Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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相続法 中江 章浩
選択  2単位
【法律】 17-1-1210-0382-07

1. 授業の概要(ねらい)

 親が努力して身につけた技能などの獲得形質は、子供には遺伝しません。しかし、人類は教育という形で、これを子供に、事実上遺伝させる仕組みを作ることにより、他の生物を圧倒し、現在の繁栄を築きあげました。親から子に財産を引き渡すという相続という仕組みも、この一例だと思います。したがって、相続の基本原則は、相続人全体が、もっとも発展できるように、真の権利者は誰かということを基本にして公平に分けることが大事であるということになります。しかし、ここに相続人という内輪の人間だけでなく、第三者が登場してくると、取引の安全も考えなければならず、真の権利者保護原理と自由競争原理の間で、バランスをとる必要が出てきます。そこで、本講座では、誰がどんな割合で、どんな財産を受け継ぐのかについてのあらましを、財産法を鳥瞰する形で学習します。また、内容は中江ゼミに直結し、全学部の方が受講できますので、ふるってご参加ください。

2.
授業の到達目標

 婚姻・親子・後見制度の概要と問題点について理解する。

3.
成績評価の方法および基準

 レポート(1回)、授業の出席、授業中の発言などを総合して評価しますが、出席点を重視します。

4.
教科書・参考書

 テキスト:『民法Ⅳ親族・相続』(内田貴著 東京大学出版会)
 参 考 書:『家族法判例百選』(有斐閣)、『民法のすすめ』(星野英一著 岩波新書)

