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授業の概要(ねらい) |
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非行を行った少年に対する処遇は,社会の「子ども観」を映す指標です。それは,時代により変化し,人権についての意識や,人間関係の科学についての態度を反映し,国家経済や政治の影響も大きく受けています。非行少年の立ち直りを有効に実現することは,肯定的な人間観の共有に資するだけでなく,社会防衛の視点からも極めて重要なことです。しかし,非行少年への処遇に,社会は大きな関心を寄せているとは限りません。「非行少年の更生」「立ち直りへの支援」は,他人事としてとらえられがちであり,敬遠される話題になりがちです。 現在,「少年」年齢について,議論が始まっています。選挙権が18歳以上と引き下げられたことに連動し,18歳以上を成人被疑者とみなすかどうか,また,逆に,18歳から20歳代前半までを,青年として別枠で判断するか,などが討議されています。これからの社会を担う有権者である皆さんは,社会の一員として,「非行少年の処遇」についての自分自身の姿勢を意識し,考察していくことが必要です。 本授業では,まず,非行少年に対する処遇の歴史的背景と少年法の理念を学んだ後,非行に関わる捜査機関,判断機関,処遇機関の具体的関わりを学んでいきます。知識だけでなく,自分自身の立ち位置についての吟味もしながら学んで欲しいと思います。 本授業は,春期の授業「少年非行の要因」での学習を前提としています。
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授業の到達目標 |
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① 少年法の歴史と理念について,説明できる。 ② 捜査機関,判断機関,処遇機関それぞれの役割と実務を説明できる。 ③ 少年の更生と立ち直りについて,自分自身の考えを説明できる。
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成績評価の方法および基準 |
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定期試験の成績(70%)と,授業への参加状況(30%)を総合して評価します。授業参加状況とは,カードリーダーによる各授業の出欠席ではなく,授業内で不定期に実施する振り返りシートの提出の状況と,その内容の評価のことを指します。
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教科書・参考書 |
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テキストは使用せず,講義に際してレジュメを配布します。 参考図書:法務総合研究所『平成28年版犯罪白書』 徳岡秀雄『少年法の社会史』福村出版 日本犯罪心理学会編『犯罪心理学事典』丸善出版
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準備学修の内容 |
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授業の中では,非行少年の処遇に関わっている人の体験談や参考文献などを紹介します。それらから発展させて書物,新聞,専門誌,メディア情報などに興味を持ってあたり,関心を広げてください。 配布するレジュメは,テストに持ち込む大切な資料となるので,授業ごとに確認・整理し,授業時必ず持参するようにしてください。
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その他履修上の注意事項 |
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① 配布するレジュメは概要なので,講義により細部を充実させ,内容を理解するようにしてください。 ② 授業では,知識を得るだけではなく,社会の一員として,非行に対する自分の立ち位置を絶えず問う姿勢を持ってください。 ③ 大教室での講義になりますので,授業中の私語や,他の学生の迷惑になる行為は慎んでください。 ④ 卒業論文等の調査への協力を複数回予定しています。心理学の研究への参加体験としてご協力ください。 ⑤ <重要>教室の大きさにあわせ,受講者数を制限する可能性があります。その場合は初回の授業の出席に基づいて決めていきますので,受講を予定している人は,必ず初回の授業に出席するようにしてください。
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各回の授業内容 |
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【第1回】 | イントロダクション。少年非行及び非行の現状についての基礎事項 | 【第2回】 | 少年事件の取り扱いの流れ。少年審判と刑事裁判との違い | 【第3回】 | 非行少年に対する処遇の歴史 | 【第4回】 | 少年法の成り立ちと理念 | 【第5回】 | 少年法改正と関連する検討事項 | 【第6回】 | 児童相談所,児童自立支援施設におけるの非行少年の処遇 | 【第7回】 | 警察における非行少年の手続き及び処遇 | 【第8回】 | 家庭裁判所における非行少年の手続き及びその実情 ① | 【第9回】 | 家庭裁判所における非行少年の手続き及びその実情 ② | 【第10回】 | 保護観察における非行少年の処遇 | 【第11回】 | 少年院における非行少年の処遇 ① | 【第12回】 | 少年院における非行少年の処遇 ② | 【第13回】 | 少年鑑別所における非行少年の心身鑑別 | 【第14回】 | テストとまとめ | 【第15回】 | 振り返りとまとめ |
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