Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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EU法 II 東 史彦
選択  2単位
【法律】 17-1-1210-4138-02

1. 授業の概要(ねらい)

 欧州連合(EU)は、平和という政治目標の達成手段としての地域的経済統合のために、加盟国がその主権の一部を共通の機関に委ね、法の支配の下に人権と民主主義を尊重しつつ共同行使する超国家的統治体です。本授業では、EU統合の経験を学ぶことにより、東アジアにおける日本の役割について考えるための知識を提供します。

2.
授業の到達目標

 EU法の世界では、競争法分野において日本企業がEU競争法の域外適用の対象となることが多々あります。つまり、EU域内に直接投資や輸出を行う日本企業でなくとも、EU法の影響を受けることがあります。そこで、本授業では、受講者が将来の実務において、EU法が関係する事例に携わる際に、情報の収集・分析、ないし判断を行うための基礎的な知識を習得できるようにします。

3.
成績評価の方法および基準

 後期の試験(100%)によりますが、授業への取り組み態度にもとづく加点(プラスアルファ)または減点があります。
 なお、試験は持ち込み可(教科書、法令集、自筆ノート)で行います。

4.
教科書・参考書

 教科書
  庄司克宏『新EU法・基礎編』岩波書店、2013年
  庄司克宏『はじめてのEU法』有斐閣、2015年
 参考図書
  庄司克宏『欧州連合』岩波書店、2007年
  中村・須網編著『EU法基本判例集』(第2版)日本評論社、2010年

5.
準備学修の内容

 授業は講義形式で行います。質疑応答も行います。授業で参照した教科書の該当部分の復習を重点に勉強してください。

6.
その他履修上の注意事項

 EU法の初学者を対象としていますので、履修条件は特にありません。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 EUの制度的発展
 EUの制度上の沿革について説明する。
【第2回】
 EUにおける権限配分
 EUの排他的権限、加盟国との共有権限、EUの補充的権限などの権限関係を確認し、EUの役割を理解する。
【第3回】
 諸機関、立法・政策決定、執行
 EUの諸機関(理事会、欧州議会、コミッション)の構成および役割について確認し、それらによる立法手続を解説し、また、EU立法がどのように実施されるのかについて説明を行う。
【第4回】
 EU法の法源
 EU法の法源(設立条約、派生法、EUが締結した国際協定、法の一般原則、判例法)について、またそれらの関係について解説する。
【第5回】
 EUの司法制度①(欧州司法裁判所、先決裁定手続)
 欧州司法裁判所の構成および役割について説明を行った後、先決裁定手続の解説(欧州司法裁判所と国内裁判所とがどのような関係にあるかについての解説)を行う。
【第6回】
 EUの司法制度②(直接訴訟:取消訴訟)
 欧州司法裁判所における直接訴訟(取消訴訟)を解説する。
【第7回】
 EUの司法制度③(直接訴訟:義務不履行訴訟、損害賠償請求訴訟等)
 欧州司法裁判所における直接訴訟(義務不履行訴訟、損害賠償請求訴訟等)について、解説を行う。
【第8回】
 EU法の特徴(優越性)
 EU法の特徴であるEU法の国内法に対する優越性について解説する。
【第9回】
 EU法の直接効果(EU基本条約、規則)
 EU法の直接効果を、設立条約、規則について説明する。
【第10回】
 EU法の直接効果(指令)
 EU指令の直接効果を詳しく解説する。
【第11回】
 EU法の直接効果(決定、国際条約)
 EU法の直接効果を、決定、国際協定のそれぞれについて説明する。
【第12回】
 EU法のその他の効果(適合解釈義務)
 EU法が直接効果を有しない場合の適合解釈義務について解説する。
【第13回】
 EU法のその他の効果(EU法にもとづく国家賠償請求)
 EU法が直接効果を有しない場合のEU法にもとづく国家賠償請求について解説する。
【第14回】
 EU法の権利の国内的救済
 直接効果を有するEU法規定に基づく私人の権利の侵害に対する救済が、国内裁判所においてどのように行われるかについて解説する。
【第15回】
 EUにおける基本権保障
 EUにおける重層的な基本権保障について解説する。