Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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超域表象論特講 I 石橋 正孝
選択  2単位
【超域文化専攻】 17-1-1410-1640-11

1. 授業の概要(ねらい)

 文学理論の基礎養成に注力します。文学・芸術とは何かという問題意識を持ちながら、西洋的なものと東洋的なものの違いに常に留意しながら文学テクストへのアプローチの仕方を学びますが、理論に関しては、指定図書、及び配布資料を学生に分担して内容の発表を行ってもらいます。
 英語を通しての異文化理解を目的とするため、配付資料には英訳を添付し、可能なかぎり英語での発表を推奨します。テクストの選択に関しては、最初の2回でアリストテレスの『詩学』を学びながら学生の意見を聞いて、それ以降の予定は柔軟に変更していきます。
 また発表に加えて、文学・芸術に関して学生の積極的な議論を期待します。

2.
授業の到達目標

 授業の目的は、T字型の主体的知性の養成です。一つの専門分野を根として<多様な文化表象に対応できるようなT字型知性によって、英語を通して異なる文化的表象を理解し、その際に自分の目で見て、自分で考え、自分の言葉で表現するという知的主体性の磨きます。
 グローバル化という、文化の多様性の再確認と画一化・均一化の同時進行の中で、分野・地域を越えた多様な表象文化に対して知的主体性をもって臨む為には、まずは一つのしっかりとした足場を持つことが欠かせません。とりわけ、「表象文化」という概念そのものが現代文学理論と密接に関わっていることも踏まえて、T字の縦軸として文学理論を捉えて、通時的・共時的の両方の軸で学ぶことで理解を深めます。前期は、通時的な軸に中心が置かれます。後期は、現代に焦点を当てて共時的なアプローチが主となります。

3.
成績評価の方法および基準

 レポート30%、発表30%と授業、とりわけ議論への参加度40%によって評価します。

4.
教科書・参考書

 アリストテレス『 詩学 』(岩波文庫)、その他、適宜教室で指示、また対応する英訳資料を配付します。

5.
準備学修の内容

 使用テキストの内容についての発表をやってもらい、それについての議論を期待しますが、その為には発表者以外の学生も、テキストを読んでいることが前提となります。

6.
その他履修上の注意事項

 授業への積極的・主体的参加を求めます。少人数制といっても、欠席の多い学生、やる気のない学生には単位を認めません。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 講義内容の概要、発表分担。
【第2回】
 アリストテレス『詩学』(1)再現の媒体、再現対象・方法の差異について。
【第3回】
 アリストテレス『詩学』(2)詩作、悲劇、喜劇、叙事詩について。
【第4回】
 E. アウエルバッハ『ミメーシス』(1)古代『オデュッセイア』と「イサクの燔祭」の比較に見る思想と作品の性質との関係。
【第5回】
 E. アウエルバッハ『ミメーシス』(2)中世『ローランの歌』に見る写実・リアリティーの欠如。
【第6回】
 E. アウエルバッハ『ミメーシス』(3)中世『デカメロン』に見られる写実。
【第7回】
 レポートテーマ発表。
【第8回】
 E. アウエルバッハ『ミメーシス』(4)近世 シェイクスピアにおける価値の混合。
【第9回】
 E. アウエルバッハ『ミメーシス』(5)近代写実小説の完成。
【第10回】
 E. アウエルバッハ『ミメーシス』(6)写実の進化とポリフォニーについて。
【第11回】
 サント=ブーヴ『月曜閑談』印象批評から学問としての批評へ。
【第12回】
 プルースト『サント=ブーヴ反論』講壇批評から科学的批評へ。
【第13回】
 現代の出発点。価値の体系・意味の体系の構築。K. マルクス、S. フロイト、L.-F. ソシュールと文学。
【第14回】
 精神分析、人類学、言語学、哲学など、文学と他領域の融合。
【第15回】
 レポート発表、討論。