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授業の概要(ねらい) |
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この授業で扱うのは、「法的」に物事を考える=法的思考=リーガルマインドである。 ここでいう法的思考(リーガルマインド)とは、単に法律条文・判例・学説といった専門的な情報のことではない。つまり六法全書に書かれている法律の条文を暗記して「知っていた」としても、それはその人が法的思考力をもっていることの証明にはならない。それらは単に、法的思考をするうえでの「道具」に過ぎないのである。これは、碁や将棋、チェスといった競技において、それら駒の動かし方を知っていたとしても必ずしも勝負に強くなるわけではないこととよく似ている。それらを個別の対戦相手の出方をみながら、臨機応援に活用する腕が必要になる。後者の活用術がまさに「法的思考」にあたる。 ありていに言ってしまえば、法的思考とは、社会で起きる個別具体的な「紛争(問題)」を、「物事の正義や公平の感覚」をもって適正に解決するために、独特の議論様式・技法(文法?)を操ることのできる能力のことであるといえるだろう。これらは、「法律家」という職業特有の作法(マナー)や「法律家」として持つべきスピリット(精神)でもあるので、実際の裁判の場面で重要であるのはいうまでもない。 しかしそれ以上に、最近ではこうした法的思考力が企業活動など社会生活の場面でも必要となってきているとされる。なぜなら現在の社会において、「物事の正義や公平の感覚」で理路整然と物事を語ることは、対人コミュニケーションにおいて一定の「説得力」を持つからである。 私たちは社会生活において、他人とさまざまな利害衝突を経験する(みなさんもすでに経験しているかもしれないし、この後もいやというほど経験する)。そうした他者との間で「紛争」が生じた際(あるいは生じそうになった際に)、他者を説得することが社会人として否が応でも必要になってくる。つまり法的思考は、法律家のみならず、多くの一般市民にとっても、社会生活を営むうえでの必要なスキルとなっているといえるだろう。 本講義では、こうした法的思考方法について、レジュメ形式で授業を進めていく予定である。前半で、法学の基礎的な考え方を学んだ後、後半からは、憲法、行政法、民法、刑法といった個別の法体系の基礎について学んでいくことで、個別の法体系の特色と、それらに通ずる「法」の概念に触れてもらう。 さらに、必要に応じて映像資料などを用いたり、授業内講演なども積極的に行っていきたいと考えている。これら映像授業などをもとに、課題レポートを提出してもらう予定である。
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授業の到達目標 |
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「法が正しい方向に発展していくためには、法の専門家が一般人の納得がいくように法を運用し解釈するとともに、他方で一般の人たちも法には常識のみをもっては理解できない技術面のあることを理解し、法がどういうものかを正しく把握するように努力することが必要といえるであろう」。参照、向井久了『法学入門 法律学への架け橋』(法学書院、2009年)4頁。 この授業は、以上の観点に重点を置きながら、受講生のみなさんが法を学ぶ者として必要となる用語の理解およびリーガルマインドを習得してもらうことを到達目標とする。
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成績評価の方法および基準 |
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レポート又は小テスト40%、学期末試験60%を基本とし、これに平常点(授業態度)を加味する。 なお、出席は学生の当然の義務であるので、成績評価には加味しない。
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教科書・参考書 |
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教科書:向井久了『法学入門 法律学への架け橋』(法学書院、2009年)
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準備学修の内容 |
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予習:指定教科書の該当箇所を読んだうえで、分からない点・不明な点はどこかをチェックしておくことを推奨する。 復習:講義レジュメを授業中にメモを取るなどしてノート化しておき、終了後に指定教科書や他の教科書と照らし合わせてみることを推奨する。
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その他履修上の注意事項 |
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他者に迷惑をかける行為(私語、食事、教室徘徊など)はこれを厳禁とし、相応の対処をする。場合によっては、成績・単位認定において平常点としてマイナス評価を加えることがある。
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各回の授業内容 |
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【第1回】 | ガイダンス(授業の進め方) | 【第2回】 | リーガルマインドとは? | 【第3回】 | 法の精神、基礎的な法律用語 | 【第4回】 | 法の支配 | 【第5回】 | 法と社会―法の社会的機能 | 【第6回】 | 法と裁判 | 【第7回】 | 映像授業(あるいは授業内講演) | 【第8回】 | 法と解釈 | 【第9回】 | 権利と義務 | 【第10回】 | 制定法の種類と意味 | 【第11回】 | 憲法の基礎 | 【第12回】 | 行政法の基礎 | 【第13回】 | 民法の基礎 | 【第14回】 | 刑法の基礎 | 【第15回】 | まとめ |
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