Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

ひとつ前のページへ戻る 教授名で検索

 
演習 I 池村 俊郎
必修  2単位
【観光経営】 17-1-1120-3394-21A

1. 授業の概要(ねらい)

 世界経済と政治の概観を知った上で、国の経済力を左右するエネルギー問題を考えていきます。東日本大震災と大津波は福島原発事故の原因となり、いまなお15万の人々が避難生活する未曾有の損害をもたらしました。私たちが突きつけられたのは、日本の将来のエネルギー戦略について抜本的な再検討です。エネルギー問題は合わせて地球温暖化の危機と背中合わせの重要課題です。かつて日本は石油がなく、エネルギー資源を求めて日米戦争へ突入しました。原子力政策もそんな反省にたち、多様なエネルギー源を生かすために導入されてきたものです。それが国策となって邁進するうち、今度は自然災害が引き金をひいた原発事故へとつながりました。
 教室では現時点で入手可能な情報をもとに福島原発事故を検証します。その事故が与えた経済・社会など多方面に及ぶ影響を学習します。また、事故プロセスとそこで人々がどう闘ったかを学ぶことは、将来、社会に出た学生諸君が危機に直面したとき、いかに対応し、危機を切り抜けていけるかを学ぶ生きた「ケーススタディ」となるはずです。前期では福島原発事故を中心に何が起き、われわれにどんな備えが足りなかったのかを考えます。日本に原発がいかにして導入されるようになったのか、歴史、政治のさまざまな局面に理解を広げていきます。
 また、原発の再稼働条件が厳しくなる中で、廃炉となっていく原発がいくつか出てくることになり、地域の活性化をどう図っていくか、地方地域によっては待ったなしの厳しい状況に直面しつつあります。地域おこし、町おこし、が死活問題になりつつあるわけです。新潟県柏崎や佐賀の玄海原発など福島だけにとどまらず、地域おこしの観点から考えていきます。

2.
授業の到達目標

 世界経済と政治状況を基本的に把握したうえで、エネルギーに関する全般的な知識習得を目指します。一番大切なのは、どんな事態に直面しても、冷静に調査して事態を分析し、選択肢を導き、判断する訓練の場とすることです。前期では学生諸君に自分が課題とするテーマ設定をしてもらいます。エネルギーや気候変動、環境問題にからむテーマを自分で考えて、そこにどう取り組むか、春季最後にペーパーにまとめて提出してもらいます。なお、前年度のゼミ生2名が一年間の成果を論文にまとめた。これは帝京大学経済学部の28年度学生論文集に掲載される予定。

3.
成績評価の方法および基準

 前期では自分が関心を持ったテーマを選び、それについて短いレポートを作成する(60%)前期で指定する原発事故関連、原子力開発の歴史、自然エネルギー、水素など近未来のエネルギー問題に関係した書籍を大学図書館MELICで教官が選び、一覧表にする予定。これを配布するので、各ゼミ生がそこから一冊を選択し、前期中に短いレポートを書いてもらう(30%)受講姿勢と発表などゼミへの貢献(10%)で判定する。

4.
教科書・参考書

 一番わかりやすいNHKドキュメンタリー番組で原発事故の詳細や、いまどんな問題に直面しているか、など現実を知ってもらう。映像資料を多く活用する。合わせて参考図書一覧をゼミ開講後に配布するので、その中から自分が関心を持てる本を選択してもらう。

5.
準備学修の内容

 関心を持ったテーマにつき、大学図書館に加え、インターネットの活用をすすめます。学生諸君の問題はインターネットで信頼度の高い情報をどう区別して参照できるかにあります。そうしたインターネット参照の仕方なども指導します。自ら疑問をもち、回答を求めて調査していくこと。それがあらゆる場で役立つ訓練です。3年演習は教官が手とり足とり教えるのではなく、自分から調べていくことが大事。そのためのアドバイス役を果たすのが教官です。

6.
その他履修上の注意事項

 ゼミでは意見表明、討論への参加が勉強の大切な要点です。自分を磨く場と考えてください。また自分で決めたテーマについて図書館で関係書をさがし、読んでいき、知識を深めること。また、各回でその日クラスで扱ったテーマについてゼミ生に意見、感想を求めるので必ず発言をしてもらいます。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 ゼミ・ガイダンス、自己紹介プレゼンテーション。2011年3月11日の大地震の際、自分の体験記憶を話してもらう。
【第2回】
 世界のエネルギー問題概観と日本の電力エネルギーの現状
【第3回】
 福島原発事故の再現ドキュメンタリーを見て討論
【第4回】
 原子炉冷却装置が停止後、どこで事故対応を誤ったのか。講義形式で解説
【第5回】
 福島原発の周辺自治体でいま何が起きているか。ドキュメンタリーを見て討論
【第6回】
 指定図書一覧からどんなエネルギー関連本を選択したか。ゼミ生の意見表明を聞く
【第7回】
 日本の原子力政策の変遷、どういう形で原発が導入されてきたか、講義形式で解説
【第8回】
 新エネルギー・シェールガスとは何か解説
【第9回】
 世界のエネルギー争奪の現実 映像ドキュメンタリーで見る
【第10回】
 北海道で石炭から原子力へエネルギー源を換した特殊事情を学ぶ
【第11回】
 ゼミ生の選択した書籍のレポート提出と意見交換
 インターネット使い方の解説①
【第12回】
 原発事故の起きた自治体再建の困難な現実を知る ドキュメンタリーから学ぶ
【第13回】
 原発推進の「落とし子」電源交付金の功罪を知る
【第14回】
 前期レポート提出と討論一回目
 インターネット活用の解説②
【第15回】
 同上 討論二回目