Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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超域文化論 I 木村 哲也
選択  2単位
【外国語】 17-3-1411-1959-03

1. 授業の概要(ねらい)

 将来の日本社会を想定し,現在,小・中だけでなく高校や大学までを視野に入れた教育改革や教員養成の在り方の改革が急速になされています。異文化・異言語との接触やその理解,共生の在り方は,21世紀を生きる人々の最重要課題です。
 この21世紀,私たちはどのように自・他の文化や言語を理解し,それらの文化や言語とかかわっていけばよいのでしょうか?日本社会にすでにある多文化・多言語状況を再確認しながら,文化や言語のもつ意味を考えていきます。また,私たちは,なぜ外国語を学び,その外国語を母語とする人々の文化を学ぶ必要があるのでしょうか。外国語学習や異文化理解の在り方を考えていきます。
 春学期は,特に,現在行われている文科省の「教育改革」の内容と文化や言語の関係に焦点を当てて解説,考察していきます。
 日本人そして日本に住む「海外にルーツをもつ人々」にとっての「日本語」及び「日本文化」という観点から,文化・言語がますます超域化していく現代社会の中で,「文化・言語」の学び方や接し方を,「21世紀型スキル」という視点から捉え直していきます。
 外国語だけでなく,外国人に対する日本語教育について興味・関心のある学生も大歓迎です。
 また,教員免許状の取得を目指している学生は,外国人児童生徒や近年ますますその数を増している日本国籍をもちながら日本語指導を必要とする児童生徒への教育方法の基礎を学ぶことができます。

2.
授業の到達目標

 1)学生は,今日の日本社会の文化・言語状況についての変化を理解し,これからの時代に対応可能な社会文化・言語能力の在り方についての知識を獲得しこれを論述できる。
 2)学生は,外国語または日本語による「コミュニケーション能力」「学習言語能力」とは何かを理解し,それらの能力を協働的,自律的に獲得する能力を身につける。

3.
成績評価の方法および基準

 1)質疑応答や議論への能動的参加-20%
 2)①学期中間レポート相互評価-20%
   ②学期末予備レポート相互評価-20%
 3)学期末レポート-40%
 *「レポート」は,授業内配布資料を活用し,引用文には出典の注を適切に明記して作成してください。

