Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

ひとつ前のページへ戻る 教授名で検索

 
時事問題講座 I 水谷 瑛嗣郎
選択  2単位
【自己啓発】 17-1-1210-4406-03

1. 授業の概要(ねらい)

 本講義は、新聞・雑誌・テレビなどで取り沙汰されている今日のメディアをとりまく法律問題について学んでいくものである。
 そもそも「メディア」という言葉には、「表現」を社会に流通させるための回路という意味がある。そのため、メディアをめぐる法律問題を理解するためには憲法が保障する「表現の自由」について学ぶことが欠かせない。そのうえで、下記にあげるような、テレビ・新聞・映画・インターネットといった各「メディア」ごとに生じるさまざま法律問題、ジャーナリストのような表現活動を生業としている人々を取り巻く法律問題について学んでいく。
 ・世の中には、わいせつな画像や、他人のプライバシーを同意なく暴露したもの、他人の名誉を傷つけるもののように、さまざまな「眉をひそめたくなるような表現」が存在しているが、そのような表現は、法律で規制をかけてよいか。
 ・放送法違反を理由に、総務大臣はテレビ局の電波を停止させることができるのか。
 ・裁判所からの証言の求めを拒絶しても法律で罰せられることがないといったように、ジャーナリストは、法律上、私たち一般人とは異なる扱いを受けるべきだろうか。
 ・ツイッターを使って行われた表現と、新聞や雑誌のそれらとを法律上、同列に扱って良いのか。
 こういった数々の問題について、この授業では、法理論と判例を手がかりに、それがどのように問題解決が図られ、またその解決の仕方にどのような問題があるかを検討していくことになる。
 なお授業は、鈴木秀美・山田健太編著『よくわかるメディア法』ミネルヴァ書房、2011年をベースにレジュメ講義形式でおこなう。さらに、必要に応じて映像資料などを用いたり、現役のジャーナリストを招いての授業内講演、実地見学(メディア企業の見学)なども積極的に行っていきたいと考えている。
 加えてより身近にメディア・ジャーナリズムを感じてもらうために、毎日新聞社が行っている学生記者「キャンパる」の試みも紹介する予定である。

2.
授業の到達目標

 ①これから当たり前のようにネットやスマートデバイスを使いこなして生活を送っていかなければならないみなさんにとって、メディアの使い方についての最先端の知識は、メディアリテラシーの観点から必要不可欠である。本講座の第一の目的にひとつは、メディア技術の発達した現代を生き抜いていくために必須の「教養」を学び取ってもらうことにある。
 ②現代は、誰しもが気軽にジャーナリスト“風”に記事を書き、テレビ番組“風”に放送をすることができる時代である。そこで私たちは、法がジャーナリストとそれ以外の一般人を区別する必要があるのかについて、今こそ真剣に考え、学ぶ必要がある。本講座の第二の目的は、新聞・雑誌編集者、テレビ局員、映画関係者、その他メディア企業といった表現を扱う特定職業を目指す者・興味のある者が、現在のメディア環境において身に着けておくべき、最先端かつ必要不可欠な知識を提供することである。もちろん、この授業を受けてメディア業界により興味関心を持ってもらえれば幸いである。

3.
成績評価の方法および基準

 レポート又は小テスト40%、学期末試験60%を基本とし、これに平常点(授業態度)を加味する。
 なお、出席は学生の当然の義務であるので、成績評価には加味しない。

4.
教科書・参考書

 ※教科書については授業でベースにするので、一人一冊購入するように。
 教科書:鈴木秀美・山田健太編著『よくわかるメディア法』ミネルヴァ書房、2011年
 なお教科書以外にも参考書をいくつか紹介しておく。(こちらは持っていなくても特に問題はないが、予習復習教材として持っておくと便利である)
 山田健太『法とジャーナリズム 第三版』学陽書房、2014年
 松井茂記『マス・メディア法入門 第五版』日本評論社、2013年
 堀部政男・長谷部恭男編著『メディア判例百選 (別冊ジュリストNo.179)』有斐閣、2005年

5.
準備学修の内容

 予習:指定教科書の該当箇所を読んだうえで、分からない点・不明な点はどこかをチェックしておくことを推奨する。
 復習:講義レジュメを授業中にメモを取るなどしてノート化しておき、終了後に指定教科書や他の教科書と照らし合わせてみることを推奨する。

6.
その他履修上の注意事項

 初回の授業でも厳しく申し渡すが、授業中における他者に迷惑をかける行為(私語、食事、教室徘徊など)はこれを厳禁とし、教室の秩序を保つために相応の対処をする。場合によっては、強制退出を命じることもあるし、成績・単位認定において平常点としてマイナス評価を加えることも覚悟してもらいたい。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 イントロダクション
【第2回】
 メディアと法の基礎を学ぼう①―メディアと法を取り巻く現状
【第3回】
 メディアと法の基礎を学ぼう②―憲法21条の「表現の自由」とは何か、なぜ大切か
【第4回】
 メディアと法の基礎を学ぼう③―「表現の自由」に対する規制
【第5回】
 テレビ放送の仕組みを知ろう①―「放送」を取り巻く現状
【第6回】
 テレビ放送の仕組みを知ろう②―放送制度、NHKのお話
【第7回】
 新聞記者には「特権」がある?①―報道の自由、報道機関の役割とは
【第8回】
 新聞記者には「特権」がある?②―取材の自由、編集権、記者クラブ
【第9回】
 映像授業(あるいは授業内講演)
【第10回】
 SNSに他人の悪口を書きまくったらどうなる①―「インターネット」を取り巻く現状
【第11回】
 SNSに他人の悪口を書きまくったらどうなる②―インターネットと表現規制、プロバイダ責任制限法
【第12回】
 「JAROってなんじゃろ」ってなんじゃろ―マスメディアと広告規制
【第13回】
 「映画」を恐れた権力―映画と検閲
【第14回】
 ウィニー事件―インターネットと著作権
【第15回】
 まとめ