Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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高齢者の心理臨床 池田 健
選択  2単位
【心理】 17-1-1360-4491-01

1. 授業の概要(ねらい)

 近年世界的に先進国の「高齢化」が進んでおり「認知症サミット」が開催されるなど、高齢化社会及びそれぞれの高齢者にどう対応するかは社会的な問題となっている。
 一方、エリクソンらによる「ライフサイクル理論」はどちらかというと青年期、成人期が中心で、現在の日本のような「超高齢化社会」に十分に適応していない部分も多々ある。
 本講義ではテキスト、副読本を軸として、実際の高齢者や一人一人のご高齢の方々の心理、及び何らかの疾患を抱えたご高齢の方の「臨床場面」における心理について、心理学科を専攻する学生がどのように捉え、どのように寄り添うと良いかを考える。
 また、受講者の要望に応じて、負荷のかからないように心理検査の実習を行ったり集団で連想法を行うなど双方向性の講義をこころがける。
 加えて、講義を行う人間が老年精神科を専門とする臨床医であることから実臨床におけるケースにおけるケアの実際に関しても個人情報に配慮した上で随時触れる。

2.
授業の到達目標

 上述した①高齢者をめぐる様々な問題にどう対応するかについて心理学部生が知っておくべき知識を学ぶ。また、②実際の理論が臨床や今まで出会った自身の祖父母などを含む高齢者の心理を理解するのにどの程度役立ち、どこに限界があるのかを学ぶ。①②を授業の到達目標とする。

3.
成績評価の方法および基準

 授業態度及び、授業の最後に配布する質問用紙などを主な評価対象とする。

4.
教科書・参考書

 テキスト
  大川一郎、土田宣明、宇都宮博他編著『エピソードてつかむ老年心理学』ミネルヴァ書房
 参考文献
  元永拓郎著『新しいメンタルサービスシステムをどう作るか』親興医学出版社
  池田健著『臨床家のための精神医学ガイドブック』金剛出版

5.
準備学修の内容

 特に不要であるが、日ごろから、身の回りにいる高齢者に触れ合うこと、マスメディアなどを通じて高齢者の抱える問題に関して、知識を深めるように努力しておくこと。

6.
その他履修上の注意事項

 心理臨床やカウンセリング、医学全般に関心のある学生にはぜひ選択してほしい。「予備知識がありすぎること」のデメリット、「何も知らないが高齢者に対する尊敬の念を持つことの大切さ」にも触れてゆく予定である。このため肉親に高齢者がいたり介護などの諸問題を抱える学生の履修を歓迎する。低学年者(1年生、2年生)の履修も強く望む。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 年を取るとはどういうことか、高齢者の定義と概念、その由来について
【第2回】
 臨床心理学、老年医学、発達心理学などから見た高齢者の位置づけ
【第3回】
 高齢者を発達心理学的に理解する上での問題点
【第4回】
 加齢(エイジング)について:五感のエイジング、認知機能のエイジング、アンチエイジングなどについて
【第5回】
 加齢に逆らう心理、健康寿命他について(貝原益軒「養生訓」、ジョナサンスイフト「ガリバー旅行記」iPS細胞などをめぐって)
【第6回】
 仕事、子育てなどに伴う高齢者の心理:空の巣症候群、上昇停止症候群などの理解
【第7回】
 加齢に伴う疾患・精神疾患及び身体疾患の基礎知識
【第8回】
 認知症の基礎知識①~さまざまな認知症のタイプと身体合併症~
【第9回】
 認知症の基礎知識②~認知症の発生メカニズム、薬物療法~
【第10回】
 認知症の基礎知識③~高齢者、認知症の方への非薬物的療法
【第11回】
 認知症の基礎知識④~認知症に使用される心理検査と模擬演習
【第12回】
 認知症の基礎知識⑤~認知症の非薬物療法(回想法)の模擬演習
【第13回】
 高齢者の介護問題~家族や高齢者どうしの介護と支援、心理的アプローチ~
【第14回】
 高齢者や認知症の方に対するチームアプローチと心理士に求められる役割
【第15回】
 まとめ