1. |
授業の概要(ねらい) |
|
本科目では、私たちの日々の生活やビジネス上の課題に対処するための経済学的思考のトレーニングを行う。「経済」という言葉から経済指標の算出方法や経済政策の効果の研究などをイメージする人もいるかもしれないが、実のところ「経済学」の対象はより広い。基本となる原則は単純で常識的なものだが、その単純な論理の積み重ねが、日常の人間行動に潜む謎の解明につながるのである。講義で紹介される事例にはおよそ実践的とは思えないものも多く含まれているだろう。しかし、本科目の受講を通じて経済学的な思考の型を身につけられれば、ものの見方が今までとは違ってくるかもしれない。「知識そのものが役に立つ」のではなく「思考法の習得が大切」なのである。
|
2. |
授業の到達目標 |
|
身のまわりでおこっている事象を経済学の専門用語にあてはめて考えることができる。 ・経済学における論理展開の方法についての基本的な知識を得る ・インセンティブ、機会費用、サンクコスト、裁定、比較優位、外部性、モラルハザードといった用語の意味・つかい方を知る
|
3. |
成績評価の方法および基準 |
|
ほぼ毎回行う小テスト(25パーセント)と期末試験(75パーセント)の結果で評価する。
|
4. |
教科書・参考書 |
|
特に定めないが、授業準備には下に挙げる文献を参照した。 ・Robert H. Frank (1988). The Economic Naturalist - Why Economics Explain Almost Everything. Virgin Books.(ロバート・H・フランク月沢李歌子(訳)(2007)、『日常の疑問を経済学で考える』、日本経済新聞出版社) ・飯田泰之(2003)、『経済学思考の技術』、ダイヤモンド社 ・飯田泰之(2012)、『思考の「型」を身につけよう 人生の最適解を導くヒント』、朝日新書 ・伊藤秀史(2012)、『ひたすら読むエコノミクス』、有斐閣 ・梶井厚志(2002)、『戦略的思考の技術 ゲーム理論を実践する』、中公新書 ・中島隆信(2006)、『これも経済学だ!』、ちくま新書
|
5. |
準備学修の内容 |
|
復習に力を入れよ。身の回りの興味のある(必ずしも経済には関係ない)現象を、講義で紹介された経済学の言葉で表現する努力をしてほしい。このためには、経済学以外に、対象に関する知識、当事者に関する想像も必要である。こういった作業を通じて、数理的・論理的思考に慣れ、経済学特有の考え方のクセが身につくのである。
|
6. |
その他履修上の注意事項 |
|
一般的な受講生の場合、漫然と講義に出席するだけでは、わかった気分にはなれるかもしれないが、経済学的思考を身につけられない。つまり試験に合格しない。経済学的思考ができるようになったと主張するには、自分で分析できることが要求される。そのためには、自分で手を動かして問題を解く、きいたり読んだりした説明を文章の切り貼りではなく自分の言葉で説明してみるという作業が不可欠であることに注意が必要である。 本科目に限らず、大学の授業で「わかりやすかった」という感想を述べないように努力してほしい。高度に専門的な話を「わかりやすく」しようとすると、どうしても正確さや厳密さを犠牲にしてしまう。それをよく考えずに「へえ、なるほど」と受け入れてしまうと、不正確な理解のままである。そうではなくて、違和感をみつけよう。どんなに小さな違和感でも、「私は勉強不足だから」などとは思わず、インターネットで批判記事を探したり、他で勉強したり、よく考えたりしてみると、何に違和を感じているのかわかることがある。それをふまえてもう一度議論全体を眺めれば、一段高い理解水準に達することができるだろう。
|
7. |
各回の授業内容 |
|
【第1回】 | イントロダクション | 【第2回】 | 論理的思考の基本 | 【第3回】 | データのつかい方 | 【第4回】 | モデルと評価軸 | 【第5回】 | インセンティブ | 【第6回】 | 機会費用 | 【第7回】 | サンクコスト | 【第8回】 | 裁定とノーフリーランチ | 【第9回】 | 取引コストと外国為替市場における裁定 | 【第10回】 | 絶対優位と比較優位 | 【第11回】 | 機会費用の比較による比較優位の判別 | 【第12回】 | 外部性 | 【第13回】 | 公共財 | 【第14回】 | みえない行動とモラルハザード | 【第15回】 | モラルハザード解消のためのインセンティブ契約 |
|