Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

ひとつ前のページへ戻る 教授名で検索

 
観光リスクマネジメント I 小沢 健市
選択  2単位
【観光経営】 17-1-1130-3752-05

1. 授業の概要(ねらい)

 われわれは日々リスクに直面しながら生活している.リスクは日常生活のなかだけで生じるのではない.観光には,ある意味において,リスクはつきものである.例えば,現在(2017年2月下旬),東南アジア諸国への渡航者にはデング熱の注意喚起がなされているし,ここ最近では,ある国からの観光者の「爆買い」が終焉しつつあり,それが観光者を対象にさまざまな財・サービスを販売する小売店やデパート等の売上が低下傾向を示しはじめているといったこともまた,観光におけるリスクと言っても過言ではないであろう.観光におけるリスクは,観光者自身にも,そして観光に関わる企業にも生じ,それはまた政府の観光政策の変更にも影響を及ぼす.リスクは個人や個別企業のみならず,地域や国も直面するということである.この授業では,リスクに関する基礎的な経済理論を学び,その理論を現実に生じるリスクの分析やリスク回避にどう役立てられるかを平易に説明し,受講生自身のリスク対処能力を養うことが目的である.

2.
授業の到達目標

 リスクの基礎的な理論を学び,それをさまざまな現実のリスクの事例に適用しながら,受講生自身がリスクに直面した際にその理論を役立てられる能力,すなわち,問題解決能力を身につけられること.

3.
成績評価の方法および基準

 成績は,期中1回のリポートと期末のテストによって評価するが,それらのウエイトは,前者が40%,後者が60%である.しかし,欠席日数が三分の一を超える受講生は,リポートと期末テストが合格点であっても,不合格とする.

4.
教科書・参考書

 教科書は利用しないが,毎回授業開始時にプリントを配布する(但し,欠席者には原則として配布しない).
 参考書:酒井泰弘 著『リスクと情報:新しい経済学』勁草書房

5.
準備学修の内容

 授業終了後に必ず,その日に学んだことをノートに整理しておくことが必要.授業では,プリントに書かれていないことも話すので,それを各自が必ずノートしておくことも必要.

6.
その他履修上の注意事項

 リスクに関する正しい知識を理解しておくことは,これからの社会では不可欠であるが,リスクは学的にかなり難解な研究領域に入ると思われるので,受講生は休まずに毎回出席し,疑問点はすぐに質問することが望ましい.

7.
各回の授業内容
【第1回】
 講義開始に当たってのオリエンテーションと授業内容の説明と参考書の紹介
【第2回】
 生活の中のリスク:リスクは身の回りに沢山ある:リスクと不確実性は同一かそれとも異なるか:リスクは確率的であるが不確実性はそうではない
【第3回】
 リスクは観光に関する活動に様々な影響を及ぼしている.観光に重大な影響をおよぼした具体例を取り上げる:観光地が観光地でなくなるとき
【第4回】
 不完全情報とリスク:情報の不完全性もまたリスクの被害を大きくする
【第5回】
 リスクの基礎理論:期待効用理論の説明:合理的行動と不合理な行動:われわれの合理性は限定されている
【第6回】
 不完全な情報が観光者の買い物行動に及ぼす影響:土産品価格に関する不完全情報の存在が観光者の行動に及ぼす影響とは
【第7回】
 売手と買手の間での観光に関わる財・サービスに対する情報の非対称性の存在は観光活動にどう影響するか:(期中のリポート課題の発表)
【第8回】
 個人の合理性と社会の合理性は常に一致するのか:旅の恥はかき捨てではない
【第9回】
 観光者の将来の所得と観光関連財・サービスに対する価格の不確実性
【第10回】
 観光関連企業にとって観光者のキャンセルは企業経営にどう影響するか:航空会社や宿泊施設のオーバーブッキングはどうか
【第11回】
 海外渡航に関する情報は観光者にとってリスク回避のための有効な手段であるか
【第12回】
 経済的な交換としての観光はリスクに取り囲まれている:リスクに対する考え方は国により地域により異なるか:リスクヘッジへ向けて
【第13回】
 日常は常に続かない:リスクを再考する:観光者のリスク経験
【第14回】
 あなたが国際観光者の一人となったとき,どのようなことをリスクと考えるか:非日常の中のリスクは突然やってくる
【第15回】
 授業のまとめ