Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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契約各論 内田 暁
選択  2単位
【法律】 17-1-1210-4163-01

1. 授業の概要(ねらい)

 普段はあまり意識しないかもしれませんが、我々の日常生活は、実に様々な「契約」に取り囲まれています。コンビニでジュースやおにぎりを買うのは「売買契約」、実家から離れて一人暮らしをするためにマンションの一室を借りるのは「賃貸借契約」。銀行にお金を預けるのは「消費寄託契約」ですし、逆にお金を借りたら「金銭消費貸借契約」を締結したことになります。アルバイトをしようと思ったら「労働契約」を結びます。将来的にマイホームを持つ際には、工務店や大工さんと「請負契約」を締結するかもしれません。このように、我々の生活は「契約」なしには成立しえないといっても過言ではありません。
 本講義では、このように我々の日常生活に密接に関わる「契約」について、民法が想定している13種類の契約を取り上げ、それぞれの性質や特殊性について検討することを通じて、学んでゆきます。贈与契約と売買契約はどのような点が異なるのでしょうか。その違いから、どのような法的取扱いの違いが導かれるのでしょうか。売買契約と賃貸借契約とではどうでしょうか。また、購入した物に欠陥があった場合には、どのような法的問題が生じるでしょうか。家賃を一度でも滞納したら、直ちに賃貸借契約を解除されても仕方ないのでしょうか。本講義では、こういった問題について、民法典に定められた13種類の契約類型に即して学んでゆきます。

2.
授業の到達目標

 民法の規定する契約類型ごとに、その基本的な性質や特徴、問題となるポイントについて理解する。

3.
成績評価の方法および基準

 ・15回目の授業内で実施する試験の点数による評価(100%)
 ・出席点は、原則考慮しません(出席していれば単位が取得できるというわけではなく、逆に、出席していないから単位が取得できないというわけでもありません)。

4.
教科書・参考書

 授業は教員の作成したレジュメを基に行いますので、とくにテキストを指定することはしません。
 下記の参考文献欄を参考に、各自が自分に合った教科書を使用していただければよいでしょう。
 参考文献:内田貴『民法Ⅱ』(東京大学出版会、第3版、2011年)
      近江幸治『民法講義Ⅴ 契約法』(成文堂、第3版、2006年)
      山本敬三『民法講義Ⅳ‐1 契約』(有斐閣、2005年)
      潮見佳男『債権各論Ⅰ』(新世社、第2版、2009年)
      平野裕之『コア・テキスト民法Ⅴ 契約法』(新世社、2011年)

5.
準備学修の内容

 受講生は、まずは講義に参加し、授業時間外ではその復習に重点をおいて勉強するとよいでしょう。試験前に慌てて復習するのではなく、各回の授業ごとにこまめに復習しておくことが、結局は一番の近道です。
 また、学習に際しては、条文や学説、判例を暗記しようとするのではなく、「なぜこのようなルールがあるのか」「なぜこのような学説があるのか」などといった点を意識して、「理解」しようと努めるとよいでしょう。細かな学説や判例は数多くありますが、それらは樹に喩えれば枝葉のようなものです(これらの学説や判例が大事でないという意味では決してありません)。樹の枝葉は、幹から生えているのであって、それだけで宙に浮いているものではありません。法律学の修得にとっては、枝葉に集中するのではなく、まずはそれらの枝葉が生えている幹をしっかりと把握することが肝要です。本講義でも、幹を把握することを第一の目標としてゆきますが、受講者が自習する際にも、幹を意識して学習するとよいでしょう。
 最後に、分からない個所をそのままにしておくのではなく、積極的に教員に質問するなどの姿勢も大事です。

6.
その他履修上の注意事項

 ・受講時には六法を必ず持参してください。
 ・授業中の私語など、他の受講生の迷惑になるような行為は厳禁です。
 ・本科目を受講する前に、あるいは本科目と並行して民法概論や民法総論、物権法や債権総則といった科目を受講していることが望ましいでしょう。
 ・民法典ではいかなる類型の「契約」が想定されているのか、それぞれどのような性質があり、特殊性があるのかとった問題について取り扱うのが『契約各論』です。これに対して、「契約」というもの一般に共通する効力や性質について取り扱うのが『契約総論』です。これら二つの科目は密接な関わりを持ちますので、受講生は、本科目と併せて(あるいは本科目の後に)『契約総論』の講義も受講することが望ましいでしょう。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 イントロダクション 契約法入門
【第2回】
 契約総論の概観 契約各論を学んでゆくにあたって、その前提となる契約総論について簡単に概観する。
【第3回】
 贈与契約
【第4回】
 売買契約① 売買契約の成立と手付
【第5回】
 売買契約② 売主の担保責任1 権利の瑕疵
【第6回】
 売買契約③、交換契約 売主の担保責任2 物の瑕疵 交換契約の意義と効力
【第7回】
 消費貸借契約 使用貸借契約
【第8回】
 賃貸借契約① 賃貸人・賃借人の権利・義務
【第9回】
 賃貸借契約② 対抗問題
【第10回】
 賃貸借契約③ 賃借権の譲渡 転貸借
【第11回】
 雇用契約、請負契約① 請負契約の意義と効力
【第12回】
 請負契約② 請負人の担保責任
【第13回】
 委任契約 委任契約の意義と効力
【第14回】
 寄託契約、組合契約、和解契約、終身定期金契約
【第15回】
 まとめ 試験
 ※上記計画は、あくまで予定です。具体的な進行状況によっては前後することもありえます。