Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

ひとつ前のページへ戻る 教授名で検索

 
契約総論 内田 暁
必修  2単位
【法律】 17-1-1210-4163-02

1. 授業の概要(ねらい)

 普段はあまり意識しないかもしれませんが、我々の日常生活は、実に様々な「契約」に取り囲まれています。コンビニでジュースやおにぎりを買うのは「売買契約」、実家から離れて一人暮らしをするためにマンションの一室を借りるのは「賃貸借契約」。銀行にお金を預けるのは「消費寄託契約」ですし、逆にお金を借りたら「金銭消費貸借契約」を締結したことになります。アルバイトをしようと思ったら「労働契約」を結びます。将来的にマイホームを持つ際には、工務店や大工さんと「請負契約」を締結するかもしれません。このように、我々の生活は「契約」なしには成立しえないといっても過言ではありません。
 本講義では、このように我々の日常生活に密接に関わる「契約」というもの一般にについて学びます。「契約」は、誰が、どのようにして締結するのでしょうか。「契約」の内容はどのようにして定まるのでしょうか。成立した「契約」には、どのような効力があるのでしょうか。相手方が「契約」を守ってくれない場合には、どのような救済手段を講じることができるのでしょうか。本講義では、これらのテーマを検討すること通じて、「契約」というものについての知識を修得することを目指します。
 なお、「契約総論」というと、形式的には民法典第三編第二章第一節を意味します。本講義でも、この形式的な意味での「契約総論」を中心的に取り上げますが、受講生に具体的なイメージを持っていただくために、いくつかの典型的な契約類型についても触れます(本来は「契約各論」という授業の対象ですが)。
 また、形式的な意味での「契約総論」だけの知識では、「契約」をめぐる問題には対処しきれません。例えば、未成年者が契約を締結した場合には、行為能力の制限を理由とした取消しが問題となりえますが、これは「民法総則」の問題です。また、契約の相手方が契約違反をしたために損害を被った場合には、損害賠償を求めることになりますが、これは「債権総則」の問題です。このように、「契約」をめぐる問題を考えるにあたっては、形式的な意味での「契約総論」だけの知識では必ずしも十分ではないのです。そこで本講義では、必要に応じて「民法総則」や「債権総則」上の問題についても触れることにします。
 さらに、平成29年5月には民法の契約法分野に関する改正法が成立しました。本講義では、この改正法についても適宜言及してゆきます。

2.
授業の到達目標

 ①契約総論についての基本的な知識を修得する。
 ②契約法の学習を通じて、「民法総則」や「債権総則」、「契約各論」に関する基礎的な知識をも修得する。
 ③上記二点を通じて、ともすればバラバラになりがちな民法の知識間の接続を図る。

3.
成績評価の方法および基準

 ・15回目の授業内で実施する試験の点数による評価(100%)
 ・出席点は、原則考慮しません(出席していれば単位が取得できるというわけではなく、逆に、出席していないから単位が取得できないというわけでもありません)。

4.
教科書・参考書

 教科書:藤岡康宏・磯村保・浦川道太郎・松本恒雄『民法Ⅳ――債権各論』(有斐閣、第3版補訂、2009年)
 参考書:中田裕康・窪田充見『民法判例百選Ⅱ債権』(有斐閣、第7版、2015年)

5.
準備学修の内容

 受講者は、上記テキストを読み、予習をしておくことが望ましいでしょう。もっとも、一人で教科書を読んでいても、理解するのは容易ではないと思います。予習も大事ですが、まずは講義に参加し、授業時間外ではその復習に重点をおいて勉強するとよいでしょう。
 また、学習に際しては、条文や学説、判例を暗記しようとするのではなく、「なぜこのようなルールがあるのか」「なぜこのような学説があるのか」などといった点を意識して、「理解」しようと努めるとよいでしょう。細かな学説や判例は数多くありますが、それらは樹に喩えれば枝葉のようなものです(これらの学説や判例が大事でないという意味では決してありません)。樹の枝葉は、幹から生えているのであって、それだけで宙に浮いているものではありません。法律学の修得にとっては、枝葉に集中するのではなく、まずはそれらの枝葉が生えている幹をしっかりと把握することが肝要です。本講義でも、幹を把握することを第一の目標としてゆきますが、受講者が自習する際にも、幹を意識して学習するとよいでしょう。
 最後に、分からない個所をそのままにしておくのではなく、積極的に教員に質問するなどの姿勢も大事です。

6.
その他履修上の注意事項

 ・受講時には六法を必ず持参してください。
 ・授業中の私語など、他の受講生の迷惑になるような行為は厳禁です。
 ・本科目を受講する前に、あるいは本科目と並行して民法概論や民法総論、物権法や債権総則といった科目を受講していることが望ましいでしょう。
 ・『契約総論』では、「契約」というもの一般について取り扱います。これに対して、民法典ではいかなる類型の「契約」が想定されているのか、それぞれどのような性質があり、特殊性があるのかとった問題について取り扱うのが『契約各論』です。これら二つの科目は密接な関わりを持ちますので、受講生は、本科目と併せて(あるいは本科目の後に)『契約各論』の講義も受講することが望ましいでしょう。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 イントロダクション 
【第2回】
 契約総論① 契約の意義 契約の分類 契約自由の原則
【第3回】
 契約総論② 普通取引約款による契約 消費者契約 契約の拘束力 
【第4回】
 契約の成立① 申込と承諾による成立
【第5回】
 契約の成立② 申込と承諾以外の方法による成立(含、契約締結上の過失責任) 
【第6回】
 契約の効力① 契約の効力総論 同時履行の抗弁権①
【第7回】
 契約の効力② 同時履行の抗弁権②  
【第8回】
 契約の効力③ 危険負担①
【第9回】
 契約の効力④ 危険負担②
【第10回】
 契約の効力⑤ 債権法の改正と危険負担
【第11回】
 契約の効力⑥ 第三者のためにする契約
【第12回】
 契約違反① 契約違反と債務不履行 契約違反の効果
【第13回】
 契約違反② 契約の解除①
【第14回】
 契約違反③ 契約の解除②
【第15回】
 まとめ 授業内試験
 ※上記計画は、あくまで予定です。具体的な進行状況によっては前後することもありえます。