【第1回】 |
日本史の基本的な考え方を講述する。世界史の構造、中国史と日本史の関係、日本史固有の問題等々。とくに歴史とは何か、歴史と物語はどう違うのか、という点にも言及したい。 |
【第2回】 |
歴史学方法論について講述。歴史学の材料、すなわち史料の吟味、組み立て等、史実の復元へ向けての作業について。なお、古代・中世・近代等、三分法・四分法など時代区分論もここで扱う。 |
【第3回】 |
考古学の初歩的な諸問題を講述。とくに10年前に起ったいわゆる旧石器捏造(ねつぞう)問題について。日本考古学独特の事件であり、何故起ったのか、その背景等に関して日本史上の問題として考察する。 |
【第4回】 |
近年考古学上の具体的成果について、とくに1990年代に成立した年輪年代法とその適用による顕著な成果(弥生式時代の編年が繰上ったこと等)について論述する。 |
【第5回】 |
邪馬台国論争について、近年の動向と成果を講述。 |
【第6回】 |
古墳時代と倭の五王に関する、出土史料と文献史料の対比。この時代は、神話から歴史への転回点であるとともに、大王家(天皇家)の創始についても重要な画期である。 |
【第7回】 |
日記(古記録)の出現について。古代国家には、記紀以来、六国史の成立まで政府の修史事業があったが、平安前期に貴族の家ごとに日記の慣行が形成され、重要な史料としての地位を引き継ぐ。 |
【第8回】 |
物語・説話文学の形成。律令制は大陸の甚大な影響下に成立したが、早くも奈良中期には崩れ始め、律令からの離脱が趨勢となる。その過程で『日本霊異記』以下の物語・説話が成立し、歴史叙述の源流の一つとなる。 |
【第9回】 |
後代への殷鑑・教訓としての「鏡」の成立。大鏡・栄花物語・増鏡・吾妻鏡等に及ぶ。日本独自の“年代記”としての性格が次第に濃厚となってくる。 |
【第10回】 |
保元の乱から承久の乱まで、“武者の世”の到来が明らかになり、貴族層の深刻な反省の中から、「歴史を動かすものは何か」を問う史書、『愚管抄』と『神皇正統記』が形成される。物語から歴史が切り離される瞬間である。 |
【第11回】 |
古文書の登場。古記録と併称される日本史の基本史料。文書は差出人(発給主体)と宛先(受給者)があるのが特色。古文書は家ごとに保管され保存されてきた。律令の文書主義から始まり、やがて近世の地方文書に至る。 |
【第12回】 |
軍記戦記文学の成立とその影響。『平家物語』『太平記』以下、『信長公記』等に亘る。物語に史実がどのように反映しているかが焦点となろう。 |
【第13回】 |
外国人の見た日本史。古くは『魏志倭人伝』、中世の『老松堂日本行録』をはじめザビエルやフロイス等宣教師の日本観、シーボルト等の蘭館型日本論に及ぶ。 |
【第14回】 |
近世に於る歴史学の展開。新井白石の『読史余論』をはじめ、水戸学や国学の影響も無視できない。 |
【第15回】 |
近代歴史学の成立。ルードヴィヒ=リース(お雇い外人)に始まる史料批判に基く歴史学が形成。東大史料編纂所や、法制史・経済史の成立にも言及。 |