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授業の概要(ねらい) |
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臨床心理学は、①見立て(アセスメント)、②介入(心理療法、地域援助)、③研究(実践研究、評価研究)、④社会的位置づけ(倫理、法律、資格など)、の大きく4つに分けることができる。この心理療法概論では、②介入について取り扱うことになる。 心理療法は、サイコセラピー(psychotherapy)のことであり、心理的問題の解決にむけてのさまざまな介入を指す。これらの心理療法は、密室(相談室)における1対1の面接を多くの場合意味する。しかし、現代社会においては、相談室にとどまらない生活の場に密着した幅広い臨床心理学的援助が求められる。これを地域援助と呼ぶこともある。 この概論では、心理療法と地域援助の双方にふれることになる。心理療法に関しては、精神分析、クライエント中心療法、行動療法、認知行動療法などにふれる。地域援助については、医療機関、学校、産業、司法・矯正、(狭義の)地域、その他特殊な分野における活動について論じたい。 そもそも心理学的介入は、心理的ニーズに対応するためにある。とするならば、心理的ニーズを解決するためには、どのような介入が最も好ましいか考える必要があろう。場合によっては、さまざまな介入が組み合わされ、時には修正されることもある。これらの最も適切な援助をさまざまな介入を統合し形作ることも重要である。この統合的視点についても論じたい。
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2. |
授業の到達目標 |
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1)臨床心理学的介入の概要を理解する 2)心理療法の諸理論を理解し、その有効性と限界について議論できる 3)地域援助の各分野での機能と役割を理解する 4)統合的視点について自らの意見を持つ
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成績評価の方法および基準 |
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試験60%、小テスト20%、レポート20%
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教科書・参考書 |
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テキスト:『よくわかる臨床心理学(改訂新版)』下山晴彦編 ミネルヴァ書房 『新しいメンタルヘルスサービス』元永拓郎著 新興医学出版社 参考文献:『明解!スクールカウンセリング』 黒沢幸子ら著 金子書房
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5. |
準備学修の内容 |
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テキストの次回授業範囲について充分に読み込み、授業およびLMSで配布するホームワークに取り組む。またLMSにて配布する授業レジュメに事前に目を通し、自分自身の意見を用意して授業に臨む必要がある。
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6. |
その他履修上の注意事項 |
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臨床心理学と関係するすべての科目と関連する。「臨床心理学概論」「臨床アセスメント法」は密接に関連する。また「地域精神保健概論」「学校心理臨床」「社会精神医学概論」「高齢者の心理臨床」も取ることをお勧めする。基礎心理学の各科目とも対比して学習することで「臨床的科学」の有用性や限界も明らかになろう。 この講義では、さまざまな「心理療法」が紹介される。しかし、これらを単なるスキルと考え、興味本位でながめ安易に実行しようと考えてはならない。これらのスキルを身につけるには、相当長い専門的トレーニングの時間を要するし、心理士として働きながらも、継続して厳しい研修を受け続ける必要がある。 心理療法であれ地域援助であれ、困っている人や悩んでいる人への深い理解と敬意を表しながらのかかわりとなる。厳しい倫理が専門家には要求される一方、クライエントの利益になるための積極的姿勢も求められる。また介入の効果や限界について、科学的に判断、評価をすることが必要となる。 臨床心理士を目指し大学院進学を希望する人は、この講義内容を深く理解すると同時に、紹介される書籍(文献)を主体的かつ意欲的に読む必要がある。そもそも臨床心理学を学ぶものは、膨大な書籍や論文を読む姿勢と、自分の力で考える姿勢が求められることを肝に銘じてほしい。
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7. |
各回の授業内容 |
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【第1回】 | ・ガイダンス ・心理療法と地域援助との関係 | 【第2回】 | ・社会における心理療法について ・心理療法として共通のこと | 【第3回】 | ・精神分析 | 【第4回】 | ・クライエント中心療法 | 【第5回】 | ・行動療法、認知行動療法 | 【第6回】 | ・家族療法 | 【第7回】 | ・森田療法、内観療法、遊戯療法 | 【第8回】 | ・催眠療法、自律訓練法、ブリーフサイコセラピー | 【第9回】 | ・集団療法、心理教育 | 【第10回】 | ・地域援助の展開 ・危機介入とコンサルテーション | 【第11回】 | ・医療機関での心理療法、心理的援助 | 【第12回】 | ・学校や産業での心理的援助 | 【第13回】 | ・司法/矯正領域での心理的援助 | 【第14回】 | ・地域/福祉領域での心理的援助 | 【第15回】 | ・まとめ |
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