Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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障害児の医学 木村 理夫
選択  2単位
【教育】 17-1-1333-2176-02A

1. 授業の概要(ねらい)

 発達障害には自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、限局性学習症(LD)などがあり、我が国では平成16年に法律上でも発達障害が定義され、その支援が国の施策として進められている。発達障害は基本的に脳機能の異常を基盤としているが、その詳細な病態に関しては未だ不明な点も多く、これらの疾患概念や呼称も数年ごとになされる診断基準の改定のたびに変遷している。一方、疾患・障害を正しく理解し、適切な治療・療育を行っている施設自体が限られるという現状がある。また、世間には「発達障害」に関する、科学的根拠のないさまざまな誤解・民間療法も広まっている。
 授業は、現時点での最新の知見を踏まえ、疾患や障害を健常(定型)発達と比較しながら、これらの障害(視覚障害、聴覚障害、運動障害、ダウン症なども含め)について医学的に理解できるように構成した。これらの「障害」は自身を定型発達として捉えている我々にとっても決して特別なものではなく、いわゆる「個性」とされる個人間のバリエーションの観点から捉える必要があり、また乳児期からの成長・発達過程を通じて、我々の自己・他者認識(身体観・世界観)とも深く関わっていることを学習する。

2.
授業の到達目標

 多様な発達障害における疾患の特徴や疫学、診断、治療について、医学的な観点から多面的に理解できるようにする。
 また、実際の教育現場で障害児に対して適切な配慮を行うための、実践的な療育・支援の基本的概念と各種アプローチ法について理解する。

3.
成績評価の方法および基準

 評価は、出席状況、課題図書のレポート、講義中の小テストの成績、講義中の積極的な学習態度などを総合して行う。テストは6割以上の獲得が単位取得に必要であり、合格者に対してのみ評価を行う。
 10分以上の遅刻は欠席扱いとし、4回以上欠席の場合は単位を付与しない。実習は公休扱いにするが、別途、課題提出などを指示する。

4.
教科書・参考書

 特定のテキストは使用しない。講義ごとにレジュメを配布する。
発達障害や脳機能に関する書籍は多数出版されているので、これらをできるだけ読み、理解を深めるよう務めること。図書館(医学コーナー)を積極的に利用すること。
 参考図書:
 1.『発達障害の子どもたち』杉山登志郎 講談社現代新書
 2.『発達障害のいま』杉山登志郎 講談社現代新書
 3.『自閉症スペクトラム障害-療育と対応を考える』平岩幹男 岩波新書
 4.『自閉症スペクトラムとはなにか-人の「関わり」の謎に望む』千住淳 ちくま新書
 5.『自閉症という謎に迫る-研究最前線報告』小学館新書
 6.『自閉症の脳を読み解く』テンプル・グランディン、リチャード・パネク NHK出版
 7.『自閉症っ子、こういう風にできてます!』ニキ・リンコ×藤家寛子 花風社
 8.『発達障害と感覚・知覚の世界』佐藤幹夫編著 日本評論社
 9.『自閉症だったわたしへ』ドナ・ウィリアムズ 新潮文庫
 10.『ディスレクシア入門』加藤醇子 日本評論社
 11.『怠けてなんかいない! -ディスレクシア』品川裕香 岩崎書店
 12.『障害学 -理論形成と射程-』杉野昭博 東京大学出版会 
 13.『つながりの作法 -同じでもなく 違うでもなく-』綾屋紗月、熊谷晋一郎 NHK出版
 14.『天才の脳科学 -創造性はいかに作られるか-』ナンシー・C・アンドリアセン 青土社
 15.『学力の経済学』中室牧子 ディスカバー・トゥエンティワン
 16.『日本人の9割が知らない遺伝の真実』安藤寿康 SB新書
 17.『乳幼児の発達障害診療マニュアル -健診の診方・発達の促しかた-』洲鎌盛一 医学書院
 18.『ミラーニューロン』ジャコモ・リゾラッティほか 紀伊國屋書店
 19.『視覚障害教育入門』青柳真弓ほか編著 ジアース教育新社
 20.『聴覚障害教育の基本と実際』中野善達ほか編著 田研出版株式会社
 21.『病気がみえる vol.7 脳・神経』メディックメディア
 22.『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キイス 早川書房
 23.『発達障害の子どもの心と行動がわかる本』田中康夫 西東社
 24.『ソーシャルブレインズ入門 -<社会脳>って何だろう-』藤井直敬 講談社現代新書 
 25.『脳の中の身体地図』サンドラ・ブレイクスリーほか インターシフト
 26.『脳が壊れた』鈴木大介 新潮新書
 27.『目の見えない人は世界をどう見ているのか』伊藤亜紗 光文社新書

5.
準備学修の内容

 LMS上に毎回の講義レジュメ等を掲載するので、必ず事前に確認し自己学習しておくこと。
 課題図書のレポートや小テストの連絡も、LMSに掲示する。
 講義資料の内容を理解している前提で、講義をすすめる。

6.
その他履修上の注意事項

 「障害」の意味を、自身や身近な家族・友人の問題としてもとらえ、理解を深めていくことが重要である。
 講義内容の質問などは、木曜10時~13時、ソラティオスクエア1F診療所にて対応する。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 発達障害総論:診断、疫学、病因
【第2回】
 中枢神経系の機能と発達
【第3回】
 発達障害における感覚・知覚の世界
【第4回】
 自閉スペクトラム症(ASD)、アスペルガー症候群
【第5回】
 注意欠陥多動症(ADHD)
【第6回】
 特異的学習障害(LD)、ディスレクシア
【第7回】
 脳性麻痺、運動麻痺
【第8回】
 ダウン症と出生前診断
【第9回】
 虐待による愛着障害と発達障害
【第10回】
 視覚障害:視認知と読字・言語理解
【第11回】
 聴覚障害:手話と言語発達
【第12回】
 障害学と当事者研究
【第13回】
 自閉スペクトラム症(ASD):治療と支援1
【第14回】
 自閉スペクトラム症(ASD):治療と支援2
【第15回】
 まとめ:「障害」から「健常」を理解する