Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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経済学 II 石井 良輔
【Ⅳ】  2単位
【Ⅳ 社会と経済のしくみを学ぶ】 17-1-1110-3808-04

1. 授業の概要(ねらい)

 本科目では、経済学Ⅰに引き続き、私たちの日々の生活やビジネス上の課題に対処するための経済学的思考のトレーニングを行う。適宜復習を行うものの、経済学Ⅰの内容を理解していることを前提とする。
 演習科目のグループワークの準備でどれだけがんばるか、サークルの新歓コンパでどの席に座るか、交差点で左折したいときに対向車両がやってきたときに待つかそのまま進むか、じゃんけんでどの手を出すか、……。何かを決めるときには、相手が何をするのかが気になるものである。どういう結果になるかは、自分の行動だけではなくて、他の人の行動によっても変わるからである。こういった状況を、明確に記述して、厳密に分析するツールがゲーム理論である。本科目ではまず、具体的な数値例をつかって、ゲーム理論の基本的な知識を学び、その知識がどのようにつかわれるのかを、可能な限り現実的な応用例でみていく。
 「今100万円を出資すれば、10年後に120万円になって返ってくる」という投資話に乗るべきだろうか。教員が授業中の私語に厳しい態度をとることで、受講生にメリットはあるのか。私たちは、相当な時間、お金、手間をかけて、将来何の役にも立たない(かもしれない)学問をするために大学に通っている。はたして高等教育を受ける意味はあるのだろうか。自動車事故を起こして保険金を受けとると、等級が下がって将来の保険料支払額が増える。なぜこのようなしくみになっているのか。これらの問いに、必要であればゲーム理論を援用しつつ、経済学的に考えていく。

2.
授業の到達目標

 身のまわりでおこっている事象を経済学の専門用語にあてはめて考えることができる。
  ・同時ゲームを利得行列で表し、ナッシュ均衡を求めることができる
  ・交互ゲームをゲームの木で表し、部分ゲーム完全均衡を求めることができる
  ・現在価値、リスクと不確実性、コミットメント、シグナリング、スクリーニングといった用語の意味・つかい方を知る

3.
成績評価の方法および基準

 ほぼ毎回行う小テスト(25パーセント)と期末試験(75パーセント)の結果で評価する。

4.
教科書・参考書

 特に定めないが、授業準備には下に挙げる文献を参照した。
  ・John McMillan (1992). Games, Strategies and Managers. Oxford University Press. (ジョン・マクミラン 伊藤秀史、林田修(訳)(1995)、『経営戦略のゲーム理論 交渉・契約・入札の戦略分析』、有斐閣)
  ・伊藤秀史(2012)、『ひたすら読むエコノミクス』、有斐閣
  ・神戸伸輔(2004)、『入門ゲーム理論と情報の経済学』、日本評論社
  ・梶井厚志(2002)、『戦略的思考の技術 ゲーム理論を実践する』、中公新書
  ・川西聡(2009)、「ゲーム理論の思考法」、中経出版
  ・渡辺隆裕(2004)、『図解雑学ゲーム理論』、ナツメ社
  ・渡辺隆裕(2008)、『ゼミナールゲーム理論入門』、日本経済新聞社

5.
準備学修の内容

 復習に力を入れよ。身の回りの興味のある(必ずしも経済には関係ない)現象を、講義で紹介された経済学の言葉で表現する努力をしてほしい。このためには、経済学以外に、対象に関する知識、当事者に関する想像も必要である。こういった作業を通じて、数理的・論理的思考に慣れ、経済学特有の考え方のクセが身につくのである。

6.
その他履修上の注意事項

 一般的な受講生の場合、漫然と講義に出席するだけでは、わかった気分にはなれるかもしれないが、経済学的思考を身につけられない。つまり試験に合格しない。経済学的思考ができるようになったと主張するには、自分で分析できることが要求される。そのためには、自分で手を動かして問題を解く、きいたり読んだりした説明を文章の切り貼りではなく自分の言葉で説明してみるという作業が不可欠であることに注意が必要である。
 本科目に限らず、大学の授業で「わかりやすかった」という感想を述べないように努力してほしい。高度に専門的な話を「わかりやすく」しようとすると、どうしても正確さや厳密さを犠牲にしてしまう。それをよく考えずに「へえ、なるほど」と受け入れてしまうと、不正確な理解のままである。そうではなくて、違和感をみつけよう。どんなに小さな違和感でも、「私は勉強不足だから」などとは思わず、インターネットで批判記事を探したり、他で勉強したり、よく考えたりしてみると、何に違和を感じているのかわかることがある。それをふまえてもう一度議論全体を眺めれば、一段高い理解水準に達することができるだろう。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 イントロダクション
【第2回】
 利得行列
【第3回】
 ナッシュ均衡
【第4回】
 囚人のジレンマ
【第5回】
 ゲームの木とバックワードインダクション
【第6回】
 ムカデゲーム
【第7回】
 単利と複利
【第8回】
 割引と現在価値
【第9回】
 リスクと不確実性
【第10回】
 コミットメント
【第11回】
 授業中の私語に関するルール設定によるコミットメントゲーム
【第12回】
 シグナリング
【第13回】
 シグナルの発生費用と意味
【第14回】
 スクリーニング
【第15回】
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