Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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環境と生態 II 臼田 秀明
【Ⅶ】  2単位
【Ⅶ 地球環境と生命科学を学ぶ】 17-1-1334-0080-03

1. 授業の概要(ねらい)

 この授業では、文系の皆さんに地球・生命・人間の成り立ちを知っていただくことで環境問題・生態系の保全など様々な問題を抱える21世紀をどのような世界にすべきか、我々の選択を考えていただくことを主眼にしています。皆さんに話したいことの概要は以下のようなことです。春学期には5億年前までの話と、生命の遺伝や太陽エネルギーの利用などに関する基本的な話をしました。秋学期からの受講も大歓迎です。歴史に興味のある人は、一味違う歴史についての見方が出来るでしょう。
 宇宙はおよそ140億年前に誕生した。46億年前に生れた地球も我々人類を始めとする地球上の生物も、宇宙の誕生後、10万年頃に出来た水素や、その後に誕生した巨大な星の中心で作られた鉄などの元素からなる宇宙の星くずから出来ている。この地球に生命が誕生してから30数億年、全ての生き物は、共通の祖先の原始生物から、遺伝子の連続性とその可塑性により様々に枝分かれしてきた兄弟である。30数億年の間に起きた地球の様々な環境変化の中で、多くの生物は生き存えず絶滅した。現存している生物は、それ自身あるいはその祖先がそれらの環境変化に対応出来たので、今ここにこうしてある。それらが生き存えることが出来たのは、そのような環境変化が起こる前に、たまたまおきた遺伝子の変異による新たな機能の獲得のためと考えられる。今、存在する生物の必然性は偶然によりもたらされた。我々がここにこうしてあるのも、6,500万年前にたまたま落ちた大きな隕石により、地球環境が大きく変わり、恐竜を始めとする、それまで多くの空間を占めていた生物が絶滅することにより、ひっそり生きていた、われわれの祖先の小さなネズミのような、哺乳類が新たに広がった新天地でその数を増やして行ったことに始まる。その後、数百万年前に誕生した人類から、様々な人類が進化したが、現在は我々ホモ・サピエンスのみが生存し、他の人類は絶滅した。
 例えば、数万年前にはホモ・サピエンスとは違う種のネアンデルタール人が伴に棲んでいたが、彼らは絶滅した。最終的に我々ホモ・サピエンスが一人勝ちをし、多くの空間を独占している。このようなことは、多様な生物が多様な環境を分かち合っていることから考えると、最近の我々ホモ・サピエンスが極めて例外的な存在であることが分かる。このことからも、我々が、今後の地球の行く末あるいは、地球の持続可能な発展に意識的に責任を持たざるを得ないことがはっきりする。この持続可能な発展(Sustainable development)、あるいは循環型の生態を考えるためには多くの学問分野の様々な原理を横断的に考えることと、我々の目指す方向を哲学的に考察する必要がある。
 この授業は、まさに今後の世界を担っていく皆さんに、持続可能な発展を考える上で、重要な示唆が得られることを願いつつ、30数億年の生命の生き様などを含めた生態・環境を中心に考えるつもりです。我々は困難な時代に直面している。しかし、望みを持ち続けよう。―私たちは幸運だった。私たちは生きており、私たちには力がある。私たちの文明と、私たちの人類の運命は、私たちの手ににぎられている。―カール・セーガン
 『環境と生態 I』に続いた話ですが、後期だけの受講も歓迎です。

2.
授業の到達目標

 21世紀を生きる社会人として、地球・生命・環境に対する広い視野を身につける。

3.
成績評価の方法および基準

 レポートと毎回のコメント。試験は行わない。

4.
教科書・参考書

 テキスト:プリント配布
 参考文献:
  1.臼田 秀明 『知は地球を救う』 1.はじめに ―豊かな生命と環境の世紀をめざして― 帝京大学文学部教育学科紀要 34:97−104(2009)
http://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/husuda1_34.pdf
  2.臼田 秀明 『知は地球を救う』 2.人類の進化700万年 ―予断に捉われないことの難しさ― 帝京大学文学部教育学科紀要 34:105−144(2009)
http://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/husuda2_34.pdf
  3.臼田 秀明 『知は地球を救う』 3.作物の栽培化から遺伝子組み換え作物まで ―豊かさの広汎化と豊かな多様性・地域性の併存を目指して― 帝京大学文学部教育学科紀要 35:123-180(2010) http://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/kyoiku35-10.pdf
  4.臼田 秀明 『知は地球を救う』 4.森と人 ―森と人の共生から多様な生命が集う生態系の保存をめざして― 帝京大学文学部教育学科紀要 36:79-152(2011)
http://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/kyoiku-36-09.pdf
  5.臼田 秀明 『知は地球を救う』 5.我々の暮らしと地球への負荷 -目を閉じて全体を静かに心で見てみよう- 帝京大学文学部教育学科紀要 37:161-260(2012)
https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/tos4-5.html#37
  6.臼田 秀明 『知は地球を救う 8.気候変動, 過去・現在・未来―選択のために問われる価値観―』帝京大学教育学部紀要4(印刷中)
 上記のものは帝京大学のホームページのWeb Classから各自ダウンロードできます。初回の授業で説明します。

5.
準備学修の内容

 教科書と参考文献を読んでおくこと。

6.
その他履修上の注意事項

 皆さんの親の世代から、皆さんへ、我々の地球に住む全ての人が直面する環境問題について、生命・生態を考える立場からのメッセージを伝えることが目的である。知識を覚えるよりは、皆さんの“自分流の”環境・生態観を作って貰い、皆さんの子どもたちにも、他の生物と共存するような地球をつくるために行動してもらうことを願っている。昨年度は力のこもったレポートを書いてくれた人も多く、うれしかった。今年度も、知的好奇心の旺盛な学生が一人でも多く聞いてくれれば、幸いである。
 春期R認定の学生は受講できない。受講者多数の場合には受講制限を行う。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 ガイダンス・前期の復習
【第2回】
 我々はどのように誕生したのか?人類の進化(1)
【第3回】
 我々はどのように誕生したのか?人類の進化(2)
【第4回】
 我々はどのように誕生したのか?人類の進化(3)
【第5回】
 我々はどのように誕生したのか?人類の進化(4)
【第6回】
 我々はどのように誕生したのか?人類の進化(5)
【第7回】
 我々はどのように誕生したのか?人類の進化(6)
【第8回】
 人は如何に農業を始めどのように発展してきたか(1)
【第9回】
 人は如何に農業を始めどのように発展してきたか(2)
【第10回】
 人は如何に農業を始めどのように発展してきたか(3)
【第11回】
 人は如何に農業を始めどのように発展してきたか(4)
【第12回】
 人はどのように森を伐り開き農耕地を増やしてきたか?
【第13回】
 人は第六の生物大絶滅を惹き起こしているか
【第14回】
 気候は46億年間どのように変動してきたか、産業革命以降人は化石燃料を燃やすことで地球の温暖化を惹き起こしているか? まとめ
【第15回】
 地球の温暖化についてのアル・ゴアの『不都合な真実』のビデオの鑑賞。