Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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観光経済学 II 小沢 健市
選択必修  2単位
【観光経営】 17-1-1130-3752-10

1. 授業の概要(ねらい)

 今学期は国際観光の経済分析を主要なテーマに取り上げ,国際観光(人間の国際間の移動)をテーマに,国際経済理論に依拠しながら,国際観光を経済学的にどう分析可能かを受講生に平易に説明したい.
 多くの人々は国際貿易はモノの移動のみを考えがちであるが,実は国際観光,つまり人々の国家間や地域間の移動は,移動する人々の訪問先での滞在に必要な財や・サービスへ支出(購入)し,また土産品購入等がしばしば行われている.これらの観光者の滞在先での支出は,人々の移動による財・サービスの輸入を意味している.これは,別の言葉でいえば,観光者による観光地からのあるいは滞在先の国々からの輸入を意味すると言ってよい.つまり,国際観光者は自らが貿易をしているということであるが,かつては,国際観光は「見えざる貿易」と呼ばれていた.この授業は,国際観光を見える貿易にするために,国際経済学や国際貿易理論を適用し国際観光の貿易的な側面を説明する.

2.
授業の到達目標

 受講生諸君に国際観光が「貿易」であると認識してもらうこと,そして国際経済学の基礎理論,すなわち,貿易がなぜ行われるかを受講生に理解してもらうこと,さらに国際経済学の基礎理論を用いて国際観光がどう分析可能かを理解してもらうこと,の3点であり,これらの理解を通じて,受講生自らが国際的なさまざまな問題を解決する能力を身につけられること.

3.
成績評価の方法および基準

 成績は,期中に実施する中間テスト,そして期末テストの2点により評価するが,それらのウエイトは,期中のテスト40%,期末テスト60%として評価する.但し,欠席が三分の一を超える受講生は,原則として,不合格にする.

4.
教科書・参考書

 教科書は特に定めないが,講義開始前に受講生にはプリントをほぼ毎回配布し,それを参考に講義を進めるが,欠席者には,原則としてプリントは配布しない.
 参考書:M.T.シンクレア・M.スタブラー著 小沢健市監訳『観光の経済学』

5.
準備学修の内容

 受講生は,必ず復習をするように心がけることが大切である.復習は,講義の内容を自分なりにまとめ,受講生各自が自身の講義ノートを作成することを意味し,そのノートをもとに,講義の内容を確かめたり,試験御の際に利用したりすることが可能であり,それは自身の講義内容の再確認に繋がり,さらにこの科目の内容全体の正しい理解に繋がるからである.

6.
その他履修上の注意事項

 学生諸君は,可能であれば,国際経済学や国際貿易理論といった科目を同時に受講することが望ましい.それによって国際経済学や国際貿易の基礎理論を正しく理解することが可能になるからであり,それはさらにこの科目の理解の促進に繋がり,受講生の課題発見や問題解決能力の促進に繋がるからである.

7.
各回の授業内容
【第1回】
 受講のためのオリエンテーションと我が国の国際観光の過去から現在までを統計によって確認する――日本の国際観光収支は長い間赤字であったが,一昨年下旬から黒字へと転じた
【第2回】
 なぜ貿易は行われるのか――ある財・サービスが国際価格より安い国と高い国が存在するとき,その財・サービスが自由に輸出入されるならば,その財・サービスの価格は世界で平準化する方向へ変化するか
【第3回】
 貿易が行われる主たる理由――古典的な絶対優位と伝統的な比較優位の概念の平易な説明
【第4回】
 比較優位は生産可能性フロンティアによって見出すことが可能――比較優位の生産可能性フロンティアを用いた計算方法
【第5回】
 比較優位を導出するための計算例――貿易は,絶対優位ではなく,比較優位で行われる
【第6回】
 観光における比較優位とは何を意味するか――観光にとっては比較優位のみならず,絶対優位も重要ではないか.例えば,エッフェル塔やグランドキャニオンは重要な観光資源であり,一つしか存在しない.
【第7回】
 貿易には比較優位の他に貿易をする際の交易条件が必要――交易条件と貿易:貿易は貿易当事国の消費者の経済厚生を高めるか
【第8回】
 これまでのまとめと中間テストの実施
【第9回】
 比較優位再論――比較雄の理論の理解を完全にするために仮想的な問題を提示し,それをどう説明可能かを平易に解説する
【第10回】
 伝統的な貿易理論から需要面に焦点をあてた新しい貿易理論――リンダーの貿易の需要理論の説明と国際観光への応用
【第11回】
貿易の新しい経済理論――規模の経済性の存在と製品差別化の説明
【第12回】
所得水準の類似性が貿易をするかしないかを決定する重要な要因である――何故か
【第13回】
多くの国々が国際観光政策として実施している戦略的観光政策の基礎理論――戦略的観光政策の意味とクールノーの複占モデルの説明
【第14回】
クールノー・モデルの国際観光政策への応用とその評価
【第15回】
授業のまとめ