Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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民法総論 II 小谷 昌子
教職  2単位
【教職】 17-1-1210-3227-22A

1. 授業の概要(ねらい)

 民法は私人と私人の財産関係や取引についてのルールを定める法である。とりわけ、私人と私人の間でトラブルが発生した場合に、《どのようなこと》を《誰》に請求できる権利があるかなどを定め、当事者だけでは解決できない場合にこれを利用してトラブルを解決できるようにしている。
 ところで、ここでいう私《人》とは何を指すのか、《いつまで》請求することができるのか。民法総則は、このような基本的な《約束事》を、適用できるケースをなるべく限定せず民法に共通のルールとして定める。本科目はこの民法の「総則」の部分について概説する。とりわけ、法律行為を自分以外の者が行ない権利義務の変動のみ享受する制度(代理)、時の経過による権利義務の変動(時効)につき説明する。

2.
授業の到達目標

 ①民法に共通のルールについて、法の枠組みや基本的な知識、法的な考え方などを理解する。
 ②以上のことについて、(資料を参照しつつ)文章で説明することができるようになる。
 「法学」は、法律についての基本的知識を獲得することだけを目的とする学問ではありません。法という物差しを使って社会のなかで起きる様々な出来事を分析し考察すること、ときには物差し自体を疑ってみることが「法学」であるといえます。したがって、知識を身につけることも重要ですが、それだけでなく自らの考えを、(ときには異なった考え方をする)他人にわかりやすく論理的に説明することも重要です。そこで、本科目では学んだことや考えたことを文章で説明できるようになることを目標とします。

3.
成績評価の方法および基準

 期末試験(レジュメおよび自筆ノート持込み可)による。
 出席そのものによる加点はおこなわないが、リアクションペーパー(確認のための宿題)を任意で提出する機会を複数回設け、これを採点し期末試験の点数に加点することがある。

4.
教科書・参考書

 ・配布するレジュメを参照しつつおこなう。
  (この点につき、第1回目の授業において説明予定)。
 ・自習する際には各自気に入った基本書等を参照するのがよいが、参考までに。
  佐久間毅『民法の基礎(1) 総則〔第3版〕』(有斐閣、2008年)
  滝沢昌彦『民法がわかる民法総則〔第3版〕』(弘文堂、2015年)
  池田真朗『スタートライン民法総論〔第2版〕』(日本評論社、2011年)
  山田卓生ほか『有斐閣Sシリーズ 民法Ⅰ 総則〔第3版補訂〕』(有斐閣、2014年)
  平野裕之『コア・テキスト民法I 民法総則』(新世社、2011年)
  山本敬三『民法講義I 総則〔第3版〕』(有斐閣、2011年)

5.
準備学修の内容

 ・リアクションペーパーは、文章による説明の訓練にもなるよう添削して返却します。
  とりわけ試験での論述方法がわからない学生は利用することをおすすめします。
 ・試験は持込み披見可で実施するが、、だからといってどこに何が書いてあるかくらいは把握していないと答案作成はできないので、そのつもりで必要な準備をすること。言うまでもないことですが、試験前にまとめてやるよりも定期的に予習復習をするほうが理解は深まります。
 ・なお、本科目は出席による加点は行わないが、出席しない場合にはそれ相応の自習をすることを求める。「出席による加点を行わない」ということは、イコール「出席しなくても単位がとれる」を意味しないので注意すること(例年、リアクションペーパーを提出している学生のほうが試験の出来そのものもいい傾向にあります)。

6.
その他履修上の注意事項

 ・本科目の内容は、今後民法をはじめとする私法を学ぶうえでの基礎となるものであるので、しっかりと自分のものにすることが必要である。
 ・民法総則はなるべく広い範囲において適用されることを念頭に置いて作られたルールであることから比較的抽象度が高く、最初から全部理解しようとしても困難です。民法全般を学んで初めて理解できることも多いため、わからなくてもそこで立ち止まらずに、先に進むこともときには重要です。
 ・第1回目の授業の際に注意事項を述べます。欠席した際の配布資料の取得方法や成績評価方法についても詳細を説明するので、2回目以降授業を欠席する可能性のある学生は必ず出席すること。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 民法総則Ⅰ・民法概論Ⅱのおさらいをしつつ、期末試験の講評を行なうとともに、本科目の
【第2回】
 代理(1)代理とは何か:現実社会では「私の代わりにトイレ行っておいて」と誰かに委ねて尿意がなくなることはないが、私法の世界では法律行為を他人に委ねてその効果だけ受け取ることができる。このような制度を代理というが、代理について概説する。
【第3回】
 代理(2)本人と代理人の関係①:「やってもらう人」=本人と、「代わりにやる人」=代理人の関係、とくに授権行為や権限の範囲にまつわる問題について確認する。さらに、代理人が代理権を悪用して私腹を肥やそうとした場合など、本人と代理人の関係においてトラブルが発生した場合のルールを確認する。
【第4回】
 代理(2)本人と代理人の関係②
【第5回】
 代理(3)無権代理①:代理人が代理権を与えられていない事項について、または、与えられた権限を越えて代理をした場合の法律関係を確認する。
【第6回】
 代理(3)無権代理②
【第7回】
 代理(4)表見代理①:実は無権代理であるけれども、本人と無権代理人との間に代理権があると相手方に信じさせるような事情がある場合、この相手方を保護する必要がある。具体例を挙げて、このような場合の当事者の法律関係について説明するとともに、代理関係について全体を見渡し、整理・復習する。
【第8回】
 代理(4)表見代理②
【第9回】
 法律行為の効力発生時:条件・期限・期間
 法律行為の効果を将来に発生または消滅させる、いわば《法律効果のタイマー設定》=条件・期限 について説明する。また、期間に関するルールにつき確認する。
【第10回】
 時効①:時効とはなにか
 時が経過することによって法律関係が変動することがある。時効制度の存在意義や全体像について概説する。
【第11回】
 時効②:取得時効と消滅時効
 時の経過による法律関係の変動としては消滅時効と取得時効がある。それぞれの要件効果などを説明する。
【第12回】
 時効③:時効の効果と援用
 時効の効果は時の経過により自然に享受できるものではない。時効の効果を受けるために必要なことについて説明する。
【第13回】
 時効④:時効の中断・停止
 時効を途中で振り出しに戻したり、時効の進行を止めたりすることがどのような場合に認められるのか等につき説明する。
【第14回】
 まとめ①
 民法総則の全体像を概観し、再度、私法の世界における基本的な考え方がどのようにあらわれていたかを確認する。
【第15回】
 まとめ②・試験
 まとめを行ない、期末試験を実施する。
 ※授業計画はあくまで予定であり、進捗状況、受講者の理解の程度などに応じて変更することがあります。