1. |
授業の概要(ねらい) |
|
出版文化の重要な柱である日本の近代小説は、短い期間にさまざまな展開を見せてきました。本講では、著名な作品の本文を紹介しつつ開化期から村上春樹までをコンパクトにまとめた安藤宏『日本近代小説史』をテキストに、近代小説の全像理解へと導いていきます。 同書は図版を多用した通読しやすい一冊本であり、中立的解釈を前提にしたこともあって、多くの大学でテキストに使われています。いわゆる純文学だけでなく、大衆文学について筆が及んでいるのも同書の特徴だといえます。講師は同書の担当編集者であり、編集製作に関わってきました。 本講義では、同書を読みながら必要に応じて周辺の事情を説明していきます。作品と作家だけでなく、出版者や時代ごとの出版状況も併せて講義することで、わが国出版文化の様相を解説します。また同書の扱わなかった平成期の小説をプラスして述べていきます。 これらを併せ、出版文化の一翼を形成した日本の小説に関して、幅広い知見を養ってもらいたいと思います。
|
2. |
授業の到達目標 |
|
すでに膨大な文化遺産となっている日本の近代小説について、その全体像についての知識を、『日本近代小説史』を基に修得する。 近代小説の展開を見ていくことで、それを支えた日本の出版文化について知見を深める。 「言葉で世界をつくること」である小説に登場した、日本語におけるさまざまな表現を味わうことで、文章についての可能性を理解する。 日本の近代史の歩みとも重なる日本の小説の発展史を学ぶことで、対外的に日本的なものについて発信する能力の一端を養う。
|
3. |
成績評価の方法および基準 |
|
第1回と第15回を除いた毎回の教場短文レポート課題(40%)、筆記試験(40%)、受講態度(20%)を総合して行う。
|
4. |
教科書・参考書 |
|
安藤宏『日本近代小説史』(中公選書) 第12~14回は講師のテキストプリントを配布
|
5. |
準備学修の内容 |
|
授業で扱う『日本近代小説史』の範囲を読んでおくこと。 次回の授業を理解するために必要な短篇小説のコピーを渡す場合があり、読んでおくこと。
|
6. |
その他履修上の注意事項 |
|
特になし
|
7. |
各回の授業内容 |
|
【第1回】 | ガイダンス | 【第2回】 | 明治文明開化期の「小説」 | 【第3回】 | 明治中期の小説(硯友社と紅露時代、樋口一葉、鏡花と独歩) | 【第4回】 | 自然主義文学 | 【第5回】 | 漱石と鷗外 | 【第6回】 | 大正文壇(耽美派、白樺派、教養主義) | 【第7回】 | マルキシズムとモダニズム――昭和初期の小説 | 【第8回】 | 第二次世界大戦と文学 | 【第9回】 | 戦後派から第三の新人へ | 【第10回】 | 開高・大江の時代 | 【第11回】 | 高度経済成長期の小説 | 【第12回】 | 村上春樹の登場 | 【第13回】 | ポストモダン | 【第14回】 | 平成期の小説 | 【第15回】 | まとめと筆記試験 |
|