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授業の概要(ねらい) |
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「法」についての学問を一括りに「法学」といっているが、その主流は、すでに作られた「法律の条文」の「意味」を読み明かす「法解釈学」である。では、時にみなさんを拘束し、時にみなさんにサービスを供給してくれる「法律」という文書を「作る」システムについて、すなわち「法律ができるまで」の仕組みについて、みなさんはどれぐらいのことをご存じだろうか。 たとえば、みなさんが理想的な政策・構想を思いついたとしても、それが「現実」に「法律」として仕上げることができないのであれば、単なる絵に描いた餅に過ぎない。単なる構想から「法律案」に、そしてそれを私たちを実際に拘束する「法律」という公式の文書に仕上げるまで(すなわち、「法律ができるまで」)には、複雑な仕組みがある。この「法律ができるまで」の仕組みについての研究が、「立法学」というもう一つの「法学」なのである。 もちろん、みなさんも中学高校で「公民」の教育を受けているであろうから、当然、法律を作っているのは「国会(議会)」とそこに所属する国会議員たちであるぐらいのことは知っているだろう。しかし、実際には、ひとつの「法律」を作る(あるいは改正する)「過程」には、さまざまなアクター(議員、政党、内閣、官僚etc)が関わっている。このように「法律」の条文は、国会議員たちが一から十まで作り上げているわけではないのである。 というのも、「法律」を作るためにはさまざまな「技術」が必要となる。さらに「法律」は何かしら目的達成のための手段としてつくられるわけだが、そのためには「政策形成」を行わなければならない。このように「法律ができるまで」について学ぶ「立法学」という学問は、立法「過程」、立法「技術」、立法「政策」といった三種の研究に分けることができる。この授業では、これら三種の研究についてそれぞれ学んだうえで、最後に、実際に法案が作られるまでを資料を読み解きながら学んでいくことになる。 講義は基本的にレジュメ形式で行う。さらに、必要に応じて映像資料などを用いたり、授業内講演なども積極的に行っていきたいと考えている。これら映像授業などをもとに、課題レポートを提出してもらう予定である。
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授業の到達目標 |
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「法が正しい方向に発展していくためには、法の専門家が一般人の納得がいくように法を運用し解釈するとともに、他方で一般の人たちも法には常識のみをもっては理解できない技術面のあることを理解し、法がどういうものかを正しく把握するように努力することが必要といえるであろう」。参照、向井久了『法学入門 法律学への架け橋』(法学書院、2009年)4頁。 この授業は、以上の観点に重点を置きながら、受講生のみなさんに、法を学ぶ者として必要となる「法律ができるまで」の仕組みについての複雑さ、面白さ、大切さを理解してもらおうことを到達目標としている。
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成績評価の方法および基準 |
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あくまで目安であるが、レポート課題30~40%、期末試験60~70%で評価を行う。 レポート課題は、映像授業(あるいは授業内講演)に関するものである。
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教科書・参考書 |
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特になし。
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準備学修の内容 |
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予習:LMSで配布された講義レジュメの該当箇所を読んだうえで、分からない点・不明な点はどこかをチェックしておくことを推奨する。 復習:講義レジュメを授業中にメモを取るなどしてノート化しておき、終了後に指定教科書や他の教科書と照らし合わせてみることを推奨する。
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その他履修上の注意事項 |
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先にも書いてあるように、授業運営に関する違反行為があればマイナス評価として考慮する。
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各回の授業内容 |
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【第1回】 | イントロダクション | 【第2回】 | 「法学」とは何か、「立法学」とは何か | 【第3回】 | 「立法」の舞台―国会とはどういった場所か? | 【第4回】 | 法律ができるまで①―日本における立法過程の特徴と課題 | 【第5回】 | 法律ができるまで②―立法過程論(1)立法の契機と省庁過程 | 【第6回】 | 法律ができるまで③―立法過程論(2)政府内過程と与党内過程 | 【第7回】 | 法律ができるまで④―立法過程論(3)族議員とマスコミ | 【第8回】 | 法律ができるまで⑤―立法過程論(4)閣議と国会内過程 | 【第9回】 | 法律ができるまで⑥―立法過程論(5)本会議と国対政治 | 【第10回】 | 映像授業(あるいは授業内講演) | 【第11回】 | 立法技術論(1) | 【第12回】 | 立法技術論(2) | 【第13回】 | 立法政策論 | 【第14回】 | 実際に法案を作ってみよう | 【第15回】 | まとめ |
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