Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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債権総則 I 内田 暁
選択  2単位
【法律】 17-1-1210-4163-03

1. 授業の概要(ねらい)

 本講義では、民法典第三編第一章に規定されている債権総則について、とりわけ、債権の効力や債務不履行責任、責任財産の保全といったテーマについて取り扱います。
 我が国の民法典は、私人の財産関係を大きく2つの観点から区別し、整理しています。すなわち、私人の物に対する関係と、私人の私人に対する関係です。一般に、前者を規律する法分野を物権法、後者を規律する法分野を債権法といいます。
 さて、「物」は、基本的には目で見て触れることが出来るものです。これに対して、「債権」とは、基本的には目で見ることも触れることも出来ません。債権とは観念的なものなのです。そのような債権の本質とはどのようなものなのか、債権にはどのような効力があるのかなどといった問題について規律しているのが、「債権総則」なのです。
 規律する対象が観念的であるが故に、債権総則をめぐる議論も抽象的になりがちで、特に初学者にとっては理解し難い面もあるかもしれません。本講義では、基本的には下記指定のテキストに沿って債権総則について学習してゆきますが、適宜具体例を補い、判例を紹介するなどして、受講者の理解の助けにしたいと考えています。

2.
授業の到達目標

 ①債権総則編の学習を通じて、債権法の基礎的知識を修得する。
 ②判例学習を通じて、実際の紛争に対する感覚を養う。
 到達目標①について。我が国の民法体系では、債権は契約、事務管理、不当利得、不法行為といった原因によって生じるものとされています。そして、これらによって発生した(抽象的な)債権というものの性質や効力等に関する規定を設けているのが、債権総則です。つまり、債権総則を学ぶことは、上記の発生原因によって生じる債権すべてに共通する性質を学ぶことでもあります。その意味で、債権総則に関する知識を修得することは、債権法を学んでゆくための基礎を修得することでもあります。本講義は、まずこの点を意識した到達目標を挙げました。
 到達目標②について。債権法に限られないことですが、法律学を学ぶ際には、抽象的なルールとして理解しようとするのではなく、問題となる具体的な場面を想定しつつ考えることが肝要です。ただ、実際の紛争では様々な問題が複雑に絡まりあっているため、初学者が理解するのは必ずしも容易ではありません。そのため、講義では単純化・モデル化した事例を多く用います。他方で、単純化・モデル化された教室設例だけを学んでいたのでは、学習した法律知識を実際に応用する能力が育ちにくいのも事実です。そこで本講義では、教室設例だけではなく、判例もできるだけ多く紹介してゆきたいと考えています。受講生の皆さんには、判例の学習を通じて、実際の紛争とはどのようなものかということについて考えてもらいたいと思います。

3.
成績評価の方法および基準

 ・15回目の授業内で実施する試験の点数による評価(100%)
 ・出席点は、原則考慮しません(出席していれば単位が取得できるというわけではなく、逆に、出席していないから単位が取得できないというわけでもありません)。

4.
教科書・参考書

 テキスト:松井宏興『債権総論』(成文堂、2013年)
 参考文献:『民法判例百選Ⅱ 債権』(有斐閣、第7版、2015年)

5.
準備学修の内容

 受講者は、上記テキストを読み、予習をしておくことが望ましいでしょう。もっとも、一人で教科書を読んでいても、理解するのは容易ではないと思います。予習も大事ですが、まずは講義に参加し、授業時間外ではその復習に重点をおいて勉強するとよいでしょう。
 また、学習に際しては、条文や学説、判例を暗記しようとするのではなく、「なぜこのようなルールがあるのか」「なぜこのような学説があるのか」などといった点を意識して、「理解」しようと努めるとよいでしょう。細かな学説や判例は数多くありますが、それらは樹に喩えれば枝葉のようなものです(これらの学説や判例が大事でないという意味では決してありません)。樹の枝葉は、幹から生えているのであって、それだけで宙に浮いているものではありません。法律学の修得にとっては、枝葉に集中するのではなく、まずはそれらの枝葉が生えている幹をしっかりと把握することが肝要です。本講義でも、幹を把握することを第一の目標としてゆきますが、受講者が自習する際にも、幹を意識して学習するとよいでしょう。
 最後に、分からない個所をそのままにしておくのではなく、積極的に教員に質問するなどの姿勢も大事です。

6.
その他履修上の注意事項

 ・受講時には六法を必ず持参してください。
 ・授業中の私語など、他の受講生の迷惑になるような行為は厳禁です。
 ・本科目を受講する前に、あるいは本科目と並行して民法概論や民法総論、物権法や契約総論、契約各論といった科目を受講していることが望ましいでしょう。
 ・本科目は、『債権総則Ⅱ』と内容的に連続していますので、受講生は本科目と併せて『債権総則Ⅱ』の科目も受講することが望ましいでしょう。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 イントロダクション 債権法入門
【第2回】
 債権の目的① 債権の目的と種類
【第3回】
 債権の目的② 特定物債権・種類債権
【第4回】
 債権の目的③ 金銭債権・利息債権 選択債権
【第5回】
 債権の効力① 債権の効力概観 履行の強制
【第6回】
 債権の効力② 債務不履行の態様と損害賠償
【第7回】
 債権の効力③ 損害賠償の範囲
【第8回】
 債権の効力④ 受領遅滞責任
【第9回】
 債権の効力⑤ 第三者による債権侵害
【第10回】
 責任財産の保全① 債権者代位権の意義と要件
【第11回】
 責任財産の保全② 債権者代位権の効果と転用
【第12回】
 責任財産の保全③ 詐害行為取消権の意義と性質
【第13回】
 責任財産の保全④ 詐害行為取消権の要件
【第14回】
 責任財産の保全⑤ 詐害行為取消権の効果
【第15回】
 債権総則Ⅰのまとめと試験
 ※上記計画は、あくまで予定です。具体的な進行状況によっては前後することもありえます。