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授業の概要(ねらい) |
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この授業では、先史時代の「子どもの埋葬」をテーマにして授業を進めます。考古学の研究で、墓の研究は主要な領域となっています。その理由は、墓から埋葬された人の性別・年齢・死因・社会的な身分や地位・何を食べていたのかや栄養状態などのさまざまな情報が引き出せるからですが、これまでの研究対象は主に成人の埋葬が中心となっていて、子どもの埋葬についてはあまり関心が払われてきたとは言えない状況でした。人間の社会集団はさまざまな年齢階層のグループによって構成されており、一つの集団には老人、壮年、青年、少年、幼児、乳児といった複数の年齢層が含まれているのが普通です。しかし、従来の研究では先史時代の社会集団を考察する際に、特に幼児や乳児といった子どもたちが考察の対象からすっぽり抜けていた傾向があります。そこで「子どもの埋葬」をテーマにすることで、これまでの研究で抜けていた部分を考えてみようというのがこの授業のねらいになります。具体的な内容としては、縄文時代後期・晩期、弥生時代前期を中心とした時期の土器棺墓について解説していき、そこから子どもの埋葬と大人の埋葬の間にどのような違いがあるのか、さらには子供の埋葬にみられる特徴から先史時代の社会集団で子どもがどのように位置づけられていたのかを考えていくことになります。
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授業の到達目標 |
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1.近代以前の社会で子どもが社会的にどのように認知されていたかを学ぶこと。 近現代の子どもに対する認識、いわば子ども観とそれ以前の時代のこども観の間にどのような共通性と違いがあるのかについて学ぶことが目標です。 2.子どもの埋葬からどのように先史時代の子ども観を復元することができるのかを学ぶこと。 文献資料が残っている古代以降の時代とは違い、文字出現以前の先史時代の人びとが子どもをどのように認識していたのかについては、直接的に知ることはほぼ不可能です。しかし、子どもの埋葬を検討し大人の埋葬とどのような違いがあるかについて見ていくことで、先史時代人の子ども観にアプローチすることができます。実際の遺跡の事例からどのように先史時代人の子ども観を復元するかについて学ぶことが目標です。 3.先史時代の社会集団や構造について学ぶこと。 墓から先史時代の社会集団や親族構造などについて考察する研究は多いですが、子どもの存在まで視野に含めた研究は必ずしも十分とは言えない面がありました。子どもを含めた先史時代の社会集団や構造について学ぶことが目標です。
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3. |
成績評価の方法および基準 |
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最終授業でテストを実施し、テストの結果によって成績を評価します。
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教科書・参考書 |
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教科書や参考書は特に指定しません。授業内で必要に応じてプリント等の資料を配布する場合があります。
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準備学修の内容 |
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授業内で示した参考文献や論文等に目を通しておくことを希望します。
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その他履修上の注意事項 |
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当然ですが授業中の私語は厳禁です。
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各回の授業内容 |
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【第1回】 | ガイダンス | 【第2回】 | 子どもの埋葬を研究する意義 | 【第3回】 | 子どもの死亡率 | 【第4回】 | 子どもに関する儀式や儀礼 | 【第5回】 | 縄文時代後期・晩期の墓 | 【第6回】 | 弥生時代早期・前期の墓 | 【第7回】 | 弥生時代中期・後期の墓 | 【第8回】 | 弥生時代早期・前期の墓地の空間構造 | 【第9回】 | 弥生時代中期・後期の墓地の空間構造 | 【第10回】 | 縄文時代・弥生時代の土器棺墓 | 【第11回】 | 子どもの墓にともなう副葬品 | 【第12回】 | 先史時代の親族構造 | 【第13回】 | 子どもはどのように社会に認知されてきたか | 【第14回】 | DNAによる血縁関係復元研究 | 【第15回】 | まとめとテスト |
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