Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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人間学基礎セミナー II 冲永 隆子
【Ⅱ】  2単位
【Ⅱ 人の心と思想を学ぶ】 17-1-1501-0127-04

1. 授業の概要(ねらい)

 人間学とは人間にかかわる学であり、「哲学、言語学、心理学、精神病理学、宗教学、芸術学、教育学、社会学、文化人類学、歴史学、人文地理学など、様々な分野にわたっている」(「序―人間学への案内」作田啓一ほか編『人間学命題集』新曜社、1988)。
 この授業では、初回から5回ほどに分けて、「ロゴセラピー」の創始者でありユダヤ系オーストリアの精神科医、心理学者で、自身の強制収容所における体験記『夜と霧』で有名なヴィクトール・エミール・フランクル(1905-1997)の「人生の意味・価値論」・精神医学的人間学について、生命倫理の視座から講義し、慣れたところで、参加者の希望テーマに沿った発表演習を行う。レポート・感想文・卒業論文・学術論文などの違いや書き方、学会・研究会発表(プレゼンテーション)の仕方などの基本的な指導も併せて行う。
 フランクルの「人生の意味・価値論」が誕生した当時の時代背景をおさえておくため、第二次世界大戦中のナチスドイツによるホロコーストや障碍者安楽死計画(T4計画)など、生命倫理・死生学に関連するビデオや書籍を多く活用する。戦後70年を経た今、生きるということ、死ぬということは何であるのか、ストレス社会の中で見えにくくなっている私たちにとって、フランクルの苦悩の意味論・価値体系から学ぶところは大きい。人間学は上記のように多岐にわたる領域横断的な学際的アプローチをとる特徴があり、幅広い視点が必要になるため、このセミナーでは参加者全員の討論も中心になってくる。意欲ある皆さんの受講を期待している。

2.
授業の到達目標

 ①受講者は、人間学や生命倫理学に関連するキーワード(KW)について正しく説明することができること。
 ②グループ討論や発表演習によって、他人の意見と比較し、自分の見解を他に示すことが可能になること。大学卒業後、様々な社会で活躍する皆に役立つための思考訓練の場としての活用が可能になること。

3.
成績評価の方法および基準

 授業内のプレゼンテーション(発表)を50%、VTR感想文提出・10問程度の簡単な基礎力確認小テスト等を50%で評価する。

4.
教科書・参考書

 テキスト:V・E・フランクル、山田邦男・松田美佳訳『それでも人生にイエスと言う』(春秋社、1993)を購入のこと。
 ※参考文献:諸富祥彦『NHK100分de名著 フランクル 夜と霧』(NHK出版、2013年3月)(←セミナーⅠの購入テキスト、セミナーⅡではこの本を購入する必要はない)

5.
準備学修の内容

 ①指定した教科書および配布資料コピーの次回授業部分を事前に読んでおくこと。
 ②授業時間内にVTR感想文(10行程度)を提出できなかった人は、感想文を仕上げて、次回ないし次々回に持ってくること。
 ③発表にあたった人は必要に応じて配布資料を用意しておくこと。
 ④希望者は自身の興味あるトピックス(授業で提案する)に関連したレポートを作成すること(レポートを提出すれば指導する。積極的で熱心な学習を応援する)。

6.
その他履修上の注意事項

 ①毎回授業に配布資料、購入テキスト、ノートなどを持参すること。
 ②この授業ではセミナー形式に基づく、発表演習(相談の上無理のないように短時間の発表)の場であり、それに向けて、ほぼ毎回ビデオ教材を用いてグループ発表・討論を行うため、極力欠席・遅刻は控えること。
  なお、発表演習の日程・行う時期については、初回授業の場で皆と相談しながら、無理のないように決めていく。1~5回ほどは基礎講義を行う予定である。
 ③この授業は、春期(人間学基礎セミナーⅠ)・秋期(人間学基礎セミナーⅡ)の半期のみの受講でも対応できるように考慮している。「ライフサイエンスⅠ・Ⅱ」とも関連している。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 はじめに―授業の進め方や評価方法などの説明。人間学・生命倫理学などについての序論。
 *以下に予定するテーマ及びビデオ内容は進行あるいはセミナーⅠと重複を避けるため変更する場合がある。
【第2回】
 セミナーⅠの概要1-戦時中のユダヤ人・障害者大量虐殺・ホロコースト、社会的弱者利用の人体実験についての解説。意見交換。
 KW:ナチズム、ホロコースト、T4計画、社会的弱者
【第3回】
 セミナーⅠの概要2-ホロコーストやT4計画が生じた時代背景、優生思想、全体主義についての解説。意見交換。
 KW:ハンナ・アーレント『全体主義の起源』、優生思想、全体主義
 ビデオ:「ETV特集~それはホロコーストのリハーサルだった~障害者虐殺70年目の真実」(2015)
【第4回】
 セミナーⅠの概要3-これまでの復習とまとめ
 KW:ファシズム、ヒトラー、アウシュビッツ・ブーヘンヴァルト・ダッハウ強制収容所
 ビデオ:「NHKスペシャル新・映像の世紀 第3集 時代は独裁者を求めた」(2015)
【第5回】
 総復習 グループディスカッション練習
 「41.苦悩と無意識の精神(V.E.フランクル)」『人間学命題集』プリント
 小テスト一回目(基礎力確認)自己採点、講評
【第6回】
 『それでも人生にイエスと言う』
 第1回 「生きる意味と価値」発表練習(1)、意見交換
【第7回】
 『それでも人生にイエスと言う』
 第2回 「生きる意味と価値」発表練習(2)、意見交換
【第8回】
 『それでも人生にイエスと言う』
 第3回 「病いを超えて」発表練習(3)、意見交換
【第9回】
 『それでも人生にイエスと言う』
 第4回 「病いを超えて」発表練習(4)、意見交換
【第10回】
 『それでも人生にイエスと言う』
 第5回 「病いを超えて」発表練習(5)意見交換
【第11回】
 生命倫理学(バイオエシックス)、死生学(タナトロジー)、生と死の教育(デス・エデュケ―ション)概要。発表演習のテーマ設定。菅井保「生と死の教育研究」『シェーラーからフランクルへ 哲学的人間学と生命の教育学』プリント配布、概要説明
 KW:エリザベス・キュブラー・ロス『死ぬ瞬間』、死の5段階説、アルフォンス・デーケン「死の準備教育」
【第12回】
 テーマ設定の発表演習(1)討論、講評
 KW:バイオエシックス、タナトロジー、デス・エデュケ―ション、生命操作、終末期医療、安楽死、尊厳死、脳死、臓器移植
【第13回】
 テーマ設定の発表演習(2)討論、講評
 KW:バイオエシックス、タナトロジー、デス・エデュケ―ション、生命操作、生殖医療、選択的人工妊娠中絶、減数(胎)手術、出生前診断、着床前(受精卵遺伝子)診断
【第14回】
 テーマ設定の発表演習(3)討論、講評
 KW:バイオエシックス、タナトロジー、デス・エデュケ―ション、生命操作、再生医療、ES細胞、中絶胎児(EG)細胞利用、人工多能性幹(iPS)細胞、万能細胞利用
【第15回】
 総復習 グループディスカッション練習
 小テスト2回目(基礎力確認)自己採点、講評