を完全に読むことを目指す。本書の精読を通して、歴史を学ぶ上での知的な基盤を確立することがこの授業のねらいである。

2.
授業の到達目標

 デモクラシー論の古典的名著を精読することによって、現代の諸問題に対する自分の視座を獲得する。
 西洋史文献を読み解くための基本的素養を習得する。

3.
成績評価の方法および基準

 授業への参加姿勢と討論への貢献に対する評価70%
 報告者としてのレポート内容に対する評価30%

4.
教科書・参考書

 トクヴィル(松本礼二訳)『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』(岩波文庫、2012年)

5.
準備学修の内容

 受講者は、その日の授業で読む章を事前に読み込み、自分のコメントを用意しておく。
 受講者は、必ず複数回の報告を担当するので、報告者となった場合は、レジュメを用意する。

6.
その他履修上の注意事項

 この授業は、受講者の積極的な発言によって成立するものである。報告の出来不出来よりも、授業への参加姿勢を主要な評価の対象としている。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 ガイダンス
 講読書籍の解説と、授業運営の方針を説明し、報告担当割当を行う。
【第2回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第一章「境遇が平等になるにつれて、どのように習俗は和らぐか」
 第二章「デモクラシーはアメリカ人の普段の付き合いをどのように簡素でくつろいだものにするか」
 報告者による報告と内容の検討
【第3回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第三章「アメリカ人が自分の国ではあれほど神経質でないのに、われわれのところに来ると傷つきやすくなるのはなぜか」
 第四章「これまでの三章の帰結」
 報告者による報告と内容の検討
【第4回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第五章「デモクラシーは従僕と主人の関係をどのように変えるか」
 第六章「民主的な諸制度と習俗は地代を上昇させ貸借期間を短縮させる傾向をどのように持つか」
 報告者による報告と内容の検討
【第5回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第七章「デモクラシーの賃金への影響」
 第八章「デモクラシーの家族への影響」
 報告者による報告と内容の検討
【第6回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第九章「合衆国における女子教育」
 第一〇章「妻の姿の中に娘時代の面影がどのようにまた現れるか」
 報告者による報告と内容の検討
【第7回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第一一章「境遇の平等はアメリカにおける良俗の維持にどのように貢献するか」
 第一二章「アメリカ人は男女の平等をどのように理解するか」
 報告者による報告と内容の検討
【第8回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第一三章「平等はアメリカ人をどのようにして無数の小さな個別社会に自然に分割するか」
 第一四章「アメリカ人のマナーについての若干の考察」
 報告者による報告と内容の検討
【第9回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第一五章「アメリカ人の謹厳さについて、だがそれはなぜ彼らが時として無分別なことをしでかすのを妨げないか」
 報告者による報告と内容の検討
【第10回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第一六章「アメリカ人の国民的虚栄心がイギリス人のそれより落ち着きがなく論争的であるのはなぜか」
 第一七章「合衆国の社会の様相はどれほど騒がしく、同時にまたどれほど単調であるか」
 報告者による報告と内容の検討
【第11回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第一八章「合衆国と民主社会における名誉について」
 第一九章「合衆国に野心家はあれほど多いのに、大望がほとんど見られないのはなぜか」
 報告者による報告と内容の検討
【第12回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第二〇章「ある種の民主国における猟官について」
 第二一章「大きな革命が今後稀になるのはなぜか」
 報告者による報告と内容の検討
【第13回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第二二章「民主的諸国民は本来平和を欲し、民主的軍隊は本来戦争を望むのはなぜか」
 第二三章「民主的軍隊の中で、最も好戦的で最も革命的な階級は何か」
 報告者による報告と内容の検討
【第14回】
 『アメリカのデモクラシー 第二巻(下)』第三部講読
 第二四章「民主的軍隊を他の軍隊に比べて緒戦において弱くし、戦争の継続につれてこれを手強くするもの」
 第二五章「民主的軍隊の規律について」
 第二六章「民主社会における戦争についての若干の考察」
 報告者による報告と内容の検討
【第15回】
 本授業の総括と討論。全体の進行が遅れた場合はそれを補う。