Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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宗教文化論 I 濱田 陽
【Ⅱ】  2単位
【Ⅱ 人の心と思想を学ぶ】 17-1-1310-0430-05

1. 授業の概要(ねらい)

 人が築いてきた文化の運命について、長期に渡って存続してきた世界の宗教文化伝統を参考に、諸学の最新研究動向を交えて考察していく。
 世界の政治、経済、そして、環境が不安定化する今日、わたしたち人類の文化はどこに向かっていくのだろうか。人工知能が連日のように話題にのぼる一方、宗教的テロリズムの悲劇が後を絶たない。細分化された人文社会科学は力を失い、世俗的価値と諸宗教・教派の主張は対話の通路を見出し難いままだ。しかし、人類文化の行方を憂いながらも、表面的なスローガンや偏った印象論で安易な世界観と未来像を結び、それに固執してしまうことは避けたいものだ。
 そこで、無宗教や宗教的立場にこだわらず、日本と世界の宗教文化伝統に目を向けてみたい。そこに今後の人類の文化にとって大切な叡智が埋もれていないだろうか。先史時代からの宗教が示す自然への畏敬、法華経に記された救い、新約聖書の愛、コーランの慈愛、論語の仁などは一見目立たないが、古びることなく非暴力的な文化を生み出す母胎ともなってきたはずだ。
 世界情勢の変化を見据えながら、文化一般に関する最新の研究を俎上に上げるとともに、先史時代からの宗教の教えと諸宗教文化伝統に、宗教的立場を超えて共有可能な文化を求め、総合的学習によって文化学の新たな可能性を探ってみたい。

2.
授業の到達目標

 文化一般と宗教文化伝統への多角的な視座を養い、授業内容を解説しつつ自身の考察を深めたエッセイを1000字相当でまとめる思考力と文章表現力を身につける。

3.
成績評価の方法および基準

 出席(60%)、授業内期末試験(40%)で総合評価。試験テーマは最終講義日2週間前に発表。

4.
教科書・参考書

 必要な資料は講義中で配布。MELIC指定図書コーナーに次の参考書を配置。
  『共存の哲学−複数宗教からの思考形式』濱田 陽 著、弘文堂、2005
  『宗教の事典』山折哲雄監修、朝倉書店、2012

5.
準備学修の内容

 配布資料を読む。

6.
その他履修上の注意事項

 授業を主体的に聴講、ノートをとり、内容理解を徐々に深めていくこと。
 *社会状況、国際情勢の変化に応じ新しいトピックを取り入れるため、以下の授業内容・順序は入れ替わることがある。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 「文化の運命」と世界の宗教文化伝統:「共有宗教文化」、「非暴力的な文化」の概念について学ぶ
【第2回】
 『サピエンス全史』の宗教論:グローバル・ヒストリーから見た宗教観について学ぶ
【第3回】
 『サピエンス全史』の周辺と宗教論:グローバル・ヒストリーと宗教的価値の関係について考える
【第4回】
 『野生の思考』を読んでみる:人類学者レヴィ=ストロースが見出した先史時代の哲学について考える
【第5回】
 『法華経』を読んでみる:東アジア二千年の古典の魅力について学ぶ
【第6回】
 『文化進化論』と宗教文化:文化進化論の基本的な発想と宗教文化の関係について学ぶ
【第7回】
 『文化進化論』の周辺と宗教文化:生きものと宗教文化の適応について考える
【第8回】
 『新約聖書』を読んでみる:世界思想の源泉である聖典について学ぶ
【第9回】
 『コーラン』を読んでみる:イスラーム文化の母胎でありつづける聖典について学ぶ
【第10回】
 『カルチャロミクス』と宗教文化:ビッグデータが示す宗教について考える
【第11回】
 『カルチャロミクス』の周辺と宗教文化:日本の統計からみた宗教について学ぶ
【第12回】
 『論語』を読んでみる:現代人に通じる人間観、家族観、社会観について学ぶ
【第13回】
 『老子』を読んでみる;現代人に通じる自然観、政治観について考える
 *試験テーマ発表
【第14回】
 「文化の運命」と宗教文化伝統:試験テーマを解説し、授業のまとめを行う
【第15回】
 全体講評・授業内期末試験