Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

ひとつ前のページへ戻る 教授名で検索

 
人間学基礎セミナー I 宇多 浩
【Ⅱ】  2単位
【Ⅱ 人の心と思想を学ぶ】 17-1-1501-0738-07

1. 授業の概要(ねらい)

 このセミナーでは、人間存在に関わるさまざまな文献(おもに西洋哲学の文献)を読みながら、人間存在のあり方を深く考えることを目標としています。使用する文献は、古代ギリシアの哲学から、近代の哲学、20世紀以降の哲学(おもに現象学)、さらには小説、エッセイまで幅広く扱います。これらの文献をひも解きながら、「人間の存在(人間が生きること)」とはどのようなことなのか、について深く考えていくことを目指したいと思います。
 前期のセミナーⅠでは、いわゆる心身関係(心と身体との関わり)の問題に焦点をあて、心と身体のとらえ方が古代から近代、現代にかけてどのように変遷してきたのか、を辿っていきます。
 基本的にほぼ毎回、配布したプリントを各自で読み解き、まとめる作業を中心にします。授業外での作業も必要になりますので、注意してください。また授業の最後には、扱った文献から1冊を選び、自分でレポートを作成することを課題とします。

2.
授業の到達目標

 ・人間存在に関わるさまざまな文献を読み、そのエッセンスを自分の言葉でまとめることができる。
 ・人間存在についてのとらえ方が、西洋哲学においてどのように変遷していったのか、を自分の言葉で説明することができる。
 ・人間存在に関する文献を読み、それを踏まえながら自分の見解を論理的かつ説得的に論じることができる。

3.
成績評価の方法および基準

 ・平常点(約50%)、レポート(約50%)
 ・平常点は、ほぼ毎回作成するワークシートの出来によって評価する。
 ・レポートは提示した評価基準に従って厳正に評価する。
 ・セミナーは出席して課題をこなすことが重要ですので、欠席が5回を超えた学生は失格扱いとする。その場合、たとえレポートを提出しても、評価対象外となる。

4.
教科書・参考書

 ・参考文献の一覧は授業のはじめに配布します。

5.
準備学修の内容

 上記のように、この授業ではほぼ毎回、文献(おもに日本語テキストの抜粋)を読んでまとめることが求められます。作業は授業中に行うこともありますが、基本的には自宅にて行うこととなります。またレポート作成時には、文献を1冊選んで、自分で通読することが必要になります。

6.
その他履修上の注意事項

 哲学の文献は日本語の翻訳で読んでも、初めての人には大変難しく感じられるかもしれません。しかし人間存在について深く考えようとするならば、ときには抽象的で難解な用語を使用せざるをえません。多少、骨があっても人間の存在について深く考えたい方の履修を希望しています。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 ガイダンス、セミナーの進め方について
【第2回】
 人間存在とは何か? 「人間存在」について考察するための視点、心身関係への導入
【第3回】
 心身関係(1) プラトンの『パイドン』(抜粋)を読みながら、彼の「霊魂不滅論」について検討する。
【第4回】
 心身関係(2) 引き続き、プラトンの『パイドン』(抜粋)を読みながら、彼の心身二元論の特徴を検討する。
【第5回】
 心身関係(3) アリストテレスの『心とは何か』(抜粋)を読みながら、彼の目的論的な人間観・世界観を見ていく。
【第6回】
 心身関係(4) デカルトの『省察』(抜粋)を読みながら、彼が方法的懐疑からどのよに「考える私」の絶対性を導き出したのか、を見ていく。
【第7回】
 心身関係(5) 引き続き、デカルトの『省察』を読みながら、彼の心身二元論とそれがもつ問題点を見ていく。
【第8回】
 心身関係(6) デカルトの『人間論』(抜粋)を読みながら、彼の機械論的な身体観を見ていく。
【第9回】
 身体とその経験(1) メルロ=ポンティの『知覚の現象学』(抜粋)を読みながら、身体の両義的な存在について考察する。
【第10回】
 身体とその経験(2) オリヴァー・サックスの『左足をとりもどすまで』(抜粋)を読みながら、身体の両義的なあり方についてさらに考察する。
【第11回】
 身体とその経験(3) カイ・トゥームズの『病いの意味』(抜粋)を読みながら、身体の病理的な経験が意味することを考察する。
【第12回】
 世界内存在(1) ハイデガーの『存在と時間』(各抜粋)を読みながら、自己と環境世界との連関について考察する。
【第13回】
 世界内存在(2) メルロ=ポンティの『知覚の現象学』(抜粋)を読みながら、身体と環境世界との連関について考察する。
【第14回】
 世界内存在(3) ヴァン・デン・ベルクの『人間ひとりひとり』(抜粋)を読みながら、世界内存在とそのさまざまな変容について考察する。
【第15回】
 授業のまとめ、レポートの準備