Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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学校生活と子どもの健康・病気 藤井 靖史
必修  2単位
【教職大学院】 17-1-1331-1359-01

1. 授業の概要(ねらい)

 児童生徒の成長・発達、様々な病態生理について理解し、児童生徒が受ける臨床検査や治療に対して適切に配慮し教師の役割について考え、学校生活における諸問題を究明し解決していく力量の育成を目指す。
 児童生徒一般に見られる種々の疾患に関して、evidenceに基づく最新の医療について学ぶとともに、学校生活における、感染症や発作性疾患などの急性疾患に対する正しい対処法を身につけ、慢性疾患を持つ学童生徒に対して教育上配慮すべき点を整理し理解するとともに、教育の基礎理論を踏まえて病児に対する支援・指導を考える。更に、児童生徒の健康に関与するメディアやスポーツの功罪について十分な知識を獲得する。
 事例を通じて、児童生徒の健康に関して学校と家庭、保健・医療機関との連携の有り方について学習する。
 なお、講義では履修生の知識・経験に即して、教育関係、医療関係のゲスト・スピーカーを3回程度招聘する。ゲスト・スピーカーの助言により本講義内容を教師や教育行政に関わる立場の視点から捉える力を身につける。

2.
授業の到達目標

 <A類>
  ・子どもの成長・発達についての医学的基礎知識の理解を深める。
  ・子どもが抱える様々な病態生理を理解し、子どもが受ける臨床検査や治療に対して適切に配慮し教師の役割について考え、学校生活における諸問題を究明し解決していく力量を身につける。
 <B1類>
  ・子どもの健康の維持・発達、及び健康などを害している子どもたちへの対応について、教育の基礎理論を踏まえて考え、校内の教職員、校医、保護者、保健・医療機関などと協議しながら適切に問題を究明・解決していく力量を身につける。
 <B2類>
  ・子どもの健康の維持・発達に関して、教職の意義、役割を踏まえ所属する学校を越えて学校や保健・医療機関などと円滑な協力体制をコーディネートする能力を身につける。
  ・今後、顕在化や流行する疾患に関しても、過去の事例を踏まえて適切な判断ができる応用力を身につける。

3.
成績評価の方法および基準

 子どもの健康と病気に対する関心、理解度(レポート)70%と、演習への取り組む姿勢30%などに基づいて評価する。

4.
教科書・参考書

 テキスト
  講義用に作成したテキストを使用する。
 参考書
  『一目でわかる小児科学』 五十嵐隆 メディカルサイエンス・インターナショナル
  『小児科学』 内山聖 他 医学書院
  『小児慢性疾患診療マニュアル』 加藤忠明 診断と治療社
  『早わかり スポーツ医学』 加藤哲也 金原出版
  『睡眠の生理と臨床』 神山潤 診断と治療社
  『免疫学がわかる』 小安重夫 羊土社
  『小児心身医学の臨床』 冨田和巳 診断と治療社
  『てんかん』 中沢洋一 他 世界保健通信社 他

5.
準備学修の内容

 原則として前時に指示する。

6.
その他履修上の注意事項

 学習した知識内容を常に最新のものに置き換えて行くことが必要です。その為には、学生各自が在学中から知識を更新していくための学習方法や情報獲得手段を獲得することが望まれます。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 オリエンテーション
 今日の子どもの健康/成長・発達の問題について意見を述べ合い、教職の意義を踏まえた問題意識を高めた上で、講義全体の流れを理解する。
【第2回】
 成長・発達
 子どもの健康/成長・発達について理解する。
【第3回】
 脳の発達と早期教育
 ・脳の発生、神経系の発達、中枢神経システム構築のメカニズムについて理解し、早期教育の功罪や学習における臨界期について多用な考え方を学ぶ。
 ・A類学生は、早期教育について調べて発表する。
 ・B類学生は、教育の基礎理論を踏まえつつ自身の経験とそれについての意見を発表する。
【第4回】
 発達障害・心身症
 発達障害や心身症に対する医学的アプローチと臨床研究について学び、家庭や医療・福祉機関との連携における中心的な役割を担う応用力を身につける。
【第5回】
 低身長とやせ・肥満
 低身長ややせ・肥満の子どもたちに行われる検査や治療を知り、学校生活における教職の意義や役割を理解する。また、教職経験者をゲスト・スピーカーに迎え、食育について学ぶ。
【第6回】
 感染症(麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、水痘、インフルエンザなど)
 ・感染と免疫に関する基礎知識を獲得し、集団感染を引き起こす感染症に対する適切な対応方法を考える。家庭や医療機関との連携の有り方について具体的な事象をもとに学習を深めるとともに教職の意義や役割を理解する。
 ・A類学生とB類学生はグループをつくり、学校におけるノロウイルスやインフルエンザウイルスに対する感染予防対策を調査し発表する。
【第7回】
 循環器疾患(先天性心疾患と不整脈)
 心臓の解剖と機能を理解する。先天性心疾患や小児に見られる不整脈の対処を学ぶ。
【第8回】
 腎疾患(腎炎とネフローゼ症候群)
 腎臓の解剖と機能を理解する。急性腎炎や慢性腎炎、ネフローゼ症候群の病態生理を理解し、学校生活での諸問題に対処する方法を学ぶ。
【第9回】
 アレルギー疾患(喘息、アトピー、食物アレルギー、花粉症)
 ・近年増加傾向にあるアレルギー疾患に関して、基礎となる医学的知識を学ぶ。
 ・アレルギー疾患に対する教職の意義・役割を理解し、アレルギー疾患のある児童生徒への対処・配慮の在り方を身につける。
 ・A類学生は、食物アレルギーについて調べてきて発表する。
 ・B類学生は、食物アレルギーの児童生徒についての経験と対策をまとめて発表する。
【第10回】
 てんかん
 ・子どものてんかんについて医学的知識を学ぶ。てんかん患児一人一人の特徴に合わせた教師の役割を理解し、発作時の対処を含めた学校生活における必要な配慮と対応方法を身につける。
 ・B類学生は、てんかん患児に対して学校生活上で配慮した体験をまとめて発表する。
【第11回】
 発生異常・染色体異常(Down症など)
 発生異常や染色体異常について、一生のロングスパンで理解する。家庭や医療現場での対応を理解した上で、生徒が充実した学校生活を送れるように配慮する能力を身につける。
【第12回】
 慢性頭痛、周期性嘔吐症、起立性低血圧、過換気症候群、チック
 痛み、気分不快などの自覚的な症状が問題となる疾患について学び、教師の役割として家庭や医療現場との連携、学校での対応や環境整備を実践する能力を身につける。
【第13回】
 睡眠と睡眠障害
 睡眠のメカニズムを学ぶ。様々な睡眠障害について学び、学校での子どもの状態から睡眠障害の可能性を考えられるようにする。家庭や医療現場との連携で中心的な役割を果たす能力を身につける。
【第14回】
 メディアと子どもの健康
 ・メディアの進歩に伴う情報化社会が子どもの健康や生活に与える影響について教育の基礎理論を踏まえて考察し、学校における諸問題に対応する能力を身につける。
 ・A類学生は、メディアの進歩に伴う子どもの心身への影響について調べてきて発表する。
 ・B類学生は、具体的な体験や対策について語り、A類学生とともに討論する。
【第15回】
 スポーツと子どもの健康
 ・スポーツが子どもの健康や生活に与える影響について教育の基礎理論を踏まえて考察し、学校における諸問題に対応する能力を身につける。
 ・スポーツと子どもの健康について、医学的な根拠を理解するとともに、スポーツ障害の実態を把握し学校での対応について学ぶ。