Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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環境経済学 I 澤山 弘
選択  2単位
【経済】 17-1-1120-3067-05

1. 授業の概要(ねらい)

 環境「経済学」というと、一見難しそうに思われるかもしれませんが、この通年授業では、机上の「理論」を追うようなことはしません。実際の中身は「環境ビジネス論」です。特に地球温暖化対策の観点から、「自然エネルギー」の活用など大震災後一挙に関心が高まった「環境ビジネス」の様々な領域について、実例を紹介しながら、その現状と課題を明らかにしていくことに主眼を置いています。
 21世紀における人類最大の課題のひとつが、いかにして地球温暖化を食い止めるかにあることは、年を追うごとに狂暴化する自然災害を想起するまでもなく、明らかだと言えるでしょう。2015年に採択され、2016年秋に発効した「パリ協定」は、米中を含むすべての諸国がCO2排出削減に向け新たな取組みを進めようとするものです。
 そこで、春期授業では、まず、地球温暖化の現状を確認し、その防止策としてCO2排出量を半減していくためにはどのようなことが求められているのかといったことを、中長期的な視点から順を追って概説するとともに、「パリ協定」の概要を説明していきます。
 ついで、わが国において、CO2排出量削減に向けて進められてきた「国内排出量取引制度」や「カーボンオフセット」、「全量固定価格買取制度」といった最先端の取り組みの実際などを紹介します。
 そして、秋期授業の「環境ビジネス」各論につながるものとして、環境ビジネスの原点ともいうべき「リサイクル産業」と、「再生可能エネルギー」と呼ばれるものについて総論的に説明します。

2.
授業の到達目標

 皆さんは、ごみの分別回収の意義など、すでにある程度「環境教育」を受けてこられたと思います。地球環境問題とその解決を目指す「環境ビジネス」について、通年講義によって包括的な理解を得ていくために、春期授業では、まず、地球温暖化防止に向けたマクロ的な取り組みの実際を学び、具体的な知識を習得していくことを目標としています。

3.
成績評価の方法および基準

 毎回、質問票を配布しますので、わからないことや意見などがあったらぜひ書き込んでください。次の授業で説明します。積極的な質問や発言を高く評価します。出席のみによる加点はしません。
 試験では、教科書(持込可)や配布資料をしっかり読みこなしていれば回答できるような出題をします。

4.
教科書・参考書

 教科書:拙著『躍動する環境ビジネス―地球温暖化対策の新展開』(金融財政事情研究会)
 このほか、毎回、最新動向を踏まえた図表を中心とした資料を配布するほか、授業の進展に合わせ、報道番組からの録画や、独自に取材した現場のスライド写真(動画を含む)、企業パンフレット、製品実物なども紹介していきます。

5.
準備学修の内容

 地球温暖化対策や再生可能エネルギーの活用などに関する新聞記事は、毎日のように紙面を賑わしています。テレビの報道なども含め、できるだけ関心を持って見るようにしてください。この授業を通じて、だんだん理解が深まってくるはずです。

6.
その他履修上の注意事項

 地球環境問題や温暖化対策は、皆さんの将来の生活そのものに深く関わってくる問題です。自らの問題として、どのように捉えていったらよいのか考えていってください。
 なお、秋期授業では、地球環境問題の解決を目指す様々な「環境ビジネス」の実際を、豊富な現場取材に基づいて具体的に紹介していきますが、春期授業でのマクロ的な理解が大前提になりますので、ⅠとⅡはできるだけ通して受講してください。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 オリエンテーション -地球温暖化問題と「環境ビジネス」
【第2回】
 「不都合な真実」 -地球温暖化がもたらした衝撃
【第3回】
 地球温暖化による気温上昇の予測と被害推計 -洪水・氾濫、海面上昇による水没等々
【第4回】
 2050年「世界半減目標」の実現可能性と「先進国80%削減目標」 -「共通だが差異ある責任」
【第5回】
 2050年「日本低炭素社会のシナリオ」 -求められる省エネの徹底と再生可能エネルギーの利用拡大
【第6回】
 2050年「世界半減目標」を可能にする革新的技術への期待 -CO2回収・貯蔵(CCS)と水素利用など
【第7回】
 「シェールガス革命」 -我が国のエネルギー構成・自給率と、エネルギー争奪をめぐる地政学的変化
【第8回】
 原発再稼働問題と「脱原発」に向けた動き -新「中期エネルギー計画」の実現可能性
【第9回】
 「パリ協定」 -2020年以降を目標とした新たな包括的枠組み
【第10回】
 京都議定書目標達成に向けたわが国の歩み -「京都メカニズム」、「温暖化対策法」と「省エネ法」
【第11回】
 「自主参加型国内排出量取引制度」(JVETS)と、中小企業の排出量削減を促す「国内クレジット」制度
【第12回】
 「カーボンオフセット」と「オフセットクレジット」制度(J‐VER)
【第13回】
 「新エネルギー」と、再生可能エネルギーの「全量固定価格買取制度」 -欧州における展開を踏まえて
【第14回】
 「循環型社会」形成とリサイクル産業 -3R、容器包装や食品廃棄物の利活用など
【第15回】
 まとめ