Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:PSY-102
心理学基礎論 II 元永 拓郎
必修  2単位
【心理学科】 18-1-1360-0535-012A

1. 授業の概要(ねらい)

 臨床心理学は、心理学を理論的基礎とし、社会に生じるさまざまな「心理的ニーズ」を見立て、心の奥深い部分でかかわり、その営みを総合的に評価するための実践的学問である。医療、教育、産業、福祉、司法・矯正といったさまざまな分野においてその実践が積み重ねられている。臨床心理学は、心理学の各分野と密接に関連するとともに、精神医学や福祉学、教育学とも相互に影響しあい、心の健康増進に貢献している。
 臨床心理学は、①見立て(アセスメント)、②介入(心理療法、地域援助)、③研究(実践研究、評価研究含む)、④社会的位置づけ(倫理、法律、資格など)、の大きく4つに分けることができる。本講義では、臨床心理学の成り立ちや臨床心理学の代表的な理論の学びも通して、実際に心理学的支援を行うための基幹の学問である臨床心理学の概要を理解することを目指す。
 「見立て」においては、異常心理学と心理検査が重要となる。異常心理学では、統合失調症、気分障害、不安障害といった基本的な異常心理のみならず、性障害、リストカット、解離性障害、自殺、ひきこもりといった多様な現象も通観する。心理検査については、別の講義で詳しく取り上げられるが、その基本的知識について学習する。「介入」に関しては、臨床心理学に関する代表的理論について紹介する。
 2015年9月に心理職の国家資格「公認心理師」が創設されることになった。臨床心理士のこれまでの活動を、国家資格として引継ぎ、日本全国で心の健康をささえる活動が展開できる枠組み作りが始まっている。将来公認心理師(臨床心理士)になりたい人、悩んでいる人への支援を考えている人、心理学と社会との関連に関心のある人など、この講義で出てくるテーマから、さまざまな生き方について学び、自らの考えを深めてもらいたい。

2.
授業の到達目標

 1)臨床心理学の成り立ちについて概説できる
 2)臨床心理学の代表的な理論について概説できる
 3)臨床心理学に求められる社会的期待について把握し自分の意見を表明できる

3.
成績評価の方法および基準

 試験60%、小テスト20%、レポート20%

4.
教科書・参考書

 テキスト:『よくわかる臨床心理学(改訂新版)』下山晴彦編 ミネルヴァ書房
 参考文献:『新しいメンタルヘルスサービス』元永拓郎著 新興医学出版社
 参考文献:『明解!スクールカウンセリング』黒沢幸子ら著 金子書房

5.
準備学修の内容

 テキストの次回授業範囲について充分に読み込み、授業およびLMSで配布するホームワークに取り組む。またLMSにて配布する授業レジュメに事前に目を通し、自分自身の意見を用意して授業に臨む必要がある。

6.
その他履修上の注意事項

 臨床心理学が1年後期の必修科目である。また2年生以上は、選択科目として履修する。「心理的アセスメント」「心理学的支援法」は密接に関連する。また心理学実践に関する諸科目の基本として本科目を位置付けたい。
 臨床心理学が対象とする、さまざまな「異常な心理」が紹介される。これらの心理の学びを通して、生きづらさに直面しながらも、どう生きていくかを真剣に模索する姿を見い出し、多くのことを謙虚に感じてほしい。
 1年生で公認心理師を目指す人は必ず履修しなければならない。また2年生以上も含め、臨床心理士及び公認心理師を目指し大学院進学を希望する人は、この講義内容を深く理解すると同時に、紹介される書籍(文献)を主体的かつ意欲的に読む必要がある。そもそも臨床心理学を学ぶものは、膨大な書籍や論文を読む姿勢が求められることを肝に銘じてほしい。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 ・前期ガイダンス/・臨床心理学とは何か?/公認心理師とは?
【第2回】
 ・臨床心理学の専門性/・臨床心理学の実際/・臨床心理学の歴史
【第3回】
 ・臨床心理学における見立てについて
 ・正常性と異常性/・精神病という病と人類(統合失調症など)
【第4回】
 ・アセスメントの方法(インテイク面接、心理検査)
【第5回】
 ・躁とうつという病(気分障害など)/・神経症の発見と解体(心因をめぐる病理)
 ・人格障害/発達障害の流行(社会の成熟と精神病理)
 ・その他の異常心理(PTSD、認知症など)
【第6回】
 ・心理学的支援に関する代表的理論-精神分析
【第7回】
 ・クライエント中心療法
【第8回】
 ・行動療法、認知行動療法
【第9回】
 ・家族療法
【第10回】
 ・森田療法、内観療法、遊戯療法/・催眠療法、自律訓練法、ブリーフサイコセラピー
 ・集団療法、心理教育
【第11回】
 ・地域援助の展開/・危機介入とコンサルテーション
 ・健康・医療分野における心理的援助
【第12回】
 ・福祉分野における心理的援助/・教育・学校分野における心理的援助
【第13回】
 ・司法・犯罪分野における心理的援助/・産業・組織分野における心理的援助
【第14回】
 ・臨床心理学における研究とは?/・実践と研究のバランス
 ・質的研究と量的研究/・効果研究
【第15回】
 ・まとめ