5.
準備学修の内容

 指定した教科書を事前に読んでおくこと。
 このシラバスの授業計画の中に書かれている問についての自分なりの答をまとめておくこと。

6.
その他履修上の注意事項

 考えるための道具として法律の条文を使いますので、必ず、小六法を持参してください。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 使用するテキスト『民法Ⅳ親族・相続』(内田貴著 東京大学出版会)に従って、次の順序で、毎回の授業を行いますが、教科書の記述を単になぞるような授業をするのではなく、以下の問を切り口とする対話方式の授業を心がけます。
 相続とは何か
【第2回】
 相続法の概観
【第3回】
 相続人
【第4回】
 相続の対象
【第5回】
 慰謝料請求権の相続
【第6回】
 相続分
【第7回】
 共同相続財産
【第8回】
 遺産分割
【第9回】
 相続と登記
【第10回】
 相続回復請求権
【第11回】
 相続財産の清算
【第12回】
 遺言
【第13回】
 遺贈
【第14回】
 遺留分減殺請求権
【第15回】
 諸外国の相続法
○遺言:父が愛人に全財産を譲ると遺言した場合、どうしたらよいか
―キーワード―
所有権の本質、フランス人権宣言、市民革命の本質、産業革命の本質、相続の本質、婚姻制度の本質、贈与と相続、遺留分、遺留分減殺請求権、時効、除斥期間、調停、時効中断効
○遺言:秀吉の遺言は何故守られなかったか
―キーワード―
遺言の法的性質 遺言の方式と効 遺贈 遺言執行者 五大老・五奉行 遺留分 関が原の戦い 大阪夏の陣 秀頼と千姫 死亡危急者の遺言 遺贈義務者
○遺言:父は、この家は長男に与えると遺言を書き、母も署名した。その後、父は、司法試験に受かったら、この家をやると次男と約束した。この家は誰のものか
―キーワード―
後継ぎ遺贈 遺留分 遺言の撤回 条件 期限 出世払い 停止条件付契約 期日の定めなき金銭消費貸借契約、遺贈・贈与・相続と遺留分
○相続:20年後の帝京大学はどうなるか
―キーワード―
相続と経営 同族経営の得失と学校法人経営 成果主義vs協力・信頼 中小企業の相続 ダイエー・西武の歴史 トヨタ・松下の歴史
○相続:自宅を担保に老後の世話を受ける方法はないか
―キーワード―
福祉施設の住宅化 グループホーム、リバースモーゲッジ、介護、負担付贈与、登記、担保責任
○相続:同居していた母が病死したが、それを特に誰にも告げなかったところ、相変わらず年金が支給されてきたので、それを使って葬式を行った場合の法律関係はどうなるか
―キーワード―
遺族年金 詐欺 不当利得 相続財産、現存利益
○相続:近江商人の家訓は今も通用するか
―キーワード―
世界の養子制度、養子と血縁関係頻度、養子法の沿革 養子と皇室典範 能力主義と血統主義 特別養子 婿養子 細く長く 法人理論と相続 事業承継とライフサイクル 鴻池とUFJ 紀伊国屋文左衛門と紀伊国屋書店 三井家家訓と三井住友銀行
○相続:事業を息子に継がせるにはどうすればよいか(地域経済を支える中小企業の経営者が次の世代に事業を引き継ぐ環境を整えるためにはどうすればよいか)
―キーワード―
病院と中小個人経営企業 税金と事業承継 医療法人の出資金の評価 土地の出資 出資金の相互持合 第三者による事業承継、事業承継の円滑化
○相続:小泉純一郎と田中角栄の選挙はどこが違うか
―キーワード―
2世議員の選挙戦術 後援会組織と浮動票 政治資金規正法と公職選挙法 利益誘導と政策論争 毛利輝元と上杉景勝
○相続:猫に相続が無いのはなぜか
―キーワード―
相続とは何か geneとmeme、相続制度の根拠 民法中の相続法の地位 全体構造 相続法の沿革と平等主義 獲得形質の遺伝と教育 年金制度と扶養・相続・贈与
○相続分:愛人の子供の取り分は本妻の子供の取り分より少なくするべきであると言う意見は正しいか
―キーワード―
相続分の哲学(配偶者・子・親・兄弟) 判例の動き 非嫡出子の相続分 相続人と胎児・代襲相続 遺産分割 特別受益者 実子 嫡出推定 嫡出否認の訴え 認知と準正 動物の家族に学ぶ ライオンの子育てとオスの役割 離れオスから群を守る 子育てはメスの共同作業 群淘汰と遺伝子淘汰 利己的遺伝子
○相続財産:兄が勝手に売ってしまった先祖伝来の土地を弟は取り戻せるか
―キーワード―
形式主義 相続と物権変動 行為の前後と第3者 意思主義 相続放棄 共同相続 遺産分割 成年後見 詐欺 強迫 時効取得と登記 公信の原則 公示の原則 即時取得 二重譲渡 民法177条の第3者 自筆証書遺言 遺留分減殺請求権 相続財産の範囲 共有 合有 移転主義 宣言主義
○相続財産:夫の急死によって、相続人から、居住中の夫名義の家からの立ち退きを要求された内縁の妻は、住み続けることができるか
―キーワード―
内縁の妻の居住権、賃貸借と賃借権の物権化、借地借家法による修正、愛人と哺乳類、売買は賃貸借を破る、賃借権の対抗要件、居住権、債権と物権の違い、内縁の妻の慰謝料請求権、居住用建物の賃借権の相続、定期借地権
○相続財産:交通事故で重傷を負った父は、1週間、激痛にさいなまれた末、「残念」と言って絶命した。父の慰謝料を子供は相続することができるか
―キーワード―
一身専属、非財産権の相続、残念事件、慰謝料請求権の相続性:意思表示説、当然相続説、相続否定説
○相続財産:純金のお墓を作れば相続税が少なくなるか
―キーワード―
マルサの女 相続税の節約 遺産税と遺産取得税 不動産と現金 相続税の考え方 生前贈与 生命保険の活用 生前贈与と相続の得失
○相続財産:遺族年金と株をあげるからと言われて、妻子ある男性と長年同居したが、男性の死後、本妻から返還を求められた場合、これを返さなければならないか。なお、株は既に売却して代金はホストクラブで使ってしまった。
―キーワード―
相続財産 相続人 遺言 遺贈 遺留分減殺請求権 婚姻 重婚的内縁関係 年金の趣旨 相続分 生活維持関係 女性の自立・個人主義と子育て 出生率の行方 夫婦別姓、不当利得、現存利益、悪意の占有者、不法原因給付、逸失利益、果実、制限行為能力者の返還義務
○相続財産:群馬県御巣鷹山の日航機墜落で死亡した坂本九さんの娘は生命保険金を請求できるか
―キーワード―
相続の対象 相続財産の承継 包括承継 損害賠償請求権・扶養請求権・財産分与請求権 団体構成員の地位 死亡退職金・遺族給付・香典・弔慰金 遺骨と祭祀財産 借家権・保証債務・裁判の承継 財産の分離
○相続財産:実際に同居していた愛人とたまにしか会わなかった本妻のどちらが遺族年金をもらえるか
―キーワード―
重婚的内縁関係と年金 個人主義と子育て 遺族年金のあり方 同性婚・中絶容認と縁切り寺 女性からの離婚を認める便法 性道徳の変化 若者宿と受験産業 共同体による教育
○相続人:愛子様の長男は天皇になれるか
―キーワード―
皇室典範と民主主義 母系社会と父系社会 女系と男系 大和民族 歴代女帝の分析 持統天皇と称徳天皇 女帝待望論 女系の天皇
○相続人:浮気した妻に一切財産を渡さないことはできるか
―キーワード―
財産分与 離婚と廃除 相続人の種類と順位 遺留分 負担付遺贈の減殺 相続欠格・廃除 特別寄与者 相続回復の訴 相続的協同関係 二重の故意必要性説 配偶者の廃除 放蕩息子と親の財産
○相続人:姪の子があなたの財産を相続することはあるか
―キーワード―
相続人の二類型 相続人の哲学 配偶者相続権の歴史 相続権の根拠 内縁の妻の相続権 代襲相続同時存在の原則 再代襲相続 胎児の扱い 相続人資格の重複 甥と姪 近親婚と代襲相続の範囲 インナーサークルの意味 家団論
○相続人:金持ちだが認知障害である身寄りのない老人の財産はどうなるか
―キーワード―
代理 成年後見 相続の承認・放棄 単純承認と限定承認 相続人の不存在 特別縁故者
○相続人:女性に相続を認めない時代・地域があったのはなぜか
―キーワード―
相続人と相続分 各国各時代の相続 イスラム・欧米・中国の相続 大宝律令・貞永式目・明治民法 遺産の分割