Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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日本文化 I - II 木村 康平
【Ⅲ】  2単位
【Ⅲ 歴史と文化を学ぶ】 17-2-2110-0181-04

1. 授業の概要(ねらい)

 風土記の説話を読みます。
 風土記は和銅6年(713)、勅命によって編述された各国の地誌です。現存するものは、出雲(島根県東部)・播磨(兵庫県南部)・常陸(茨城県)・肥前(佐賀県と長崎県の一部)・豊後(大分県)の五カ国のみです。しかもほぼ完本といえるのは出雲国風土記だけです。ただし、ほかに逸文(一部のみ残るもの)として数多くの伝承を伝えています。「風土記」という名称が当初からあったわけではなく、本来は、地方の各国府から政府に対して提出した役所の報告書です。土地の産物・地味・山川原野の地名の由来・古老相伝の旧聞遺事(昔語り)などを記述していますが、文学・民俗・歴史などの諸分野にわたる研究の対象となるべき貴重な文献でもあります。この風土記の中から、いくつかの説話を読みつつ、古代社会や、古代の人びとのものの見方、考え方についてふれてみたいと思います。
 秋期は常陸(ひたち)・播磨(はりま)・肥前(ひぜん)・豊後(ぶんご)の各国風土記及び逸文風土記を読みます。

2.
授業の到達目標

 古代文学に親しむことができる。古代説話の構造について理解することができる。古代人の宗教観や考え方について、その基本を説明することができる。以上を目標とします。

3.
成績評価の方法および基準

 期末試験(50%)と、平常点(授業への参加度・毎回のコメントシート・小レポートなど。50%)をあわせて評価します。
 期末試験を受験するだけでは単位を修得することはできません。

4.
教科書・参考書

 テキスト:プリントを配付します。
 参考文献:『常陸国風土記』(秋本吉徳・講談社学術文庫)など、授業中に紹介します。

5.
準備学修の内容

 ・配付プリントを復習すること。
 ・自分なりに疑問をもつこと。
 ・さらに発展的に学習をすること。

6.
その他履修上の注意事項

 出席することがたいせつです。遅刻をしないこと。授業時のマナーを守りましょう。スマホの使用は不可。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 授業計画、学習の仕方を説明します。
【第2回】
 常陸国風土記の行方郡の伝承―ヤトの神(蛇神)との闘いと祭り(蛇神崇拝・神々の零落)
【第3回】
 行方郡―タケカシマノミコトの活躍、香島郡―鹿島神宮の由来(朝廷の東国進出の前線基地として)
【第4回】
 香島郡―童子女(うない)の松原―松の木になった恋人たち、白鳥伝説の断片
【第5回】
 那賀郡―くれふし山伝説(神話の類型性―話型とは何か)
【第6回】
 播磨国風土記について
【第7回】
 ひれ墓の伝承とイナビ妻(景行天皇の求婚と、身を隠す妻の伝承)
【第8回】
 飾磨(しかま)郡、伊和の里―子を棄てる父と、子の怒り(姫路十四丘の起源譚)・揖保(いぼ)郡、上岡(かみおか)の里―大和三山争闘の伝承
【第9回】
 揖保郡神嶋―石神の涙の謎、いひぼ丘―異国の神、天日槍命(あめのひぼこのみこと)と葦原シコヲ命の土地争い
【第10回】
 揖保郡美奈志川の由来・讃容(さよ)郡の由来(女神と男神の争い)、神前郡埴岡(はにおか)の里―オホナムチとスクナヒコネ(巨人神と小人神の我慢比べ)
【第11回】
 豊後国風土記の解説、頸(くび)の峯―人語を発する鹿の誓いと豊穣の祭、肥前国風土記の解説、ヒレ振りの峯(招魂の呪術としてのヒレ振り)
【第12回】
 逸文風土記、近江国伊香小江―羽衣伝説の起源、丹後国比治の里―遍歴する女神と伊勢神宮の関係
【第13回】
 丹後国与謝郡―浦島伝説と神仙譚(浦島伝説はどのように誕生したか)
【第14回】
 日本書紀・万葉集の、浦の嶋子と、御伽草子の浦島太郎を比較してみる
【第15回】
 蘇民将来―外部から訪れる神々、鹿の伝承―鹿と海人(あま)の関係