4.
教科書・参考書

 テキスト:特に設けない。
 参考文献・資料:
   1)O’ Riordan, Tim, ed. (2001), Globalism, Localism & Identity, London: Earthcan Publications.
   2)サピア,エドワード(1998)安藤貞雄訳『言語』岩波文庫。
   3)前田英樹(2010)『沈黙するソシュール』講談社学術文庫。
   4)フレイレ,パウロ(1979)小沢有作ほか訳『被抑圧者の教育』亜紀書房。
   5)テイラー,チャールズ(1996)佐々木毅ほか訳『マルティカルチュラリズム』岩波書店。
   6)国立教育政策研究所編(2014)「資質や能力の包括的育成に向けた教育課程の基準の原理」教育課程の編成に関する基礎的研究報告書7
   7)国立教育政策研究所編(2013)「社会の変化に対応する資質や能力を育成する教育課程編成の基本原理」教育課程の編成に関する基礎的研究報告書5,
URl: http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div08-katei.html
   8)国立教育政策研究所国際研究協力部編(2015)『外国人児童生徒の教育等に関する国際比較研究 報告書』,
URL: https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/h26/2-2_all.pdf
   9)中央教育審議会教育課程企画特別部会における論点整理について(報告)
URL: http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/053/sonota/1361117.htm
  10)国立教育政策研究所編(2015)「教員養成における教育改善の取組に関する調査研究~アクティブ・ラーニングに着目して~」
URL: https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/h26/3-8_all.pdf
  11)中央教育審議会「アクティブラーニングに関する議論」
URL: http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/__icsFiles/
afieldfile/2015/09/04/1361407_2_4.pdf
  12)グリフィン,P.,マクゴー,B.,&ケア,E.(2014)三宅なほみ監訳『21世紀型スキル―学びと評価の新たなかたち』北大路出版。
  13)カミンズ,ジム;中島和子:真嶋潤子(2011)「ユネスコ国際母語デー記念学術講演報告書」『大阪大学世界言語研究センター論集』6,pp.185~223.
http://ir.library.osaka-u.ac.jp/dspace/bitstream/11094/11499/1/riwl_006_185.pdf
  14)バトラー後藤裕子(2011)『学習言語とは何か―教科学習に必要な言語能力』三省堂。
  15)カミンズ,ジム&中島和子(2011)『言語マイノリティを支える教育』慶應義塾大学出版会。
  16)Aronson, E. & Patonoe, S. (2001) Cooperation in the Classroomkass, London Pinter & Martin.
  17)Aronson, E. & Patonoe, S. (1997) The Jigsaw classroom―Building Cooperation in the classroom, New York: Longman.=アロンソン. エリオット(1986)松山安雄訳『ジグソー学級―生徒と教師の心を開く協同学習法の教え方と学び方』原書房。
  18)Chomsky, Norm (1994, 6th, ed.) Language and Problems of Knowledge, Cambridge, Massachusetts: The MIT Press.
  19)チョムスキー,ノーム(1988)田窪行則・郡司隆男訳『言語と知識―マナグア講義録(言語学編)』産業図書
  20)Selinker, Larry (1992) Rediscovering Interlanguage, New York: Longman Inc.
  21)Corder, S. Pit (1981) Error Analysis and Interlanguage, Oxford: Oxford University Press.=コーダー,S.ピット(1988)玉川大学応用言語学研究会訳『中間言語入門』三修社
  22)Krashen, Stephen D. (1997) The Input Hypothesis―Issues and Implications, London: Bulter & Tanner.
  23)ダニエル,ハリー(2006)山住勝広ほか訳『ヴィゴツキーと教育学』関西大学出版会。
  24)J.V.Wertch(1995)田島信元ほか訳『心の声―媒介されて行為への社会文化的アプローチ』福村出版。
  25)J.V.ワーチ(2002)佐藤公治ほか訳『行為としての心』北大路書房。
  26)ブルーナー,J.S.(2004)岡本夏木ほか訳『教育という文化』岩波書店。
  27)ガーゲン,ケネス・J.(2004)東村知子訳『あなたへの社会構成主義』ナカニシヤ出版。
  28)三宅なほみ,三宅芳雄,白水始,2002,「学習科学と認知科学」,『認知科学』,9 (3), pp.328-337.
  29)三宅なほみ,2005,「学習プロセスそのものの学習:メタ認知研究から学習科学へ」,日本認知科学会 2005年冬のシンポジウム(三宅なほみ業績リスト【学会発表】,URL: http://coref.u-tokyo.ac.jp/nmiyake/list/)
  30)ソーヤー,R.K.(2009)森敏昭・秋田喜代美監訳『学習科学バンドブック(The Cambridge Handbook
of Learning Sciences)』培風社。

5.
準備学修の内容

 1)リフレクション・シート(授業の振り返り用紙)をまとめ,提出する。
 2)授業内での配布資料や上記参考文献・資料を各自の関心に引き寄せて精精読し,学期末レポートの作成時に活用できるよう準備しておく。
 3)授業で学んだ視点を活用して,学生各自の身近な地域社会にある文化や言語の多様性を確認する。そして,それら文化や言語が存在する意味や,その文化・言語との関わり方について考える。

6.
その他履修上の注意事項

 1)本「超域文化論」のⅠとⅡを,ともに履修することを推奨する。
 2)学生各自が身に付けたい言語力を,自律的・協働的に伸ばす方法につけて考えてください。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 オリエンテーション
【第2回】
 文化とアイデンティティーについて
【第3回】
 21世紀の言語と文化について
【第4回】
 言語と文化と日本の教育改革
【第5回】
 「アクティブラーニング」と言語教育
【第6回】
 「21世紀型スキル」と言語教育―学習言語と生活言語
【第7回】
 E.アロンソンの「ジグソー教授法」と言語教育
【第8回】
 N.チョムスキーの言語と言語教育―学期中間レポート相互評価とその講評
【第9回】
 「中間言語」と言語教育
【第10回】
 S.クラシェンと言語教育
【第11回】
 ヴィゴツキーの教育論と文化
【第12回】
 ブルーナーの学校と文化
【第13回】
 K.ガーゲンの社会と文化
【第14回】
 「学習科学」と文化と言語+学期末予備レポートの相互評価とその講評
【第15回】
 振り返りとまとめ+学期末レポートの提出