Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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出版文化論 I 横手 拓治
選択  2単位
【社会】 17-1-1310-4643-01

1. 授業の概要(ねらい)

 出版文化は著者と出版人を主たる担い手とし、作品を活字化(雑誌・書籍)して流通に乗せ、読者に届ける過程を含めた総体で成立してきました。これは明治時代に近代的な出版制度が産声を挙げてから続きましたが、現在の形により近づいたのは、第一次世界大戦(1914~18)後の不況と関東大震災(1923)で出版界が大打撃を受けたのち、1926年(大正15、昭和元年)に起きた円本ブームからでした。以降の特徴として10万部クラスの書籍ベストセラーが頻出し、やがてミリオンセラーの創出となって、知識人にとどまらない幅広い読者を巻き込むことで、出版界は同時代の日本社会に深い影響力を及ぼす存在になったのです。
 この経緯を歴史的に捉え、現代までを射程に出版文化の重要な一面として提示していきます。円本当時から2010年代まで90年以上を対象に、登場したベストセラー書籍を横断的に俎上に載せ、それぞれの内容、登場の経緯、時代との関連について考察していきます。

2.
授業の到達目標

 1926年以降の日本近現代史に登場したベストセラー書籍を分析していくことで、出版物の時代からの影響、時代への影響を捉え、出版文化の在りようを理解する。
 「売れるもの」はどうやって生み出されるのか、さまざまな例を知ることで、多くの人の関心を呼ぶ方法について知識を修得する。
 昭和と平成のベストセラーを横断的に知ることで、日本近現代における大衆文化の歩みを捉える。

3.
成績評価の方法および基準

 第1回と第15回を除いた毎回の教場短文レポート課題(40%)、筆記試験(40%)、受講態度(20%)を総合して行う。

4.
教科書・参考書

 講師作成のテキストプリントを毎回配布。

5.
準備学修の内容

 対象となる時代について年表などをもとに知識を得ておくこと。

6.
その他履修上の注意事項

 特になし

7.
各回の授業内容
【第1回】
 ガイダンス
【第2回】
 大正時代の出版界と円本の登場
【第3回】
 1928~35年 ポスト円本時代のベストセラー(『西部戦線異状なし』『放浪記』『のらくろ上等兵』他)
【第4回】
 1936~40年 2・26事件から日中戦争期のベストセラー(『宮本武蔵』『麦と兵隊』『哲学入門』他)
【第5回】
 1941~45年 出版統制と日米戦争期のベストセラー(『新書太閤記』『海軍』『陸軍』他)
【第6回】
 1945~65年 スクラップ・ラッシュと軽装判の登場(『日米会話手帳』『女性に関する十二章』他)
【第7回】
 1966~89年 テレセラーの時代へ(『誰のために愛するか』『蒼い時』『窓ぎわのトットちゃん』他)
【第8回】
 1990年代 多点数化時代のベストセラー(『もものかんづめ』『大往生』『五体不満足』他)
【第9回】
 村上春樹(『ノルウェイの森』『色彩のない多崎つくると、彼の巡礼の年』他)
【第10回】
 21世紀① 新書ブーム(『バカの壁』『国家の品格』『頭がいい人、悪い人の話し方』『聞く力』他)
【第11回】
 21世紀② 小説のベストセラー(『世界の中心で愛を叫ぶ』『東京タワー』『火花』『君の名は。』他)
【第12回】
 21世紀③ ノンフィクションのベストセラー(『ホームレス中学生』『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』他)
【第13回】
 21世紀④ 実用書のベストセラー(『人生がときめく片づけの魔法』『もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーの「マネジメント」を読んだら』他)
【第14回】
 『ハリー・ポッター』シリーズと体験的ベストセラー論(『世界の日本人ジョーク集』他)
【第15回】
 まとめと筆記試験