Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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消防法と予防行政 II 谷口 由美子
選択  2単位
【法律】 17-1-1210-4530-02A

1. 授業の概要(ねらい)

 消防機関の仕事には、消火、火災予防、救助、救急の大きな四つの柱があり、これらは消防組織法及び消防法に基づき実施されています。
 このうち、火災予防行政は建築物や危険物施設等の火災発生の防止(火災予防)及び被害の最小化(被害の軽減)を目的として、消防法に基づき建物や危険物施設の関係者にあらかじめ対策を講じさせるとともに、消防機関が消防法への適合性を立入検査などの実施により調査し、違反しているものには命令を発するなどして、それらの火災安全性を確保することを主な内容としています。
 火災予防行政については、その充実を図るため、2006年に、消防機関には火災予防行政に係る専門知識を有する「予防技術者」を置くことが義務づけられました。この資格は国家試験委託機関が行う「予防技術検定試験」の合格者に与えられます。
 「予防技術検定試験」は「防火査察」「消防用設備等」「危険物」の3区分で実施されますが、本授業は、この中の「防火査察」課程に準じて行います。すなわち、消防機関が行う火災予防行政のうち、防火査察業務である立入検査及び消防法違反に対して行う命令等の措置に関し、その法的根拠、実施要領、手続き等を説明します。
 具体的には、消防法令及び関係規定の解説、火災事例及び違反事例の実例を踏まえた実施要領等の説明、問題演習等を行います。

2.
授業の到達目標

 (1)消防法では火災から人命、財産を守るために、建物等の防火区画や消火・警報設備の設置(ハード面)及び防火管理等(ソフト面)の火災予防に関する基準を定めています。本授業ではこれらの基準の履行を担保するために、消防機関が実施する立入検査等の防火査察を理解させることにより、社会人として、あるいは企業人としての危機管理能力の向上を図ります。
 (2)予防技術検定試験の選択科目の1つ「防火査察課程」を学び、受験のための実力向上、さらには消防機関の予防行政を目指す一助とします。

3.
成績評価の方法および基準

 (1)筆記試験(場合によってはレポート式)を行い、満点を100点として評価します。評価のランクは大学の例示によります。
 (2)筆記試験(レポートの場合を含む)は出席回数が3分の2以上の者に対して行います。したがって、出席回数が3分の2未満の者は、特別の理由がない限り履修放棄とみなし、採点しません。なお出席率及び授業内で実施する演習の結果に応じて点数を加算するものとし、加算の結果100点以上となった場合は、成績順位において考慮するものとします。

4.
教科書・参考書

 テキストとして、プリントを配布しますが、『予防技術検定のための消防予防概論第2巻防火査察』(日本消防設備安全センター編集発行)を推薦します。

5.
準備学修の内容

 火災から人命・財産を守るために、様々な消防設備等の設置や防火管理者等の選任と消防計画の作成、避難訓練の実施等が法律(消防法)により義務付けられています。本講座を基に、私たちが身近に見かける消火器をはじめ、誘導灯や非常ベル、自動火災報知設備、スプリンクラー設備、屋内消火栓設備などに興味を持つとともに、防火対策等の不備により人命が失われた火災事例等を研究し、様々な問題意識を持って授業を受けることを期待します。

6.
その他履修上の注意事項

 この授業は消防という組織とその機能について理解を深めることにより、今後社会人として生活するうえでの法律とのかかわりを、消防法を通じて学ぶことを目的としています。
 本授業を学んだことを糧として、社会生活に活かされることを期待します。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 ガイダンス(授業の目的、内容、進め方、テキスト、予防技術資格者)
 最近の消防事情
【第2回】
 消防に関する基礎知識(消防の沿革、消防法令の概要)
 消防の体系と消防法における予防関係規定の仕組み…消防組織法第1条、消防法第1条、第2条
【第3回】
 立入検査…消防法第4条、第4条の2
【第4回】
 屋外における火災予防…消防法第3条
【第5回】
 防火対象物の火災予防措置命令…消防法第5条
【第6回】
 防火対象物の使用の禁止命令等…消防法第5条の2
 消防吏員による火災予防措置命令…消防法第5条の3
【第7回】
 防火査察関係法令講義前半のまとめ
【第8回】
 行政上の救済制度
 消防法における期間及び期限の特例…消防法第5条の4、第6条
【第9回】
 防火管理制度…消防法第8条
 統括防火管理制度…消防法第8条の2
【第10回】
 防火対象物定期点検報告制度…消防法第8条の2の2、第8条の2の3
【第11回】
 防災管理制度…消防法第36条
【第12回】
 立入検査の実施要領(事前準備、検査の方法、検査の着眼点)
【第13回】
 避難上必要な施設等の管理…消防法第8条の2の4
 防炎規制…消防法第8条の3
 火気規制…消防法第9条、
【第14回】
 違反の是正(違反処理、違反処理の区分、違反処理の留意事項)
【第15回】
 授業内最終試験
 講義のまとめ