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授業の概要(ねらい) |
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実験行動分析学 (The Experimental Analysis of Behavior) は20世紀に誕生した新しい学問である。その創設者であるB. F. Skinnerは,アメリカ心理学会により「20世紀の卓越した心理学者」の第1位に選ばれた。実験行動分析学は,生物の行動そのものを研究の対象とし,それを決定する環境との因果関係を明らかにしようとする。このアプローチは,物体の《運動》にだけ注目して,その法則を明らかにした物理学と共通している。この授業を受ける際には,生物や人間の行動に対する常識的な《表現》や《解釈》を,一旦,完全に忘れて欲しい。その上で,実験行動分析学が明らかにした単純明解な法則により,我々ヒトも含めた生物の複雑な行動をどこまで解明できるのか,批判的に検討していきたい。
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授業の到達目標 |
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・実験行動分析学の科学哲学的特徴ならびに歴史的背景について,自分なりの意 見を述べることができる。 ・実験行動分析学の重要な研究テーマについて,その意義を主張できる。
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成績評価の方法および基準 |
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学期末試験の成績のみで成績を決める。試験は,あらゆる資料の持ち込みを認め,論述式問題で実施する。
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教科書・参考書 |
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テキストは使用しない。以下の書籍は,実験行動分析学に対する理解を深める上で役立つであろう。 レイノルズ G. S. 浅野俊夫(訳)(1978)。『オペラント心理学入門』サイエンス社 小野浩一(2005)。『行動の基礎』培風館 伊藤正人(2005)。『行動と学習の心理学』昭和堂 佐藤方哉(1976)。『行動理論への招待』大修館書店 佐々木正伸(編)(1982)。『現代基礎心理学5 学習I 基礎過程』東京大学出版会 佐藤方哉(編)(1983)。『現代基礎心理学6 学習II その展開』東京大学出版会 小川隆(監修)(1989)。『行動心理ハンドブック』培風館
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準備学修の内容 |
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毎回の講義で取り上げる話題について,基本的専門用語の定義は予習して理解した上で授業に臨むこと。毎回の講義の後,ノートを整理し,参考文献を参照して講義内容への理解を深めること。
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その他履修上の注意事項 |
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行動および学習に関する心理学について基本的知識を修得済みの学生を対象の講義である。『条件づけの理論と応用』或は『応用行動分析学』を履修済であることを前提に授業を進める。未履修の学生は,上記参考書を利用して自習して知識を補うこと。『学習心理学基礎論』を同時並行して履修することが望ましい。
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各回の授業内容 |
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【第1回】 | 授業方針の説明,参考書籍の紹介 | 【第2回】 | 実験行動分析学の特徴(1):実験と制御 | 【第3回】 | 実験行動分析学の特徴(2):意識の扱い | 【第4回】 | 心理学の歴史と実験行動分析学:Wundt,Watson,Skinner | 【第5回】 | 実験行動分析学に影響を与えた思想:ダーウィニズム,操作主義,論理実証主義 | 【第6回】 | スケジュール・パフォーマンスの制御変数(1):VIとVR | 【第7回】 | スケジュール・パフォーマンスの制御変数(2):反応間間隔分化強化説 | 【第8回】 | スケジュール・パフォーマンスの制御変数(3):巨視的相関理論 | 【第9回】 | 正の罰の原理と負の強化に制御される行動の特徴 | 【第10回】 | オペラント・レスポンデント交互作用 | 【第11回】 | 行動変容と生物学的制約 | 【第12回】 | セルフ・コミットメントと強化子の価値割引 | 【第13回】 | 強化子と条件性強化子 | 【第14回】 | 行動モメンタムと部分強化効果 | 【第15回】 | まとめ |
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