Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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考古学史 II 今村 啓爾
選択  2単位
【史】 17-1-1340-3206-06

1. 授業の概要(ねらい)

 地球上にはさまざまな原始文化・古代文明があり、世界の考古学史はややもするとそのような調査研究の羅列になりがちである。しかし大きく見渡すと、北欧を中心に始まった先史考古学と、そこから派生し人類起源の追求という課題につながる流れ、南欧を中心とした古代文明を対象とする古典考古学研究からの流れ、そして両者を橋渡しする西アジアの農耕牧畜文化の解明に集約することができる。そして19世紀の西欧列強の帝国主義的進出は考古学的活動を世界に広めることになった。一方アメリカでは、「人間とは何か」という問いかけの中に考古学をとりこんだ文化人類学がおこり、それは近年プロセス考古学を生み出したが、学問的伝統の異なるヨーロッパでは反発してポストプロセス考古学が生み出され、日本はこれら2者とは異なる実証を重視する方法論を発展させてきた。このように考古学の方法論の大きな流れと発展を展望するのが本講義の目的である。ただし世界の考古学史を前期と同じ回数行うと日本人学生にとっては詳細になりすぎる恐れがあるので、最後の2回は日本考古学にもどり、大陸との関係をからめ日本古代の考古学研究史を取りあげる。

2.
授業の到達目標

 学史という視点から考古学という学問の特質と世界各地の考古学の特色を知り、「人類史」の理解がどのようにして獲得されたかを知り、人類の進むべき道について自己の意見がもてることを目指す。

3.
成績評価の方法および基準

 ペーパー試験 主に重要な発見調査・遺跡名・研究者・研究・遺跡・論争・理論などについて

4.
教科書・参考書

 学史ということで、多数の文献が関係する。授業の内容に合わせ、主要な関連文献を授業中にあげる。また授業の内容をまとめたプリントを配布する。

5.
準備学修の内容

 多くの学史的事実をあげるので、忘れないうちにノートの整理をすること。海外の学史的文献を多くを読むことは困難であるが、少なくとも数冊の一部について目を通すこと。

6.
その他履修上の注意事項

 学史という観点から考古学の成り立ちと発展を理解するための授業であり、専門家になるのに必要な知識の教授であることを意識して受講していただきたい。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 ヨーロッパ考古学の2つの源流
【第2回】
 南ヨーロッパにおける古典考古学の流れ
【第3回】
 北ヨーロッパにおける先史考古学の発展
【第4回】
 2つの流れの合流と列強の帝国主義的進出
【第5回】
 人類の起源研究、農耕牧畜の起源研究。自然科学的分析方法と環境変化という視点
【第6回】
 戦後の考古学と政治思想や冷戦の影響
【第7回】
 考古学理論と論争
【第8回】
 新大陸の考古学史
【第9回】
 中国考古学史(1)初期の欧米人による調査研究。殷墟の発見
【第10回】
 中国考古学史(2)殷から夏王朝へ遡る研究の展開
【第11回】
 中国考古学史(3)政治的混乱から考古学の隆盛へ
【第12回】
 朝鮮と東南アジアの研究史
【第13回】
 日本古代と朝鮮古代の関係についての考古学研究史
【第14回】
 日本古代国家体制整備の考古学研究史
【第15回】
 まとめと授業内試験