Web Syllabus(講義概要)

平成30年度

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科目ナンバリング:ECH-102
経済史概論 II 佐藤 光宣
選択  2単位
【現代ビジ】 18-2-2120-0258-028A

1. 授業の概要(ねらい)

 経済史は、経済現象が歴史的にどのように生起してきたのかを問う学問である。この経済史に関する本授業は、ソースタイン・ヴェブレン(Thorstein Veblen)――『有閑階級の理論』(The Theory of the Leisure Class, 1899.)などの著者である異端のアメリカの経済学者――の制度的接近方法に依拠しながら、イギリス、ドイツおよびアメリカにおける経済社会の進化とそれが含む諸問題を取り上げる。
 授業を通じて、ヴェブレンの基本的見地を再確認しつつ、文化変化の理論への接近として経済生活の歴史的概括を試みる。こうして本授業は、資本主義経済制度の発展とその変容についての論議をめぐって具体的に展開する。この過程で資本主義経済制度の概念に次々に規定性が加えられ、かかる制度の限界の究明に向かう。
 それゆえ本授業は、現今の経済社会の実情を歴史的視点から再検討することをもって、その概要とする。

2.
授業の到達目標

 経済史という学問分野に学生の関心を引き付けることが、まずもって授業の到達目標への接近に他ならない。なおまた、経済生活の流れを掴むことに留まらず、学生が人生設計をするうえでの確たる一歩を踏み出す勇気を学び取ることは、この授業が目指す遠大な到達目標である。学び取った知識と勇気は、就職活動に際して、また社会人となってから、人間の能力としていよいよ開花するであろう。したがって、学生は履修後も継続して経済史に慣れ親しむことが、授業の最終的な到達目標である。そこに至るべき授業の個別の到達目標は、次の通りである。
 (1)アメリカ経済の独占の運動から金融資本の成立までの経済史の動向を理解できること。
 (2)1929年10月の株価大暴落の主たる諸原因について客観的に説明できること。
 (3)1930年代の大恐慌が世界経済に与えた影響を理解できること。
 (4)ヴェブレン経済学の優位性について知見を得ることができること。
 (5)第2次世界大戦の遠因とその経済的帰結について深慮できること。

3.
成績評価の方法および基準

 前期期末試験(60%)、学習到達度調査小テスト(20%)、およびこれらの試験結果に平常点(20%)を加えて評価を決する。また、正当な理由なく追試験等を実施することは制度的にできない。レポートによる救済措置は予定していない。

4.
教科書・参考書

 テキストは使用しない。主たる参考書は下記の通りである。テキストと参考書に替えて、資料を授業時に配付する。
 Thorstein Veblen, The Theory of the Leisure Class (New York: The Macmillan Company, 1899).〔小原敬士訳『有閑階級の理論』岩波書店、昭和36年刊〕。Thorstein Veblen, Imperial Germany and the Industrial Revolution (New York: Macmillan, 1915); Fernand Braudel, La dynamique du capitalisme (Paris: Arthaud, 1985).〔金塚貞文訳『歴史入門』中央公論新社、平成21年刊〕。藤瀬浩司著『資本主義世界の成立』ミネルヴァ書房、昭和55年刊〕。Rober Heilbroner & William Milberg, The Making of Economic Society, 12th Edition (New Jersey: Prentice Hall, 2007).〔菅原 歩訳『経済社会の形成』ピアソン桐原、平成21年刊〕。Rondo Cameron; Larry Neal, A Concise Economic History of the World: From Paleolithic Times to the Present (USA: Oxford University Press, 2002).〔ロンド・キャメロン、ラリー・ニール著/速水融訳『概説 世界経済史〈1〉旧石器時代から工業化の始動まで』東洋経済新報社、平成25年刊〕。Rondo Cameron; Larry Neal, A Concise Economic History of the World: From Paleolithic Times to the Present (USA: Oxford University Press, 2002).〔ロンド・キャメロン、ラリー・ニール著/速水融訳『概説 世界経済史〈2〉工業化の展開から現代まで』東洋経済新報社、平成25年刊〕。

5.
準備学修の内容

 経済生活の歴史を理解することは、先人が歩み築いてきた経験と知識および文化に対して尊敬の念を深めるに違いない。学生は授業に臨んでは、経済学的および歴史的な観点から物事を考える態度で聴講し、読み書きすることを望む。歴史について深く真摯な関心を持つことは、授業の準備として何より幸いである。
 なお、授業2単位週90分間の授業については、週180分以上の授業時間以外の学習時間が必要である。本授業も、その例外ではない。

6.
その他履修上の注意事項

 「経済史Ⅰ」を受講した学生のみが「経済史Ⅱ」を受講することができる。
 なお、毎回の授業に際して学生は勉学のための秩序を乱すことのないよう、まず要望する。また、一貫した知的環境のなかで授業が進展するよう、併せて要望する。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 自己紹介。授業の課題と予定
  ―シラバスの内容の解説―
【第2回】
 経済生活の史的概観
  ―「経済史Ⅰ」の若干の復習―
【第3回】
 経済史と貨幣の歴史 ①分業と交換
  ―物品貨幣から秤量貨幣へ―
【第4回】
 経済史と貨幣の歴史 ②貨幣と国家の形成
  ―鋳造貨幣から紙幣へ―
【第5回】
 ジャン・カルヴァン(Jean Calvin)と宗教改革思想
  ―二重予定説とアメリカ資本主義の興隆―
【第6回】
 イギリス産業革命の展開
  ―フィリス・ディーン(Phyllis Deane)の所説に基づいて―
【第7回】
 西洋民主主義諸国家と王朝国家
  ―その経済的性質と命運について―
【第8回】
 フランス産業革命と商業資本の育成
  ―ルイ=フィリップと七月王政の成立―
【第9回】
 ドイツ産業革命の実情
  ―ドイツ関税同盟の結成と工業化の端緒―
【第10回】
 アメリカの資本主義 ①
  ―アメリカ移民と「資本主義の精神」の変容―
【第11回】
 アメリカの資本主義 ②
  ―南北戦争から第一次世界大戦まで―
【第12回】
 アメリカの資本主義 ③
  ―独占の運動と金融資本の出現―
【第13回】
 アメリカの資本主義 ④
  ―株価の大暴落と経済的破局―
【第14回】
 ニュー・ディールとその理論的根拠
  ―ヴェブレンの「社会的購買力」とケインズの「有効需要」―
【第15回】
 現今における経済生活の文化的要因とその命運
  ―「金銭的競争」と「効率の意識的撤収」―